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飛蝗の農場 みんなのレビュー
- ジェレミー・ドロンフィールド (著), 越前 敏弥 (訳)
- 税込価格:1,166円(10pt)
- 出版社:東京創元社
- 発行年月:2002.3
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文庫
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紙の本
本当の「!!!」は最後の最後にやってくる!
2002/07/02 00:39
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投稿者:ヒロクマ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「今年読むべきミステリーを3冊選べ」と言われたら、これは入れないわけにはいかない。久々に最後の最後の1ページで「!!!」となったミステリーだ。
ネタばらしはしたくないので、あらすじは書けない。とにかく読んでくれとしか言えない。
範疇としては、サイコミステリーまたは心理サスペンスになるのだろう。でもひとつのジャンルではくくりきれないものがある。
読み始めてしばらくは「何だこりゃ!?」と思うかもしれない。しかし読み進むにしたがいい、物語がひとつの大きな流れになっていくのが分かるだろう。まるで蛇行するいくつもの支流が合わさりひとつになるように。
ああ! 書きたいけど書けない。あとは自分で読んで確かめてみてください。
紙の本
体調を崩しました
2003/06/19 14:11
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投稿者:しょいかごねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本を、そのジャンルではなく、読んでいるときの気持ちでも分類することができると思う。苦行のように読み進む本、読み出したら止まらないジェットコースター、少し読むたびにゆっくり反芻するのが楽しい本などなど。で、この本はどうだったかと考えるのだが、実のところなんとも名状し難いとしか言いようがない。
ジャンルとしてはサイコロジカル・スリラーというものらしい。最も、この分野はあまり読んだことがないので、本書がどれくらい特殊なのかはよくわからない。はっきり言って面白かったのかどうかすら答えられない。一つ言えるのは、かなり体調に影響した、ということである。
読んでいて決して楽しいわけでもないのに読むのを止めることができない。頭が混乱する。なにかに取り憑かれたように読んでいる。読むのを中断すると妙な不安感でいらいらする。眠いので途中で止めると変な夢を見る。結果として寝不足になり、気分も不安定になって体調を崩す。終盤などは読みながら体が固まってしまって、首がつりそうになった。
まさに憑き物の類いである。ストーリー自体はそれほどびっくりするようなものではないと思うので、この本の特殊性はこの読んでいるときの気分なのだと思う。狂気とか倒錯とか、そういった言葉では表しきれないような、強烈な活字の力を感じた。
紙の本
出張の行き帰りで読むのにうってつけ。でも、ちょっと粘りすぎか?
2003/11/30 16:41
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投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る
2002年度の「このミステリーがすごい!」(海外編)の第1位なのだそうである。出張で移動する車内の慰みに買い求めたのであるが、まさにそういう読み方にうってつけの本ではないだろうか。手が込んでいて飽きない。
章が改まる度に違う町における違う登場人物の話になっていたりして、最初は大いに戸惑うのだが、これもすぐに想像がつく。最後の謎解きに部分にさしかかって、「なんだ、結局またそういうことかい!?」「しかも、まだ100ページちょうども余して、もう種明しするのか!?」と思うのだが、「ああ、良かった。続きがあった」という感じ。そして、そこから結構粘ってくれる。
僕はミステリも読むには読むが、トリックやどんでん返しにはまるで興味がない。それは大抵いつも失望させられるからだ。だから、謎解きに少々無理があったとしても、人物に魅力があってよく描けているものを選んでしまう。
訳者はあとがきで「過剰なまでに精緻な人物造形」と書いているが、それほどのもんだろうか? まあ、そこそこの造形ではあるが、登場人物に決して魅力はない。この小説のセールス・ポイントはあくまでトリックやどんでん返しにある、と僕は思うのである。そして、そういう基準でよく書けていると思う。面白い本だ。でも、このラストはなあ…。ちょっと粘りすぎたかなあ。
紙の本
もうこの手のサイコサスペンスは卒業にしたい
2002/11/11 09:34
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投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者ジェレミー・ドロンフィールドはイギリスウェールズ地方の出身で考古学を専攻した人だという。この作品は彼が1998年のデビュー作でその年の英国推理作家協会賞最優秀処女長編賞の「候補作」だそうだ。
英国のミステリーには独特の雰囲気がある。舞台となる地域の歴史・風土の描写が調和のとれた背景としてテーマをあざやかに浮き彫りにするところである。
この作品の舞台はヨークシャーのホーワース近く、付近に住む人のいない孤立した農場、愛憎劇『嵐が丘』にひろがる荒野である。この荒涼たる土地にジャガイモ畑と羊の飼育、飼料にするバッタの群れを飼って世捨て人の生活を営む女性が一人で住んでいる。過去から逃れようとしても悪夢にうなされる毎日、その精神もこの地と同じように荒んでいる。ヨークシャーはまた女性11人連続猟奇殺人、ヨークシャー・リッパーの舞台でもある。ミステリーの世界では最近でもこの事件について形を変えながら繰り返し描いている、そういう土地柄でもある。彼女の前に記憶喪失になったらしい、しかも連続女性殺人の犯人かもしれない、そんな怪しい男が登場する。過去を独白するのだがこれが真実なのか嘘なのか妄想なのか。この男に惹かれた孤独をもてあます女性は半信半疑ながらも彼におぼれていく。さて………。
物語のスタートは謎の提起、重厚な風景描写といい、大いに期待させるものがあったのですがすぐに落胆させられました。ある男の過去を少しずつ切り取って時間の流れには忠実でなく、それを女との生活描写の間にはさみこむ叙述形式を取るから読者は何がなんだかさっぱりわからなくなる。ジグソーパズルの解読を迫られるわけです。これによってせっかくの小説の風味が台無しになってしまうのです。精神異常者の心理分析を謎解きにつかったり、あるいはその妄想とか悪夢を現実とないまぜにしてしたサイコサスペンスは飽きがきている。
さらにこれが驚愕のドンデンガエシとは………。
解説の三橋暁氏によればこれはまぎれもなくサイコロジカル・スリラーというジャンルに属する。20世紀末のミステリ・シーンに大きなブームを巻き起こしたサイコロジカル・スリラーはどうやらトマス・ハリス『羊たちの沈黙』で終わったらしい。この意見には賛成します。
しかしこの作品は今年のランキングに高位ではいる可能性が高いようだ。
紙の本
最後に読もうととっておいたのが間違いでした
2002/12/15 18:48
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投稿者:矢野まひる - この投稿者のレビュー一覧を見る
最悪。フォークナーのようと評された章ごとに分断される時間軸はもったいつけているだけとしか思われない。登場人物は全員あまりにもおそまつ。自分の過去を捨て去ろうと、わざわざ危険な満潮時の潟まで出かけ、泥の中に思い出を埋め波にさらわれて死にそうになるような幼稚な人物にわざわざ1章がさいてある。かといって、幼稚な自己愛にひたるしかなかった悲しさが伝わってくるかといえば、最後までもったいつけており件の人物が何者かわからないため、うんざりしながら我慢して読み進めるしかない。ヒロインもすごい。長い間ひとりで生きてきた女性が転がり込んできた男にどんな想いを抱くかなんて、現実の話ならともかくこれでは小説的リアリティゼロ! しかもこの女の人、男を自分の思い通りにできないと察知すると散弾銃で打ったり殴ったりしようとする。スティーブン・キングの「ミザリー」かと思いましたよ。
それでも最後まで読んだのは、宝島社「このミステリーがすごい2003年版」海外篇で1位だったからだ。
そして物語は驚愕の結末へと続く。驚くべきは、これを絶賛する人々が多数存在することなのだ。皆さん、こんなんでいいんですか…!?
とにかくこの件に関して私は怒っている。全く、お金と時間を返して欲しい(買って読んだのだから言いたいことを言ってやるのだった)。
紙の本
編集者コメント
2002/04/03 15:57
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投稿者:創元推理文庫編集部 - この投稿者のレビュー一覧を見る
幻惑的で、恐ろしい、なのに抗しがたい……『飛蝗の農場』は、その忌まわしい魅力で、最後の一ページまであなたの心をつかんで放さない。
——ジル・ペイトン・ウォルシュ
離れ業の結末を秘めた心理スリラー。親指締めで拷問されでもしないかぎり、この結末をばらすつもりはない。
——マーク・ティムリン
シリアル・キラーが跳梁するスリラー、心理サスペンス、興奮物の活劇……それらのあいだを巧みに擦り抜けていく、緊迫感あふれる徹夜本。
——ヴァル・マクダーミド
バーバラ・ヴァインの伝統につらなる、精巧なスリラー。
——『ビッグ・イシュー』
本書『飛蝗の農場』は、英国の新鋭ジェレミー・ドロンフィールドが満を持して放った長編デビュー作です。
めまいを誘う冒頭(京極夏彦の『狂骨の夢』をどことなく連想させます)から、徐々に物語の背景が見えてくる俯瞰の中盤、そして、迫力の攻防に息つく暇もないスリリングな終盤……二枚腰、三枚腰の筋運びは、ずっしり読みでがあり、加えて、この結末はどうでしょう。最終ページに思わず唸り、あたまから読み返したくなるに違いありません。
忘れがたい体験となるはずのこの驚嘆のミステリを、どうかお見逃しなく!