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紙の本
慰霊行為の本質をたどる最新民俗学入門
2002/12/03 17:26
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投稿者:藤井正史 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「やっかいなことに、人は誰でも祀りたい人の「たましい」」を遺族の意思に関係なく祀ることができるというのが、近世からの習俗となっていた」(第1章「誰がたましいを管理できるのか」より)
民俗学の危機的現状と、その原因を解明し、進むべき方向性を示唆しつつ、自らのテーマから数編を収めた最新論文集である。
いわば柳田国男の私的情熱そのものであった日本の民俗学は、柳田の亡き後、何を目的とする学問なのかさえ確定できずに迷走している。ましてや、かつて「民俗」とされた日本人の伝承や文化が失われつつある現代では極めて悲惨な状況下に在るのは間違いない。そこで小松は、文化人類学と民俗学両分野にまたがる研究者として、それぞれの学問的方法論の違いを実例を挙げることで民俗学の本質を探ろうとする。そして、民俗学の定義は民俗学者によって異なり、各々の主観的存在でしかないと断定し、それぞれの研究者が、その頭の中にある「民俗」概念を議論してこそ、新しく民俗学が再生すると提案している。
それでは、小松にとっての民俗学とはどのような定義づけがなされているかというと、「神なき時代の神探し」であるという。そして、「日本人の「神」観念の解明に資するものが民俗なのである」とも述べている。この研究テーマに沿う形で「たましい」「祭祀のメカニズム」「魔除け」など、身近な宗教的行為の本質を考察する。
中でも興味深いのは、日本人にとって極めて自然な行為と思われる遺骨収集などの「慰霊」行為が、日中戦争開始以降のことであるというものだ。戦死者たちの遺骨を英霊として祀り上げるという軍事国家体制の名残りが、戦後になっても消滅しなかったのは、人々の心にかなった行為だったのだろうが、靖国神社について活発に論議される時代だからこそ、その発祥の政治的意図と在り方の変遷は押さえておかねばならない点であろう。(藤井正史/文筆家・僧侶 2002.11.29)
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