紙の本
少女から女へ、天使から小悪魔へと変わっていくアリスがいいですね。ほんの少しの毒が、とっても女らしくて、これは女性じゃなきゃ書けないぞ、って思ったりします
2005/09/27 21:37
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「仁木探偵事務所に勤める20歳を迎えたばかりのアリスこと市村安梨沙。仁木とアリスのコンビが、〈主婦道〉のメンバーの悩みを解決する」推理小説。
可愛いらしくて、頭が良くてというアリスが、自分を主張し始めました。天使が、ちょっと普通の女性になってきて、話がぐっと身近になった感じがします。
市村安梨沙は20歳になったばかり、でも誰が見ても高校生くらいにしか見えません。で、渾名はアリス。今は、実家を出て探偵事務所の所長仁木順平の長女美佐子と暮らしています。そんな彼女が心配しているのが事務所の経営状態。順平が利用した転身退職者支援制度の支援も、一年経った時点で終るのです。それなのに、仕事がありません。そんな2人が訪れたのが、アリスの伯母である篠原八重子の家。彼女はそこで〈主婦道〉の教室を開いているのです。
教室の主婦たちのなかでも、一番やさしそうな女性。彼女が参加する児童館で毎週行われる母親の会、そこで怪しい事件が「虹の家のアリス」。前に事件を解決したことがある産婦人科病院で起きた乳児誘拐、調べれば密室の様相が「牢の家のアリス」。〈主婦道〉の仲間で、猫好きで有名な早苗。31歳で独身の彼女が見ているHP、そこで報告される連続猫殺害事件。クリスティーの名作『ABC殺人事件』を連想した彼女に襲い掛かる悲劇「猫の家のアリス」。
現在家出中のアリスが実家に着替えを取りに行った時、出会ったハウスキーパーの蕗子からの依頼は、変わってしまったアリスの性格の謎を解くこと「幻の家のアリス」。仁木の息子周平の婚約者にストーカーが。それは以前、彼が付き合っていた女性だった「鏡の家のアリス」。長男に続いて今度は美佐子まで結婚しそうな気配、そんな仁木の元に殺されそうな女性から依頼が「夢の家のアリス」。
今回は、順平が表に出て、アリスは黒子になった印象です。それには理由があって、それがアリスの本当の姿に関係があるのでだが、それは小説を読んで理解してもらうのが一番。可愛い少女、そんな印象しか与えていなかった彼女が、すでに大人の仲間入りをし、女であることを主張し始めました。少女から女への軌跡が、少し子悪魔的なところが北村薫の円紫師匠シリーズとは違います。これは女性ならではの視点でしょう。
巻末の横井司の加納朋子論「つながることへの信頼」は、かなり本格的な論考です。ただしあまりにマニアックで、初めて加納の本に出会った読者には難しいかもしれません。なかに北村薫への言及があって、それは加納自身も認めているところが素直でいいです。ただし、表題作を読み終わったとき、わたしはが思ったのは宮部みゆきですね。無理せず、すなおに松尾由美や若竹七海といった同世代作家にも触れて欲しかった気がするのは私だけでしょうか。
インタビューではアニメ少女だったというところが意外で、特に最後の挨拶は加納の人柄がよく出ていて、ファンになる人も多いことでしょう。ただ、インタビュアーが加納に遠慮をしすぎてしまって、何処にも笑いがないのは失敗です。あまりに奇麗事に終始し、距離感を感じてしまいます。せめて、同じシリーズの折原一『倒錯のオブジェ』の対談のような親密さが欲しいものです。結局、作品の話で終始して、加納が見えてこなかった気がします。
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『螺旋階段のアリス』の続編です。
全体的な印象は前作と変わらず。ただ安梨沙が人間らしく、生々しく描写されているなあ、と思いました。あとなんだか萌絵とかぶる部分が若干ある気がするのは気のせいですか?まあ萌絵ほどうざくはないんですけども。
個人的には「鏡の家のアリス」が一番インパクトがありました。ストーカー怖い。途中で「あれ?おかしいなあ」と思っていたら案の定でした。仁木は素直でまっすぐな人ですね!
あと「猫の家のアリス」もよかったです。猫はかわいそうだったけども…。
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「螺旋階段のアリス」の続編です
話は前作「螺旋階段のアリス」の直後から始まります
文藝春秋社の本格ミステリーマスターズからの出版です
なので、ちょっと装丁がつまらないです
話は前回の続きそのままなので、「螺旋階段のアリス」を読まれた方は
そのまま続きとして読めるでしょう
表題含む全6作の連作になっています
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扱われる事件自体はささやかなものがほとんどですが、そこに描かれる「人間」の優しさが、とても暖かい。逆に、悪意のある人間の方が何処か不自然で、巧く描かれていないように思いますが。それくらいに「優しい」作風。特に『鏡の家のアリス』の逆転の視点は見事としか言いようが無く。捻くれたミステリ読みの裏読みを「そんな読み方をしたら人間が卑しくなりますよ」と諭されているようでした。
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『螺旋階段のアリス』の続編で、本格ミステリ・マスターズの1冊として刊行された連作短編集。前作のテーマが「夫婦」であったのに対し、「家族」がテーマ。仁木順平、市村安梨沙はもちろん、少なからず登場人物は前作から引き続いているので、まず前作を読んだあとに読まれることをお勧めします。
以下、各編について。
●「虹の家のアリス」
育児サークルへの度々の嫌がらせ。会場の部屋の鍵が付け替えられたり、勝手にキャンセルされていたり・・・意外な犯人、意外な動機が微笑ましいです。
●「牢の家のアリス」
産婦人科でおきた新生児誘拐。しかも密室から。あまり悪意が感じられないだけに始末が悪い気がします。
●「猫の家のアリス」
ネットの猫好き掲示板に猫殺しの被害の書き込みが続く。しかも猫の名前のイニシャルはA、B、C、と続く。「次は自分の猫?」と心配になったDの猫を飼う女性が仁木に相談してくるが・・・ある意味では「牢の〜」よりも悪意を感じるけれども、作風がそれを打ち消している気がします。
●「幻の家のアリス」
安梨沙の実家のお手伝いさんが、最近自分に対して安梨沙が冷たい理由を調べてほしいと依頼してくる・・・ターニングポイント。この前と後でがらりと変わります。
●「鏡の家のアリス」
結婚を決めた息子から、出張中に婚約者をストーカーから守ってほしいと頼まれるが・・・反転した世界がもう一度反転して元に戻ったような気がしました。
●「夢の家のアリス」
一度に重なる多くの依頼、その一つが花盗人を捜すものだった。そして安梨沙は・・・ミステリとしては花盗人の話ですが、むしろ主題はそれ以外のところにあります。まさに思ってもいない結末。
どんな悪意もこの人の手にかかればオブラートに包まれたようになったしまう、そんな印象です。もちろん良い意味で。やはり表題作がもっとも「らしい話」といった感じがしました。その一方、後半はミステリとしてよりもシリーズを通しての展開を重視した雰囲気。次作に読者の期待をつないでいます。
収録作:「虹の家のアリス」「牢の家のアリス」「猫の家のアリス」「幻の家のアリス」「鏡の家のアリス」「夢の家のアリス」 (2005.01.10)
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ダンディで親しみやすい私立探偵のおじさま・仁木と、美味しいお茶を淹れることと推理が得意な謎めいた助手・アリスこと安梨沙の短編連作謎解きストーリー。テーマは家族。安梨沙ちゃんもちょっとだけ心の内を見せはじめています。アリスワールドに関連付け。地元図書館(05/05/06)
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育児サークルへの嫌がらせの犯人は? 連続殺猫事件の真相は?
仁木探偵事務所に持ちこまれる様々な謎は、美少女安梨沙の助けで鮮やかに解決する。
「アリス」と猫とティータイムを愛する名探偵登場
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育児サークルへの嫌がらせの犯人は?連続殺猫事件の真相は?花泥棒の正体は?ささやかだけど説明できない謎でお困りなら、どうぞ仁木探偵事務所へ!『アリス』と猫とお茶を愛する名探偵。
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育児サークルへの嫌がらせの犯人は?連続殺猫事件の真相は?花泥棒の正体は?ささやかだけど説明できない謎でお困りなら、どうぞ仁木探偵事務所へ!『アリス』と猫とお茶を愛する名探偵
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アリスシリーズ2。登場人物のディーテールもしっかり書き込んであるので、もっと続く予感。というかシリーズが続くことを望みます。
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読んでて楽しい。少しドキドキするけれど、読み終わっても全然怖い気持ちが残らないのがすごくいいですね。
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脱サラ探偵の仁木公平、その助手兼お茶くみの美少女、市村安梨沙。
どうやらこれはシリーズらしい。
優しさあふれる、この作者らしい短編集
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○2009/02/19
星3か4か迷ったけど4。
結局アリスは読んでないですが…。今回はそこまでゆったり、って感じではなかったけど、2人らしくスローっぽくっていうか楽しく1冊。仁木さんが可愛すぎるんですけど。なにこのオッサン(笑)
全部通して”家”がテーマってことで、前作より一歩引いた視点というか、視野が広がった話だった。その分仁木さんと安梨沙の2人!ってところは少なかったけど。でも安梨沙の本領発揮?(笑)いいです可愛いです。
今回出てきた仁木さん一家…というか、子ども2人が良かったなー。飄々と父をからかうあたり、奥さんの血をひいてるな、と(笑)
それぞれの短編として頭に残ってるのは、ミセス・ハートさんらが初登場する虹の家と、息子の周平さんの話の鏡の家なんだけど。それぞれ事件が終わった後に仁木さんと誰かで交わされる会話のあたりがいいなー。ほんとキレイに終わる。
安梨沙と英一郎もなんだかなんだか、という感じになってきているようだし、これもまたシリーズ続いてくれないかなぁ。
落ち着く一冊だった。
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前作『螺旋階段のアリス』の続編。6編の短編連作から成る。ミステリアスで可憐な安梨沙&中年探偵・仁木のコンビネーションと
不思議の国のアリスのコラボレーションが新鮮で楽しく読めた前作と比べると、早くも少々飽き感が・・。
前作ではまず、安梨沙が何者なのか、という点が、様々な“日常の謎”を解決していく中で、徐々に明らかになっていくのがミステリの肝だったのに対し、今回はそれがもう明らかになってからの話なのでワクワク感が半減。
そして仁木の娘や息子が登場する物語があるのでおとぎ話から一転ファミリードラマに。そう言った点で前作のファンタジーの香りが薄れた感じがした。それはそれで良いのかもしれないが、加納作品全体を覆う独特な不思議な空気が好きなので前作の方が好み。
それでも一番はじめの表題作にあった“トランプたちとのお茶会”にはその不思議感が漂っていて良かったと思う。
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「螺旋階段のアリス」の続編。
前作よりも安梨沙というキャラクターに踏み込んで書かれています。
印象に残ったのは、「猫の家のアリス」と「鏡の家のアリス」かなぁ。