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狂食の時代 みんなのレビュー
- ジョン・ハンフリース (著), 永井 喜久子 (訳), 西尾 ゆう子 (訳)
- 税込価格:2,090円(19pt)
- 出版社:講談社
- 発行年月:2002.3
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紙の本
我々が口に入れているもの、こりゃ一体何なんだ?
2004/01/17 15:12
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:aguni - この投稿者のレビュー一覧を見る
TVで有機農法を行う人が語っていた。有機ではない畑は見れば違いがすぐわかる。除草剤を使った畑には草一本生えていない、と。雑草が生きられない環境で生きているこれは何だ? アメリカのBSE発生で牛肉の輸入がストップ。仙台の牛タン屋が閉鎖の危機だという。ある店主は言う。うちでは2年前から全部アメリカ産です。輸入を開始してくれなければ店を畳まなければならないかもしれません。おいおい。名物ってのは現地で取れるもののことを言うのではなかったんかい? そしてアジア各地で鶏インフルエンザ。何を食えというのだ? 絶望的な気分になってこの本を手に取った。
著者はイギリスの人気ジャーナリスト(この本の解説を筑紫哲也氏が書いているから、イギリスの筑紫哲也か?)。2001年に書かれたこの本は、イギリスの食卓に並ぶ野菜・肉・魚がどのように変遷し、「食」から「狂食」になっていったかを彼の綿密な調査と聞き込みによって、読みやすく具体的に書かれている。化学肥料漬けの野菜、牛の粉(肉骨粉飼料)を食わされて成長する牛の肉、抗生物質漬けの鶏肉、化学薬品で整えられた脂肪太りの鮭、これらに食品添加物を加えて食品に加工し、やっとこれが人間様の口に入る。そして生き物を工業製品のように扱った結果、自然からの反動が来る。すなわち、痩せて枯れていく土壌(もっと化学肥料を使わなくっちゃ)。耐性菌の発生で死んでいく動物達(もっと強力な抗生物質を!)。そうしてできた「食品」が、食物連鎖のピラミッドに君臨する人間様に与える影響は? 今の科学ではわからない、というのがその答えらしい。なんともはや。
著者はよい食べ物、というものを以下の4つの条件と考えている、という。(P61-62)
1 食べ物は安全でなくてはならない。
2 食べ物は栄養豊富でなくてはならない。
3 食べ物は二次的な栄養素も含んでいた方がいい。
4 健康的な食べ物は堅甲な植物や動物からしか得られない。
その上で、イギリスで食の在り方が変わったのは大戦の影響だと語る。すなわち、食料を輸入に頼っていた英国はUボートによる封じ込めで食糧危機に陥った。だから政策が食料増産にシフトした。自立的な生活をしていた農家は潰され、もっと効率的で近代的な農家に生まれ変わらざるを得なかった。その傾向が戦争を終わっても持続した、というのだ。著者は面白い例でその流れを書いている。ある農家の庭先にたくさん実をつけるリンゴの木があった。で、近くのスーパーに持って行ったが、仕入れてくれない。スーパーには遠い国から冷蔵されて延々運ばれた、新鮮とは言えないリンゴがある。でも新鮮なリンゴは誰も買ってくれない。そのうち彼は人を雇ってリンゴを摘み取るよりも、そのまま腐らせる方がコストが安いことに気がつく。彼は怒ってリンゴの木を切り倒してしまう。産業が食文化を変えていったのだ。その逆ではない。
であれば、我々はまずこのような本を読んで考え、もう一度、どのような食の在り方が好ましいのかを自ら選択するべきだろう。この本の原題は、“THE GREAT FOOD GAMBLE”そう、ギャンブルだ。著者は言う。「もうそろそろ立ち止まろう。必要な食べ物を作るのに別な方法に目を向けよう。申し分のない動機から生まれた制度であっても、今後もそれを維持していくのが可能かどうか真剣に考えてみよう。(中略)人は二つのことを同時には選べない。私たちはいつも何かに賭けている。しかし、これこそ一番重要な賭けだ。どちらに賭けるか、よくよく考えてみるべきだ。」(P19)
この本のタイトルがすばらしい。まさに今、我々が生きている時代をよく表していると思う。そろそろ狂食の時代も終わらせるべきだろう、とこの本を読んで思った。食品を商品として扱っているすべての皆様に、その家族に、子供たちに、読んでもらいたい一冊である。
紙の本
何の権利があって…
2002/05/29 15:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:郁江 - この投稿者のレビュー一覧を見る
狂牛病の問題が日本にも浸透してきた。狂牛病の原因は肉骨粉を餌に与えたこととされている。言わば自然に起こり得るはずのない「共食い」を強いる一種のカニバリズムであると言える。人間は何の権利があって、そんなことを…
畑には除草剤・殺虫剤・科学肥料をふんだんに使って、そんな虫も住めないような畑で一体何を作っているのだろう? そんなモノを「安全」という名のもとに私達は日々食べているのだ。狂牛病をきっかけに、日本では偽装や不正表示が次々と発覚し、食の安全・人への信頼が完全に揺らいでしまった。今私達は何を信じ、何を食べればいいのか?
この本は作者が、現場にこだわり徹底的に調べた綿密なルポであり、食について考えさせられる1冊。自分の食の安全は自分で探さないといけない時代になってしまいました。
紙の本
2002/05/19朝刊
2002/05/27 22:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:日本経済新聞 - この投稿者のレビュー一覧を見る
我々は食に対して何を望んでいるのだろうか。栄養だろうか、あるいは腹を満たすことによる満足感だろうか——食べ物が乏しい時代ではそうであったかもしれない。しかし飽食の時代といわれる今、人々が求めるものは「安全」以外にはないだろう。国内で四頭目のBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)の乳牛が見つかったというニュースを聞くにつけ、このことがより切実に感じられる。
BSEもそうだが、食の安全について論争の種になっているのは遺伝子組み換え食品である。本書を読むと、著者の立場は遺伝子組み換え食品に批判的である。読者が納得できない指摘もある。遺伝子組み換え食品は「科学論争」の材料ではなく、人々の「感情」の問題と言う読者もいるだろう。しかし、本書に書かれたことに対してきちんと説明できなければ、遺伝子組み換え食品が社会に定着するのは難しいことも確かだ。
著者が取り上げるテーマは政治問題も含めて幅広い。自分で農場をもち、語り、書くだけではなく食の安全確保について実践もしているという。
その彼が本書で英国の農業と食について警告を発している。食品添加物や殺虫剤、土壌改良、魚の養殖、抗生物質漬けの畜産などに見られるように科学・技術が食に応用されるとき、少なからぬ歪(ひず)みが生まれる。食に人の手が入ると危険の頻度が高まるから、われわれにはそれを取り除く“賢さ”が必要ではないかと……。英国をそ上に載せているが、これはどの国にも共通する課題だ。
「本物の科学者なら知っていることだが、科学とは間違えるものである」と著者は引用して言う。そして、食に関して過度に科学を信じることを戒めている。BSEがなぜ人間社会に入り込んだのか——牛を肉食獣(廃牛の骨を牛の飼料に混ぜることによってBSEが広まった)にすればどうなるか、といったことを科学万能教の信者は見抜けなかったのが原因と著者は言う。そして、「見抜く力」をもつことが暗黒の未来を招かないための手立てと強調する。
私たちはもっと謙虚になる——食に限らずいま求められていることなのかもしれない。
(C) 日本経済新聞社 1997-2001
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