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投稿者:chokola - この投稿者のレビュー一覧を見る
他の作品と比べると話が進んでいくペースは遅い。登場人物の関係が複雑。でも、この人は本当は誰なんだろう? どうしてここでこんな事をしているんだろう? 誰が犯人なんだろう?って先が気になってしかたない。キャラクターに引っぱられているうちに普段ほとんど意識する事のない家族、家について考えることができたのは私にとって大きなことだった。
紙の本
ひとそれぞれの「理由」が殺人にいたるまで
2002/12/25 00:32
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投稿者:yhoshi2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
東京の下町に突如現れた巨大なマンション、その20階で起きた凄惨な「一家」4人殺害事件が小説の発端。ところがこの4人、実は全く赤の他人同士であったことが判る。なのに数か月あたかも家族のようにこの豪華マンションでひっそり暮らしていた。彼らは「占有屋」の実行部隊。ローンが払えなくなって競売に付されたマンションに善意の賃借人を装って住みつき、新しい持ち主の入居を妨害するという悪質な新商売。ところが事件の背景を探っていくとそこにはなんとも多彩な人間たちと、彼らの織り成すもつれた関係がつぎつぎに明らかになってくる。ローン地獄のサラリーマン、お受験戦争に巻き込まれた小学生、老人介護施設からふっと掻き消えた老婆、20歳の未婚の母、やっぱりうまくやっていけない嫁と姑などなど。総勢6家族15名以上のユニークなキャラクターが登場。現代の都会の片隅に確実に生息していそうな人たちのやりとりや実感がリアルに描かれていて飽きない。誰しもが経験したおぼえのありそうな「せりふ」が随所にでてきて身につまされることしきりなのである。人が生きていくにはそれぞれにとってのかけがえのない(と信ずる)「理由」があり、それらが日常の中で他人の「理由」と様々な衝突や葛藤を生み出していく。その挙句が殺人もという次第。読み進むうちに、この小説のテーマが実は殺人事件そのもではなく、登場人物それぞれの心理のひだを描き出すところにあるらしいことがわかってくる。わたしたちの周りにもひとりやふたりは容易にみつかりそうな一見フツーのヒトたちの心の中に潜んでいる「闇」。それが本当は怖いのだというお話。
紙の本
面白いと判っているから読んだ。面白かった。
2002/11/28 09:24
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投稿者:みーちゃ - この投稿者のレビュー一覧を見る
一目見たとき、その分厚さにこの本は読み応えがある!と思った。難しい説明や書評は他の人に任せて、この人の小説はどんなに厚くてもかえって読みたい!と思わせてくれる。
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投稿者:hibiki-c - この投稿者のレビュー一覧を見る
再読、再々読に耐える傑作。
本筋の殺人事件のWhodunnit?(誰がやった)およびHowdunnit?(どうやった)は当然のように重厚で興味深く、これは物語内できちんと消化される。しかしよく読むと他にもうひとつ、殺人とは直接無関係なオマケのwhoが仕掛けられていることに気づく。
ルポルタージュに仮託した手法だけに、本筋の問題の方はwhoもhowも途中でゆるゆる明かされる。が、オマケのwhoの方は結局文字上では明かされない。というか、Who done it?の「it」が何かさえも、問題視しようとしなければ問題にならない。
なので、これは深読みしすぎなのかもしれないけど……。
とはいえ、これだけ端正なスタイルを持った小説なのに、通して読むと一部だけその端正さを破っている章がいくつかある。表現上のミスという可能性もあるが、わざとだとすると上記のような読み方ができる。だとすると……、凄い。
本題だけ読むと、ルポの体裁をとった普通小説。しかし、「オマケのwho」を問題にする場合は、まぎれもない推理小説。このオマケのwhoは、「動機」「機会」「手段」いずれも文中で明確にされている。
が……、言わぬが花か。
紙の本
女性の社会的地位
2002/08/27 16:22
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投稿者:ランドリィ - この投稿者のレビュー一覧を見る
家族ってなんだろう、家ってなんだろうと考えさせられました。また、たくさんの登場人物が出てきますが、ハウスマヌカンな人のキャラクターと老人ホームに入っているおばぁちゃんの苦渋の歴史に本当にはっとさせられました。女性は本当につらい目にあってきたんですね…
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記者に取材されているような表現が合間に入る変わった構成で最初は違和感を感じていたが、徐々に事件の真相が分かる過程は中々秀逸であった。様々な登場人物の『理由』が表現されていることに引き込まれていった。
読んだ後に映像化されたものも観たが原作の方が良かったかな。
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宮部みゆきの理由を読みました。面白かった。いろいろなパターンでの性格に問題のある人たちが事件を起こしてしまうというストーリーになっています。小説を読みながらフィクションなのについ怒ってしまうというパターンにはまってしまいます。
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荒川区の高層マンションで6月の暴風の夜、一家4人が惨殺された。被害者は2025室に住む小糸一家と当初見られていたが、いつの間にかそこへ住んでいた砂川一家と判明する。
砂川一家は早川の依頼で占有屋を請負い2025室に移り住んだのだが、不可解な事に、この一家はそれぞれが全くの他人であった。競売でこの家を買った石田直澄が容疑者として手配されるが……。
ノンフィクション形式というか、ルポライター形式で書かれているこの小説は、とにかく読みすべりが悪い。なのにいい作品だと感じるのは、一人一人の描写が丁寧で、人物像がちゃんと見えてくるからだろう。犯人が誰で、動機が何で、トリックがどうで……というものを期待してる人は読まない方がよろしい。
ただ思うに、そんなものが気にならない一品と個人的に評価する。
確かに読み進めるには力がいる。力はいるのだが徐々に解けてゆく謎と人間模様は読了感がかなりあった。う〜ん。やっぱり宮部は好きだ。
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ルポ形式というのが新鮮だった。それだけに、途中綾子関係の章がルポっぽくなかったのが残念だったなあ。あと、小糸(父)と、静子の父母の話を聞きたかった。それと、石田直澄が逃げ回っている間、家族がどのような扱いを受け、どのように暮らしていたかを知りたかったなあ。そんなことを思っているのは私だけでしょうか。
結局、犯人のことは名前や性別以外何一つわからなかったんだよね。でも、実際の事件だったら、そんなものなのだろうなあ…死人に口なしというしね。結局、「彼」は逃げてばかりいたんだろうな。逃げていいときもあるだろうけど、ずっと逃げててもだめなんだよね。
最後に、ミヒャエル・エンデの『モモ』そ思い出しました。もちろん内容は似ても似つかないんだけど。こういう事件、こういう人があたりまえのようにいる社会、世界というのがいつのことなのか、現在なのかまだ来ていないのか、来るのか来ないのか、自分達で望むのかそうでないのか。『モモ』にもあとがきに似たようなことが書いてあった…ような気がする。もし望まないのなら、まだ来ていないのならそうならないように私達はしなくてはいけないと思う。
しかし、ひとつの事件にはたっくさんの人が少しずつ関わっているんだなあと思って改めて感心してしまった。まるで本当の事件を追ったような話でした。
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超高層のマンションの一室で一家皆殺し、、と思われた事件が起きたところから物語が始まっている。事件後からの話で、なぜそうなったのか、という「理由」が淡々と書き連ねてあって、読者自身が丹念に追って行ける感覚を持たせる筆力に脱帽。素晴らしいストーリーテラーだと思った。やられたー、、と思った。分厚い本だけれど一気に読みたくなってしまう。(宮部さんのはいつもそうだけど)
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「今年は本を読もう!」という勢いをつけさせてくれた1冊。最初はその厚みにひるんだけど、事件後のインタビュアー形式という、珍しい手法もあってか飽きずに読みきった。まさにその殺人の「理由」を追い求めている内容。初めて読んだ宮部作品。以後ずるずると宮部ワールドへ…。
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■説明
荒川の高級マンションで親子4人殺害事件が発生する。
直木賞受賞作です。
■感想
宮部みゆきを駆け足で読んできたら突然読み疲れてしまい、理由を読む頃には大幅な流し読みになってしまいました。あとがきにはこの緻密なプロットについて書いてありました。大変冷静な視点での語りが現実感を増すように思いました。 友人は 宮部みゆきの軽妙なものとどうしようもなく暗いものと二つの路線のうち暗いものは苦手だということで、この理由は好きではなかったとのことでした。
私はといえば、流し読みしたからか、リアルな筆致だったわけですが、その割にはあまり現実感なく読み進んでしまいましたので、友人のような感想は持たずに済みました。
私が印象にのこったのは 家族について。家族であり、善人でありがならすれ違っていく人たち。
家族を疎ましく思う人たち。家族でないのに人恋しくて寄り添ってしまうひとたち。
流し読みの上に消化できていないので、落ち着いた頃にもう一度読んでみようかとおもっています。
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この作品は、回想というかルポタージュという形式をとっているため、
誰の視点から見ているかが捉えにくいです。
一家四人の殺人の理由は、関係者の一人の少年が代弁していますが、今一腑に落ちません。
もしかしたら、殺人事件の「理由」ではなく、事件に関わることになってしまった「理由」を書いているのではないか!?
と勝手に判断してみると、実に上手い切り口で書かれていると思います。
かなり厚い作品(京極とは比べないで下さい・・・)ですが、最後まで楽に読めました。
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宮部みゆきは私の大好きな作家の一人である。
この『理由』は、1年以上前から、書店で見掛けて氣にはなつてゐた作品。
しかし、何故か、手を出さうと云ふ氣になれなかつた。
特にこれといつた理由はないのだが・・・
裏表紙には、このやうな紹介が書かれてゐる。
「(略)ノンフィクションの手法を使つて心の闇を抉る宮部みゆきの最高傑作がついに文庫化。」
では、讀んでみてどうだつたか。
率直に云つて、私はあまり面白いとは思へなかつた。
宮部みゆきを讀んでいつも感じるイマジネーションの廣がりに缺けるといふか・・・
抒情的な香がないといふか・・・
なんと表現したら良いのかわからないのだが、いつもの味はひではない。
もしかすると、「ノンフィクションの手法」といふ實驗的な要素が、
足を引つ張つたやうな氣がする。
少なくとも、私にとつては、「宮部みゆきの最高傑作」とは思へない作品だ。
2004年3月22日讀了
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2003/10/10犯人のネタを中盤で割ってしまうのだから、それが主眼なのではなく、タイトル「理由」とあるとおり、何故にそうなってしまったのかを描くことが目的なのだろう。が、実は、その理由も大して目新しいものでもない。「火車」でローン地獄を題材にした嗅覚が本書ではマンションの競売というネタに向かわせたのだろうが、決定的に弱いのは、仲介した不動産屋も居座り屋も買主も宮部世界の気弱で善良な人々ばかりでピカレスクの匂いの欠片もない。だから、文中で「例外的に」という表現を見るたびに言い訳がましく感じられて仕方なかった。関係者や証言者が出てくるたびに、その人物たちは徹底的に描き込まれる。ほとんど、それのみで成り立ってるといってもいいくらいだ。確かに個々の挿話は読み応えあるものが多いが、総体として現代世相を浮かび上がらせるという計算は見えない。