紙の本
おぼっちゃまの楽天性が冒険者を生んだ?
2008/12/01 12:51
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナンダ - この投稿者のレビュー一覧を見る
人気のあるゲバラではなく「冒険者」としてのカストロを描く。
裕福な家に育ち、大学で政治にめざめる。モンカダ兵営襲撃に失敗し、片腕のアベル・サンタマリアも含めて多くの同志を失い、逮捕されるが、その法廷をも自らの信条をアピールする場として利用してしまう。刑務所では学校を設立し、法や哲学を勉強する場をつくる。
メキシコに亡命し、グランマ号で逆上陸した直後に戦闘で大敗北を喫し生き残ったのは86人のうち16人だけ。フィデルはたった3人で山をさまようことに。それでもラウルと再会を果たした山中で、「ライフルは何挺ある」「5挺だ」「こっちは2挺だ。全部で7挺になった。われわれは、戦いに勝ったぞ」という楽天性というか能天気さだ。
32歳で革命を成功させ、最初は共産主義者のそぶりもみせずにアメリカをだまし、社会主義革命を開始してアメリカと反目するようになると、ソ連を利用して互角にわたりあって守った。楽天性とたぐいまれなしたたかさを描いている。
フィデルにしてもゲバラにしても、おぼっちゃま出身だ。やはり金持ちのボンボンのほうが、生活の厳しさを知らないぶん冒険に踏み切れるのかもしれないな。
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図書館で見かけてこの作家の本は何冊か読んでいて面白かったのでへ~この人ノンフィクションも書くんだ、と借りてみました。
確かにチェ・ゲバラの方が人気はありますよね。私もゲバラの関係の本は何冊か読みましたがカストロの本は初めて読んだかも(笑)端的な文章で書かれているので非常にわかりやすかったです。が、カストロが権力についた後のことは流石にかけなかったんですね…。まだ権力の座にしがみついているのだし。
今、民主党が色々揺れている時なので重ねて見てしまいました。最初は改革をうたっていても結局権力の座についてしまうとその座を守りたいと保守的になるのかなあ。
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改めてキューバ危機の時期に起こったことを再認識。
革命指導者も長く政権の座にあると独裁者になってしまう、そういう意味では人気薄になってしまったカストロ。その人生を様々な資料から再構築したもの。
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2016年11月に亡くなったキューバの政治家フィデル・カストロについて、その生い立ちからキューバ危機(1962年)までの前半生をまとめた評伝。
バティスタ政権相手に苦闘していた頃のカストロが、亡命先のメキシコでチェ・ゲバラと初めて出会う場面が良い。英雄ではなく脇役として描かれるゲバラのキャラクター性のお陰か、凄惨な闘争がひたすら続く作中でもここだけは少し爽やか。後に二人が袂別する事を踏まえて読むと尚良し。
(日高門別 あ)
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キューバ革命のリーダーであるカストロの前半生をわかりやすく。カストロの知性と革命家の狂気と「チェ」の真相
カストロは自分の人生を語っていない。客観的資料をまとめてくれた本である。
カストロは弁護士だった。それほど記憶力が高くて、弁論に優れていた。社会主義の独裁者のイメージがあったけれど、本当に頭の良い人だったんだなと思う。
途中、チェ=ゲバラのことも詳しく書いていてそれも良し。そして、「チェ」の真相がわかるのもいい。なんで、チェなのか。チェは本名じゃないのである。
カストロがこれだけ長い間政治的リーダーを務められたのも、それ相応の知的能力があったからである。それに対して、ロマンチストのチェ=ゲバラは革命後には没落していく対比がとても良い。
カストロは革命を率いるほどに情熱的カリスマでありながら、革命後には官僚主義な社会主義システムを維持し、冷戦の中で立ち回る国際政治力も持ち合わせたほどの聡明さも持っていた。それほどすごい人なのだ。
チェ=ゲバラはTシャツにもなるほど人気だが、本当にすごいのはフィデル=カストロなんだなーというのが冷静にわかる良い本だった。