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本を読む少女たち ジョー、アン、メアリーの世界 みんなのレビュー
- シャーリー・フォスター (著), ジュディ・シモンズ (著), 川端 有子 (訳)
- 税込価格:4,180円(38pt)
- 出版社:柏書房
- 発行年月:2002.9
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紙の本
男の子の知らない物語
2002/11/17 20:16
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うみひこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
身近な男性に「この名前の少女たちが主人公の物語を知っているか?」と、訊いてみて欲しい。答えられるのは、せいぜい『若草物語』のジョーぐらいだろう。周囲の女性たちが、皆、生き生きと思い出せる物語の数々を、男性の殆どが知らないのは驚きだ。同様に文学史の流れの中でも、省みられていない少女小説の分野に新たな視点を当てようというのが、この評論の主旨と言えるだろう。かなり詳しい分析論のあと批評の対象となるのは、次の八作品と少女たちだ。
スーザン・ウォーナー作『広い広い世界』(邦題『エレン物語』)のエレン。シャーロット・ヤング作『ひなぎくの首飾り』のエセル。ルイザ・メイ・オールコット作『若草物語』のジョー。スーザン・クーリッジ作『ケティー物語』(邦題『ケティ物語』)のケティー。E・ネズビット作『鉄道のこどもたち』(邦題『若草の祈り』)のボビー。ルーシー・モンゴメリー作『赤毛のアン』のアン。フランシス・ホジソン・バーネット作『秘密の花園』のメアリー。アンジェラ・ブラジル作『学校のおてんば娘』のレイモンド。
懐かしい名前を見つけられただろうか。そして、各章の解説を読みながら物語をもう一度思い出して欲しい。彼女たちの何にあなたが夢中になったのか。そして、物語のどこに不自然さを感じてきたかを。ケティたちが、パラダイスごっこをしたり、メアリーが花園を見つけたように野原を歩き回り、そこを何かに見立てたり、花を植え摘んだ日々を思い出して欲しい。ジョーが作家として、屋根裏部屋で既に原稿を書きためている事に驚かなかっただろうか。その上彼女はその大事な原稿を燃やされたり、未来の夫に道徳的にけなされるという試練を受け入れるのだ。ケティがまるで道徳的処罰のようにブランコで足を折り、いとこの半身不随の家庭の天使ヘレンを見習って主婦になるという物語の異常さに、疑問を持たなかっただろうか。それから、アンは、実はパッチワークキルトや素朴なお菓子を作るのは苦手な女の子だったのを思い出せただろうか。それよりも何よりも詩を朗読し、言葉と想像力の翼に身を任せる少女だった。そして、そんな彼女が真に望んでいたのは、例え幾多の試練を与えられても、学び続けることだった。
今まで、何となくこんな物語だったと自分に思いこませてきた常識的な解釈に、子どもの自分が反発していたことが、この本を契機に次々と思い出せた気がする。物語というものは、それ自体の担うメッセージよりも多くのものを読者に与える。幼い読者は読者なりに、作者の無念さまで感じていたりするのだ。
この本の方法論に反発を感じたり、日本における優れた研究が既にあることに気づく読者も多いだろう。だが、一度この本を手に取り、自分自身の記憶と向かい合うことは、読者にとって魅力的な行為だと思う。大多数の元少女と少数派だろうが元少年たちにも親しまれたあの少女たちに、又出会ってみて欲しいと思うのだ。
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