紙の本
「魚を食わずに豪州の肉を食え」ということなのか
2023/12/01 14:18
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ビキニ環礁での「第五福竜丸」の歴被爆によって日本がマグロ漁場を捜さなければならない事態になったことは全く知らなかった、またクジラのこともそうだけど豪州が日本の漁業にクレームばかりつけるのは、「魚を食わずに豪州の肉を食え」ということなのか
紙の本
国際交渉とはかくも大変なものなのか
2010/03/15 20:36
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
このところクロマグロをめぐる議論がにぎやかだ。大西洋・地中海のクロマグロが減少しつつあるため、取引を規制すべきかどうかで、国際的な議論になっている。
本書は、ミナミマグロに関する国際訴訟を詳述している。ミナミマグロは、オーストラリアやニュージーランド近海で漁獲される高級マグロだ。日本と豪州、NZの3カ国のつばぜり合いがすさまじい。
最近のクロマグロをめぐる動きに先行して、こういう事例があったのを知らなかった。日本は延縄漁業で、比較的大型のミナミマグロを獲る。一方、豪州などは小型のミナミマグロを巻き網漁業で獲る。小型のミナミマグロを獲るのは、資源の回復に与えるダメージがより大きなものとなる。
ミナミマグロの資源状況がよくないとの認識は60年代からあったと言うから驚きだ。そして、日本は自主的に漁獲を規制したりして、資源の回復措置をとっていた。このことは専門機関からも評価されていたのだそうだ。
しかし、豪州やNZは、調査がなされていない海域にはミナミマグロは存在しないという不合理な考えに立つなど、日本とは折り合わない。日本が南半球の海域でミナミマグロを獲るには、豪州の200海里内での操業や寄港が必要なため、いろいろ譲歩したり、苦心惨憺しながら交渉を運ぶ。豪州は200海里や日本船の寄港を「人質」にとりながら交渉を進める。
日本はしまいには、豪州の200海里内での操業を放棄することで、交渉時の立場を確保しよう図る。「人質」をとられていては、いつまでたっても不利だからだ。ここまでやらないといけないのか・・・。
こうした細かな駆け引きは、実にややこしい話だ。
豪州・NZに起こされた最初の裁判である国際海洋法裁判所では、思いがけず日本が敗訴する。しかし、次の本裁判である国連海洋法仲裁裁判所には、準備万端で臨み、勝訴を収める。こうしたことが90年代後半から2000年8月にかけて起きていた。
しかも、国際法廷に提訴されるというのは、戦後の日本にとって初めての経験だったという。著者は水産庁の立場で交渉にあたった。この訴訟には、外務省や国内外の法学者も関わって、かなりの大事だったようだ。
うーん、国際交渉というのは、さまざまな思惑がうごめいていて、一筋縄ではいかない。利益が相反する立場の者が合意に達するというのは、こんなにもむずかしいのかと考えさせられた。米国の弁護士を雇用するなど、多大な労力と経費を費やしている。
なかなかこういう国際交渉の実際の場面を知ることは少なく、本書は当事者による貴重な記録となっている。外交とは生やさしいものではないのだなと痛感した。
ミナミマグロをめぐるこの国際訴訟は、このところの大西洋・地中海クロマグロをめぐる交渉に活かされているのだろうか。
ともあれ、ミナミマグロの訴訟が結審したあと、日本は豪州・NZと和解して、執筆時点(2002年)では良好な関係になったとある。最後に来て、少しほっとした。著者自身が「雨降って地固まる」と表現している。
駆け引き自体が目的になるのではなく、みんなが幸せになる方向で、交渉ごとが進むような世界になってほしいものである。
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[ 内容 ]
日本人の大好きなマグロの寿司や刺身。
だが、そのマグロは近年、国際条約による規制をめぐって紛争がしばしば生じている。
二〇〇〇年、日本がオーストラリア、ニュージーランドを相手に、ミナミマグロをめぐる国際裁判で逆転勝訴したが、この判決は何を意味しているのか?
裁判の当事者が資源問題としてのマグロの現状を明らかにする。
[ 目次 ]
はじめに ワシントンD.C.の国連海洋法仲裁裁判所にて
1 マグロの種類と漁業
2 マグロ漁場の発展と国際条約による規制
3 マグロと日本人
4 ミナミマグロ漁業の歴史と資源論争
5 ミナミマグロと国際裁判
おわりに 仲裁裁判における逆転勝訴とミナミマグロの保存と最適利用に向けて
[ POP ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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この本のおかげで大変助かりました…。
国際裁判もあてにならないものじゃあるね。特に機関が出来立てほやほやの場合は。
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ミナミマグロの漁獲量制限についての交渉がなかなか進まず、日本単独で実施した調査漁獲に関して、豪州+ニュージーランドから訴えられた裁判の顛末が主な話の中心です。資源管理のために提示された仮説の科学的根拠を判断するのが難しいのはもちろんですが、こういう国際私法に関する紛争に巻き込まれた場合、司法機関が中立公正じゃなかったり、管轄権をはじめとした手続法や裁判法が明確じゃなかったり、色々と問題があるんだなぁと実感しました。マグロの資源管理問題というよりも国際私法の仲裁に関する本だと思った方がいいかも。
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高級マグロとされるミナミマグロに関する、豪州ニュージーランドと日本の紛争。その紛争によって引き起こされた裁判の経緯と背景について。
当事者の方の書下ろしなので、臨場感もあっておもしろかったが、何分当事者の熱い思いが入りすぎていて、少し興覚めな部分も。
アメリカの水爆実験から漁場が高緯度に変わりそこで発見されたクロマグロに次ぐミナミマグロ。発見当時のミナミマグロの資源量、処女資源から乱獲され、相当数量が減った。ワシントン条約会議で絶滅危惧種に認定される気運が高まるが、認定されれば漁獲することができなくなるので、日本が地域漁業管理機関での管理が適切になされるものにはワシントン条約は介入すべきではないと主張。
その結果、オーストラリア、ニュージーランド、日本の3国で「みなみまぐろ保存委員会」を設立し、ミナミマグロ条約の締結を急いだ。
絶滅危惧種に認定されることを防ぐ目的で締結した条約であったが、豪州ニュージーランドと日本のスタンスが決定に違った。
日本は適切な管理をし資源量は回復し漁獲量を上げることは可能というスタンスに対し、豪州ニュージーランドは動物愛護の観点や漁獲量が増えてミナミマグロの単価下落の危機感で、一向に話が進まない・何も決まらない委員会となってしまった。
利害が一致しない集団同士では何も決まらないということは自明だが、その集団が国というスケールまで大きくなると、もはや手がつけられない。
国際裁判で決着がついたが、まれなケースなのかもしれない。竹島も国際裁判で決着を着けるべきだといわれるが、それも難しい理由が本書を読んで何となく分かる。
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クロマグロ Nouthern Blue tuna
ミナミマグロ
→刺身、寿司用の高級マグロ
メバチマグロ Bigeye tuna
→刺身用だが、料亭などではなくスーパーで刺身用と売られている
キハダマグロ Yellow tuna
→ピンク色の肉食。これ回転すしで回ってるやつかな。。
ビンナガマグロ
→白身のマグロ。脂がのっている部分は「ビントロ」。これも回転寿司かー
マグロの種類にはそこそこ詳しくなりました☆
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2002年刊。著者小松は水産庁漁場資源課課長、遠藤は同国際課課長補佐。戦後の食糧難を支えた鮪を巡る日本の水産業と国際的関係について、条約の変遷、鮪漁業の変遷、海外鮪事情、鮪の調査採取に関する国際裁判の模様を論じる。言いたいことは山ほどあるが①官僚のプレスリリースを含めた戦術の拙劣さ、②弱者の戦略である国連利用、また国連設置の機構(国際海洋裁や国際司法裁など)の活用・準備・事前検討の拙劣・不備、③国際司法裁判所等に利用できる弁護士(日本の場合、法務省所属の訟務検事の拡充・活用も含まれよう)の少なさに暗然。
法廷の利用も外交戦略の一。そして、偶々、今回は結果としては勝ったものの(ただし、裁判所の管轄権で勝利を得ただけで内容の判断には至らず)、仲裁裁判に先立つ暫定措置では敗訴。その要因の一が、英語を母国語にする豪州・ニュージーランドの国連機構を利用することの有利さである。また、水産庁を越えた省庁横断的に豪州の環境問題を外交武器に使えない実情も感じ取れる。ちなみに、本書では、戦後の条約の変遷が丁寧な点は評価。また、条約に加盟せずに利得を貪る台湾漁業関係者とこれを援助・助長してきた日本の商社の問題も筆が及ぶ。
水産物に関しては、鯨は勿論、鮪に関しても、弱者の戦略を強かに実行する豪州・ニュージーランドとの外交が肝。一方、鯨と違い、鮪は大消費国(ユーザー)日本が、逆のヘゲモニーを握れるはず。環境を錦の御旗にしてきた豪州ら内の漁業関係者を日本の味方として、世論形成できるか。誠実に交渉することは重要かつ当然の有り様だとしても、相手国の意思決定に如何にコミットするか。もう少し考えてもいいのではないだろうか。
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ミナミマグロをめぐる2000年の国際裁判の経緯を中心にマグロの資源問題を解説している。前半は情報がまとまっていていい。
後半はミナミマグロをめぐる経緯で、著者は日本政府の代表としての立場だからやむを得ないが、日本側の取り組みを賞賛し、相手国側を非難する記述が目立ち、辟易した。4章の途中で読むのをやめた。
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環境保全のために外国が日本に取らせまいとする傾向は捕鯨と似ている。
マグロを食べるためにこんなに追うのが日本人だけでよかったけど、ヘルシーブームで今後取り合いになるのかもしれないと思った。