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紙の本
江戸川乱歩に愛された同性愛研究家の代表作。日本文学史を男色の観点から横断する独創的な書物
2002/06/06 15:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中条省平 - この投稿者のレビュー一覧を見る
岩田準一の名前を知ったのは、江戸川乱歩の著作からだった。乱歩はさまざまな場所で折りにふれて、この人物について語っている。乱歩が男色の研究家だったことはよく知られているが、乱歩は、六歳年下の岩田準一を男色研究の「師匠」と呼び、岩田が四十五歳の若さで死んだのち、「師匠を失った私は全く孤独であ」るが、「世界に一人も同感者のない」この興味を今後もあさり続けてゆくほかないと語った。その後、乱歩は同好の士・稲垣足穂と出会うことによって、男色研究について、「世界に一人も同感者のない」興味、という自分の考えを訂正するにいたる(「二人の師匠」)。
また、乱歩の大著『探偵小説四十年』は、二十八歳の着物姿の美青年・岩田準一の写真を掲げ、「岩田君の日本同性愛文学史研究は、十数年をそれに没頭したのだから、ちょっと内外に例がないほど詳しい」と賞賛し、「『南方熊楠全集』第九巻の半分は、南方翁から岩田君に送った同性愛文献に関する書簡で埋められている」ことを引きあいに出して、「岩田君というのは、そういう人物なのである」と紹介している。
この伝説的な人物・岩田準一の主要業績である『本朝男色考』と『男色文献書志』(ともに私家限定版)が豪華な合本となり、読みやすい活字で刊行された。コレクター垂涎の書の、待ちに待たれた復刊なのである。前者は、日本古代から室町時代まで、簡明にして鋭利な筆でたどる日本同性愛文学史のエッセンスであり、後者は、なんと一〇〇〇種類をこえる男色関係書のカタログであって、前者の記述の濃縮ぶりと、後者の調査の博捜ぶりのコントラストに驚かされる。
男色に興味をもつ人にはもちろん必携の最高文献であるが、日本文学史の余白を埋める真摯な試みとしても貴重きわまりないものであり、ひろく幻想文学やエロティック文学に関心をもつ読者にぜひとも一読をお薦めしたい。 (bk1ブックナビゲーター:中条省平/フランス文学者・学習院大学教授 2002.06.07)
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