紙の本
エントロピーは日常生活においても極めて重要なもの
2009/09/25 01:20
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みどりのひかり - この投稿者のレビュー一覧を見る
大学生の時に電気系の同級生にマックスウェルの電磁方程式だか波動方程式だかを解いたというのがいて、へぇーえ、どんなんだろうと思ったけど、自分は電気専門ではないので専門書は理解できないから、素人向けにやさしく説明してるのはないかなと思っていたときに、この題名「マックスウェルの悪魔」を目にしたのでした。てっきり波動方程式のことを書いているのだろうと思ったら、そうではなく、エントロピーのことを書いていたものでした。目的の書ではなかったのですが、これは大変ありがたい勘違いでした。
エントロピーは日常生活においても極めて重要なものであり、昨今の環境問題などはエントロピー抜きには語れません。エントロピーのことを考慮に入れないために、ごみ分別収集の問題とか、再生紙の問題とか、割り箸使用反対とか、もしかしたら環境にとって良くないことをやっているんじゃないの?ということがいっぱいあります。そもそも石油を地下深くから沢山掘り出していながら、地球環境を人類にとって(あくまで人類の都合にとってですが)良くしようということそのものが、むしの良すぎる話ですが、誰もそれに気がつかないのでしょうか。エントロピーを勉強した方はたぶんみんな気がつくのではないでしょうか。
平家物語の冒頭にエントロピーは増大するという、熱力学の第二法則が述べられています。すなわち、「 祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 」
諸行無常ということはエントロピーは増大するという宇宙の大法則です。なにびともこの法則から逃れることはできません。つまり、規則的に並んだあなたの体の分子、原子たちはいずれ確率の大きい方へ、つまりバラバラになる方向へと進んでいきます。ま、死ぬということです。
経済学ではエントロピーの重要性について一部の学者が気がついたのが最近のことだということを1981年の科学朝日7月号に東京大学名誉教授の玉野井芳郎先生が書いていました。物理学者と経済学者の交流ってあんまりなかったのでしょうか。1865年にクラウジウスがエントロピーと名づけ、1872年にボルツマンがエントロピー増大の法則を証明している(それもどうやら統計や確率の計算からやっているらしい)のに。つまり、経済学者たちは100年以上もこのエントロピーの重要性に気がつかなかったということでしょうか。ま、政治家は今もエントロピーのことを全く知らない人がいっぱいいるようで困ったものです。
こちらの
資源物理学入門も読んで大雑把にでも理解してもらいたいものです。
なおエントロピー理解には役立ちませんが、
こちらの小説
にエントロピーという言葉が出て来ます。
この小説、あんがい理科系の人はハマルかも知れません。下らなさが受けるはずです。ま、真面目な部分は金子みすゞさんの詩と同じくらいいいですから、この本全体が下らないというわけではありません。
いづれにしろ、エントロピーというものを、多くの方々が知るべきだと思っています。
紙の本
「マックスウェルの悪魔」の世界がよくわかる画期的な一冊です!
2020/02/01 10:53
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、多方面の高度な知識を誰にでもわかるように解説してくれると好評の「ブルーバックス」シリーズの一冊で、同巻は「マックスウェルの悪魔」編です。「マックスウェルの悪魔」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべられるでしょうか?この言葉は1967年頃、スコットランドの物理学者マックスウェルが提唱した思考実験、あるいはその実験で想定される架空の働く存在を意味します。例えば、タイムマシンを実現させて過去を蘇られるとか、永久機関を動かして世間を驚かせてみせるといったことです。このマックスウェルの悪魔という不可思議な世界を非常に興味深く、楽しく理解できるように解説したのがこの一冊です。ぜひ、多くの方に読んでいただきたい科学書です!
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不確定性原理とともに
2016/09/07 20:20
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投稿者:くまぜみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
中高時代に夢中になれた本!エントロピーは、増大するしかない!
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良くも悪くも、全く考えずにスラスラ読めるといった感じの本。高校生にも、一通り統計力学の計算問題ができるようになった大学生が読んでもそれなりに面白く感じると思う。
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決して読みやすくはない。
「空気は積もらない理由」
「熱的終焉」
熱力学関係の基礎知識が身につく。
一度よむべき。
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最もimpressiveなのはこの本の最後。
現代社会の発展は人間の死に向かわせる。
それは、社会の発展に従ってエントロピー=情報処理量は増大し、人間はその処理を行えなくなるからだ。
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本学の学生さんは、「確率から物理学へ」などという副題を見ただけで手に取らない可能性が高いかもしれないが、ひとことでいえば、この本は「エントロピー」という概念についての啓蒙書であり、熱力学(統計力学)の入門書でもある。エントロピーという概念は、理科系の学生にとっても必ずしもわかりやすいものではなく、熱力学の専門の講義では当然数式での説明になるだろう。しかし、この概念、環境問題などに関心のある学生には知っておくほうがよりしっかりした考察ができるはずのもので、また、生命とはなにか、という哲学的関心のある学生も、どこかで出会う概念である。
初版の年度が1970年とあるように、これは評者にとっても、中学生時代の思い出の一冊でもある(手元にある当時の価格は290円となっている)。中学1年生のときだったか、ふだんはあまり干渉しない父親が、「こんな本があるよ」と数冊の新書サイズの本をそっと置いていった。それは当時、科学の啓蒙を目指して講談社がシリーズで出版しはじめたブルーバックスシリーズだった。青いカバーのこのシリーズはその後、私の本棚をつぎつぎに埋めていくことになるが、初期の本にはとくに名著が多いように感じる。なかでも、本書の著者である都筑卓司氏の数冊の本は、永美ハルオ氏の印象的なイラストとともに、わくわくしながらむさぼり読んだ記憶がある。いまだに理系か文系かはっきりしない自分自身が、とりあえず理系の進路を選択したのも、この出会いがかなり大きな要因になった気がする。
難しいことをやさしく説明するのが、じつは一番難しい、というのは多くの人が感じていることだろう(とくに大学の教員?)。この著者はそれを楽々とやってのけた(かのように見える)天才である。教養科目の教師としてこれ以上の人はいないだろう。すでに亡くなられたそうだが、一度、私も都筑氏の講義を直接受けてみたかった。数あるブルーバックスシリーズのなかで、これが新装版として再出版する本の1つに選ばれ、さらに長い旅立ちを果たしたらしい。当然である。
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[ 内容 ]
タイムマシンを実現させて過去をよみがえらせ、永久機関を動かして、世間をアッといわせてみせる。
人類が滅び、宇宙に終焉が訪れるとすれば、マックスウェルの悪魔こそ、救世主か?この不可思議な悪魔に目をつけながら、時間の向きを決めているという「エントロピー」を、他に類を見ない面白さとわかりやすさで解説する。
[ 目次 ]
1 永久機関のはなし
2 エルゴード仮説より
3 確率から物理法則へ
4 秩序崩壊
5 なぜ空気はつもらないか
6 でたらめの世界
7 救世主としての悪魔
[ POP ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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サラリーマンが苦しいのは毎日自然に逆らってエントロピーを減少させようとしているからと理解。エントロピー増大をマクロの視点で見ると、また違った情報化の見方ができそうです。情報の波にのまれぬよう、自分の中の悪魔を鍛える必要があります。
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マックスウェルの悪魔に対する反証を知りたかったが、初版が古いこともあり、現在の状況は分からなかった。
内容は確率とエントロピーの関係が中心であり、なかなか難しい。エントロピーについて新たな視点から見ることができるようになった。しかし簡単には読めなかった…
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これはすごい。
こんなに読みやすいのに、エントロピーを軸とした「自分が今考えてみたいこと」にどんどん踏み込んでいってくれた。いかんせん熱力学・統計力学は学問的にもうHOTではないと考えがちであったが、昨年田崎先生の熱力学を読んで以降考えを改め、本書によりさらに興味を刺激された。
都筑先生の著作は学生時代にいくつかお世話になったが、教科書的ではない本書にこの著者の魅力が詰まっている。
なるほど、長年支持されるだけの理由がある本だ。
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熱力学第二法則、エントロピー増大についてわかりやすく解説している良著。物理の世界と同じように人間社会も放っておくと色んなモノが複雑化(エントロピーの増大)していく。たたでさえ情報量が増えて選択・決断の機会が増えているのだから、一つ一つをシンプルにすること(反エントロピーの増大)を心掛けないといけないと教えられました。
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最高に面白かった!
熱力学を中心に全ての自然現象についての知識が深まります。
ミクロの世界に浸りたい方は是非!
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熱力学や統計力学について、平易に解説されていると思うが、部分的には、難しくて十分理解できないところもあった。
でも、素人が一冊読んだだけで完璧に理解できるというほど簡単な内容ではないのだろう。本当に分かろうと思ったら、同じテーマの本をいくつも読まないと無理かも。
実際、朝永辰一郎の「物理学とは何だろうか」の次に読んだので、朝永本で分からなかったところの理解が少し進んだ。
ところで、エントロピーについての身近な例で、片付いた部屋は低エントロピーで、子供が散らかした部屋は高エントロピーだと書かれていたが、「この」散らかり方は(別の散らかり方と区別すれば)唯一の散らかり方なのだから、エントロピーが高いと言えるのだろうか?
という疑問が湧いた。
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熱力学が生んだ鬼っ子とも言うべきマックスウェルの悪魔を題材にエントロピーの概念を分かりやすく解説した本です。
単なる科学の啓蒙書の域をこえて、私たちの日常生活にまで言及した哲学的なテーマも内包していて、文系の人にも興味深く読める本になっています。
ただ、平易に書いてはいるのですが、ところどころ数式も出てきており、そこはかなり難しく読み飛ばしてしまいました。
最後、著者は宇宙の熱的死ならぬ情報化社会の発展による人間社会の死について懸念を示していますが、元になった本が書かれたのが1970年ごろだというのを考えると少し大げさな気もしました。