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エリック・ホッファー自伝 構想された真実 みんなのレビュー

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みんなのレビュー33件

みんなの評価4.6

評価内訳

  • 星 5 (14件)
  • 星 4 (9件)
  • 星 3 (2件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)

高い評価の役に立ったレビュー

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2003/11/02 23:58

40歳が寿命だろうと考えていた「沖仲士の哲学者」ホッファーが、限りある命を覚悟して選択した「放浪者」時代の回想。勇気に貫かれた力強い生活の日々。

投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 港湾の人夫として働きながら読書と思索にふけったというその人の日常を『波止場日記』という形式の本で知り、深い感銘を受けた。それと並行して読み始めていたアフォリズム集『魂の錬金術』は、一見すると新興宗教の教典を彷彿させるうさん臭い題名に感じられなくもないが、字義通りの内容で、あまりの濃さに持て余し気味である。その書の訳者である中本義彦氏が実行したとあとがきで書いておられるように、日めくりの余白に貼って、ひとつずつ味読するという読み方が適切なのだと思う。
 たとえば、「情熱的な精神状態」の章(元々は単行本として刊行)をしめくくる第280項目「幸福を探し求めることは、不幸の主要な原因のひとつである」(『魂の錬金術』114P)——このように重い言葉を差し出されてしまっては、それを心で支えるのに数日かかってしまう。何とか支えながら妥協して折り合いをつける。しかし、折り合いをつけたあとにも、幾度となく忍び込んでくる問いを日々のなかで一体どう処理すればいいというのだろう。

 わずか1行の箴言であればまだしも、1ページにおよぶ長めの言葉も、全行にわたって恐ろしいほどの緊張感に満ちている。全475篇にのぼるアフォリズムは、ホッファーが生涯かけて取り組んだ思索のエッセンスすべてが盛られているということであるから、たかが1週間かそこいらの読書、つまり「読み/過ぎる」だけで、何を理解でき、何を得られるものか…という気がする。
 だが、ホッファーの言葉は真剣であっても、決して深刻ではない。自分の道徳心の欠如や怠惰な性質を責め立てられて気鬱にさせられるものでないところが良い。今まで気にも留めていなかった物事の側面を切り拓き、新たな発想を与えてくれる。別の価値観の提示というプラス志向が、身に新鮮な息を吹き込んでくれる。

 そのような前向きな思索の姿勢がどこから来たのか。疑問を解き明かしてくれるのが、この自伝だと言えよう。
 映画やドラマにすれば、「ウソだろ?」と滑稽にもとれるぐらい有り得ない烈しい人生行路だ。7歳で失明するまでに家具職人であった父の書棚で英独語を習得していた。15歳で奇跡的にも視力を回復すると、また失明してはいけないと本を読みあさったという。その幼年期・少年期だけをとっても神の見えざる手、天の配剤かと思えてしまう。
 そして、父の死につづく放浪生活が彼に与えたものの大きさ。まさに、魂を錬金するための出会いや学び、経験の連続である。
 たとえば、アナハイムのレストランの給仕をしていたときの「希望」と「勇気」の違いをめぐる議論。市井の片隅で他人どうしが熱くなる時代の息吹もさることながら、知的議論が人にもたらすものの力、社会を動かし得る力をうらやましく感じる。紙の上に死した言葉を連ねたのではなく、人と人とをつなぐ生きた炉のなかで思索を練り上げたのがホッファーの生涯だったのである。
「自己欺瞞なくして希望はないが、勇気は理性的で、あるがままにものを見る。希望は損なわれやすいが、勇気の寿命は長い。希望に胸を膨らませて困難なことにとりかかるのはたやすいが、それをやり遂げるには勇気がいる」(52P)
烈しさのない日常であっても、語り考えながら生活することが哲学であり、それは万人が引き寄せるべき営みなのだと訴えかけてくる。

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低い評価の役に立ったレビュー

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2002/06/10 12:09

生誕100年で日本でもリバイバルの予感。感動的な自伝がついに完訳

投稿者:小林浩 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 アメリカ西海岸の港湾労働者にして社会哲学者のエリック・ホッファー(1902-1983)の著書は、1960年代から1970年代初頭にかけて立て続けに6点ほど邦訳されてきたのだが、残念なことにすべてが絶版か品切になっている。いわば忘れられた思想家だったわけだが、今回邦訳された彼の自伝をきっかけに、その価値が見直されるのではないか。原書は1983年刊、彼の最後の著書となる本書では、ニューヨークのドイツ系移民の子として生まれた彼の生涯が、一幅の鮮やかな印象画として描かれている。幼い頃の失明、そして視力の突然の快復、教育を受けないまま育ちながら無類の読書好きで、日雇い(あるいは季節)労働者として過ごした日々が率直に綴られている。それらは職業的哲学者が綴るような思索日誌の堅苦しさとは似ても似つかない。彼は生き、働き、感じ、考える。その素朴さが実に好印象だ。本書は詳細に記述されている自伝ではない。原題にあるとおり、これは "Truth Imagined" つまり、思いに映るままの本当のこと、といったニュアンスだろうか。作家の中上健次は「ホッファーのように生きつづけたい」と漏らしたことがあるそうだ。彼の生涯は、世間で言うところの「幸福」なものとは少し違う。経済的に満ち足りていたわけではない。しかしその大きな体躯からにじみ出るようなおおらかなオーラと同居している繊細さを見るとき、彼のように生きてみることをつい想像してみたくなることも確かだ。彼は本書で自分のことばかりを語っているのではなかった。あたかも紡ぎ合わされた一枚のタペストリーのように、ホッファーの思い出の中で様々な人々が垣間見せる素顔は、彼自身の素顔と重なって、なんともいえない印象的な彩りを帯びる。たぶん多くの読者にとっても、本書は長く胸に残る一冊となるだろう。巻末にシーラ・ジョンソンによる、ホッファー72歳の折のインタビューが収録されている。

人文・社会・ノンフィクションレジ前コーナー6月10日分より

(小林浩/人文書コーディネーター・「本」のメルマガ編集同人)

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紙の本

40歳が寿命だろうと考えていた「沖仲士の哲学者」ホッファーが、限りある命を覚悟して選択した「放浪者」時代の回想。勇気に貫かれた力強い生活の日々。

2003/11/02 23:58

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投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 港湾の人夫として働きながら読書と思索にふけったというその人の日常を『波止場日記』という形式の本で知り、深い感銘を受けた。それと並行して読み始めていたアフォリズム集『魂の錬金術』は、一見すると新興宗教の教典を彷彿させるうさん臭い題名に感じられなくもないが、字義通りの内容で、あまりの濃さに持て余し気味である。その書の訳者である中本義彦氏が実行したとあとがきで書いておられるように、日めくりの余白に貼って、ひとつずつ味読するという読み方が適切なのだと思う。
 たとえば、「情熱的な精神状態」の章(元々は単行本として刊行)をしめくくる第280項目「幸福を探し求めることは、不幸の主要な原因のひとつである」(『魂の錬金術』114P)——このように重い言葉を差し出されてしまっては、それを心で支えるのに数日かかってしまう。何とか支えながら妥協して折り合いをつける。しかし、折り合いをつけたあとにも、幾度となく忍び込んでくる問いを日々のなかで一体どう処理すればいいというのだろう。

 わずか1行の箴言であればまだしも、1ページにおよぶ長めの言葉も、全行にわたって恐ろしいほどの緊張感に満ちている。全475篇にのぼるアフォリズムは、ホッファーが生涯かけて取り組んだ思索のエッセンスすべてが盛られているということであるから、たかが1週間かそこいらの読書、つまり「読み/過ぎる」だけで、何を理解でき、何を得られるものか…という気がする。
 だが、ホッファーの言葉は真剣であっても、決して深刻ではない。自分の道徳心の欠如や怠惰な性質を責め立てられて気鬱にさせられるものでないところが良い。今まで気にも留めていなかった物事の側面を切り拓き、新たな発想を与えてくれる。別の価値観の提示というプラス志向が、身に新鮮な息を吹き込んでくれる。

 そのような前向きな思索の姿勢がどこから来たのか。疑問を解き明かしてくれるのが、この自伝だと言えよう。
 映画やドラマにすれば、「ウソだろ?」と滑稽にもとれるぐらい有り得ない烈しい人生行路だ。7歳で失明するまでに家具職人であった父の書棚で英独語を習得していた。15歳で奇跡的にも視力を回復すると、また失明してはいけないと本を読みあさったという。その幼年期・少年期だけをとっても神の見えざる手、天の配剤かと思えてしまう。
 そして、父の死につづく放浪生活が彼に与えたものの大きさ。まさに、魂を錬金するための出会いや学び、経験の連続である。
 たとえば、アナハイムのレストランの給仕をしていたときの「希望」と「勇気」の違いをめぐる議論。市井の片隅で他人どうしが熱くなる時代の息吹もさることながら、知的議論が人にもたらすものの力、社会を動かし得る力をうらやましく感じる。紙の上に死した言葉を連ねたのではなく、人と人とをつなぐ生きた炉のなかで思索を練り上げたのがホッファーの生涯だったのである。
「自己欺瞞なくして希望はないが、勇気は理性的で、あるがままにものを見る。希望は損なわれやすいが、勇気の寿命は長い。希望に胸を膨らませて困難なことにとりかかるのはたやすいが、それをやり遂げるには勇気がいる」(52P)
烈しさのない日常であっても、語り考えながら生活することが哲学であり、それは万人が引き寄せるべき営みなのだと訴えかけてくる。

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生誕100年で日本でもリバイバルの予感。感動的な自伝がついに完訳

2002/06/10 12:09

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:小林浩 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 アメリカ西海岸の港湾労働者にして社会哲学者のエリック・ホッファー(1902-1983)の著書は、1960年代から1970年代初頭にかけて立て続けに6点ほど邦訳されてきたのだが、残念なことにすべてが絶版か品切になっている。いわば忘れられた思想家だったわけだが、今回邦訳された彼の自伝をきっかけに、その価値が見直されるのではないか。原書は1983年刊、彼の最後の著書となる本書では、ニューヨークのドイツ系移民の子として生まれた彼の生涯が、一幅の鮮やかな印象画として描かれている。幼い頃の失明、そして視力の突然の快復、教育を受けないまま育ちながら無類の読書好きで、日雇い(あるいは季節)労働者として過ごした日々が率直に綴られている。それらは職業的哲学者が綴るような思索日誌の堅苦しさとは似ても似つかない。彼は生き、働き、感じ、考える。その素朴さが実に好印象だ。本書は詳細に記述されている自伝ではない。原題にあるとおり、これは "Truth Imagined" つまり、思いに映るままの本当のこと、といったニュアンスだろうか。作家の中上健次は「ホッファーのように生きつづけたい」と漏らしたことがあるそうだ。彼の生涯は、世間で言うところの「幸福」なものとは少し違う。経済的に満ち足りていたわけではない。しかしその大きな体躯からにじみ出るようなおおらかなオーラと同居している繊細さを見るとき、彼のように生きてみることをつい想像してみたくなることも確かだ。彼は本書で自分のことばかりを語っているのではなかった。あたかも紡ぎ合わされた一枚のタペストリーのように、ホッファーの思い出の中で様々な人々が垣間見せる素顔は、彼自身の素顔と重なって、なんともいえない印象的な彩りを帯びる。たぶん多くの読者にとっても、本書は長く胸に残る一冊となるだろう。巻末にシーラ・ジョンソンによる、ホッファー72歳の折のインタビューが収録されている。

人文・社会・ノンフィクションレジ前コーナー6月10日分より

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2014/12/21 21:47

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2015/08/11 20:04

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