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〈民主〉と〈愛国〉 戦後日本のナショナリズムと公共性 みんなのレビュー

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みんなのレビュー40件

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38 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

「屍臭」への憧憬

2006/01/01 16:45

9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:喜八 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 慶應義塾大学総合政策学部助教授・小熊英二氏による1000ページ近くの厚い本です。
 第15章「「屍臭」への憧憬」では、戦後保守派を代表する評論家であった江藤淳が取り上げられています。これはもう力作といっていいでしょう。熱のこもった「江藤淳論」となっています。
 著者の小熊英二氏は江藤淳の思想を正面から批判します。と、同時に批判の対象に強いシンパシーを覚えてもいるようです。不思議なようでもありますが、おそらくどこか共通した資質をもつと意識しているのでしょう。
 文学者なのに恐ろしいほどの政治力をもつ、といわれた江藤淳は、長年連れ添った夫人に先立たれたのち、「慶子の所へ行くことにします」という遺書を残して自殺しました。ある意味では首尾一貫した最期のようにも思えます。
 最終章「結論」では、加藤典洋(以下敬称略)、福田和也、橋爪大三郎、佐伯啓思などが、当たるを幸いとばかりに撫で斬りにされています。爽快でした。

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紙の本

「戦後日本」の清新なる総括。

2003/05/02 11:11

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る

この本を書くきっかけについて作者はこう述べている。「考えてみれば『戦後』とは現代の人びとがもっとも知らない時代の一つである。なぜ知らないのかといえば『もうわかっている』と、安易に考えすぎているからだろう」。確かに、近すぎるものは、歳月が経たないと、なかなか評価が定まらないものである。


作者が俎上(そじょう)にのせた文化人・知識人をざっと羅列してみる。丸山真男、大塚久雄、小林秀雄、福田恒存、網野善彦、竹内好、吉本隆明、江藤淳、鶴見俊輔、小田実…。彼らの主義・主張の背景となるべき生い立ちや生まれ育った階層、敗戦時の状況にもふれているのだが、いわゆる戦前・戦中・戦後派では世代差による微妙な温度差が、当然ある。

それもさることながら、ぼくには、エラい学者先生はもちろん、取り上げられた一般人の折々の発言も、とても興味深かった。そのあたりをランダムに列記する。

○「天皇陛下、万歳!」と日本軍の兵士たちは、死んでいった(殺されて)いったのだが、敗戦後、多くの人は天皇は自刃するものと思っていたのに、人間宣言なんかして生き延びてしまったこと。

○予科連帰りの生徒たちに、それまで皇国教育を説いてきたのに、いきなり民主主義を唱えて彼らから一喝されて何も答えられなかった教師。

○自衛隊をつくるにあたり、参加を呼びかけられたが、断固拒否した元将校。

○アメリカに対してアンビバレントな感情を抱いていた江藤淳。しかし、留学先のアメリカ東部の町で、日本が喪失してしまった伝統的なもの、それこそ愛国的なもの、山の手の、においを感じてしまったこと。

○日米安保条約を締結した岸内閣に対する右の人も左の人も抱いた激しい憤りと失望。60年アンポ闘争。日本が韓国のように、怒りをダイレクトにアピールしていた時代。

○サヨク学生の教祖だった吉本隆明の著作に関して、ほんとのところは、よくわからないで読んでいたと率直に語る元大学生(ブームとは、そういうものでなかろうか)。

○小田実がアメリカへ行き、豊かな経済社会の中で生きている当時のアメリカの若者たちが、政治に対する意識の低さを嘆いているくだりがあるが、それはまったく現在の日本の若者たちにあてはまることだ。

○帰国子女の草分け、鶴見俊輔は、アメリカの哲学、プラグマティズムの洗礼を受け、その後、「ベ平連」の活動につながるのだが、すでに1960年頃に「無党派」という言葉を使用していることには、驚いた。民主主義は、ともすると「量」に重きが置かれ、ゆえに政党政治であり、また、選挙では大票田である労働組合や宗教団体にすがらざるを得ないのだが、基本は一個人であり、一市民であるという鶴見の意見には、改めて賛同した。

総括というべきなのか。「結論」の章まで、作者の考えが、まったく前面に出てこない。ここまでクールにとらえられるのは、作者の世代が、前述の文化人たちにリアルタイムで感化されなかったことが大だと思う。

よくいわれるように、日本人には一貫した倫理や論理がないと非難される。愛国心も希薄だと。「民主主義」をチョコレートやチューインガムといっしょにアメリカからもらった日本。そういうものは、民衆が血や汗を流して勝ち取るものらしいのだが。戦後の米ソの対立が、幸か不幸か、取り付く島もなく、日本はアメリカの属国となり、1950年に勃発した米ソ代理戦争である「朝鮮戦争」が、日本経済復興の契機となる。作者によれば、1960年代までは「『民主』と『愛国』は共存状態」にあったという。

マーケティング用語でポジショニングだの、マッピングとかいうのがあるんだけど、それに近いのかな。参考書や辞書というと語弊があるかもしれないが、戦後の日本を知るのには、便利な一冊だと思う。

タイムマシーンの目盛りを、1945年8月15日に合わせよう。

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紙の本

目から鱗の落ちる明晰さ。大河小説を読むような興奮。

2003/03/26 20:19

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:GG - この投稿者のレビュー一覧を見る

400字詰め原稿用紙で2500枚のこの大作がテーマとしているのは「戦後思想とは何だったのか」という問である。この大きな問に答えるための方法として、1945年の敗戦から1960年代末の全共闘運動に至るまでの言説の歴史が、巨大な織物として描かれている。

問題意識は明瞭である。著者は、1945年の敗戦から生活水準が戦争前まで戻ったとされる1955年までの期間を「第一の戦後」と呼び、60年の安保闘争を経て60年代末の全共闘運動に至るまでを「第二の戦後」とする。このふたつの戦後には、大きな断絶がある。前者において戦争体験の記憶は右派にとっても左派にとっても生々しいものであったが、後者においては時間の経過と世代の交代により戦争が一種の抽象性をおびてしまう。したがって同じ言葉、たとえば「市民」が使われていてもその意味するところは全く違う。その違いを踏まえなければ戦後思想をとらえることにならない、というのである。

本文だけで800頁を越える分量は、この問題意識を徹底するために是非とも必要とされたものである。著者は、ある論文(たとえば丸山真男「超国家主義の論理と心理」)を論じるにも、その内容を要約するだけではなく、発表時の社会状況が実感をもって感じられるように描写し、著者がそのとき何歳でどのような境遇の中でそれを執筆したのかをも記述の中に盛り込んでいく。さらに言えば、読者についてもどんな境遇の下でそれを読んだのかということをも問題にしていくという方法をとっている。

読み進むにつれ、様々な断片が組み合わされて、さながら巨大なジグソー・パズルが完成するように戦後史がひとつの図柄として浮かんでくる。著者は素晴らしい筆力で、多数の資料を巧みに引用・配列して、戦後思想についての説得的な物語を作り出している。この手法が最も精彩を放っているのが、60年安保を扱った第12章である。読みながら評者は自分の感情が揺さぶられるのを感じ、驚いた。全体を通じて、大河小説を読むような興奮を感じた。

小説のような読みやすさの一因は、戦後思想を代表する何人かのスター論者の登場のさせ方にある。たとえば吉本隆明。彼はいわば悪役を振られているのだが、その悪役ぶりが実に堂に入っている(今風に言えば、キャラが立っている)。といって、吉本本人の書き物のように訳のわからない造語や口汚い罵詈雑言でそれがなされているのではなく、あくまで引用と冷静な記述からなっているところが心憎い。

専門家でない一般の読者の読みやすさに細かな注意が払われている点も好ましい。いつもはこうしたテーマを敬遠している人も、大長編小説に挑戦するつもりで読んでみてはどうだろうか。総合雑誌など普段は手に取らない人にこそ向けて、本書は書かれていると感じた。高価な本だが、それに見合うだけの充実した読後感が得られることは本書を評する多くの人が保証している通りである。

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紙の本

50代以上にとっては特に必読の書物

2003/01/16 14:29

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:仙道秀雄 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 この本は日本現代史であり、各時代の言説の変遷史であり、言説家の個人史と時代との関連を詳説した本である。叙述の方法は、ある言説はその言説を語る著者が時代と向き合った結果であり、その言説にはその時代の人々の心情が仮託されているという仮説に基いている。
したがって言説史は世代論であり、その世代の経験した背景がともに語られている。こうした方法によって、ある概念(例えば戦後民主主義)が、いかにその世代、その時代ごとにどうして異なったニュアンスをもってしまった
か、が理解でき、逆に吉本隆明さんのような大きな影響力をもった思想家が次の世代にどんな誤解を与えてしまったかも理解できる。この半世紀以上にわたる日本史・言説史を考える上でのしっかりした地図がここに登場したといえる。

 その意味でこの本はそろそろカウントダウンの始まった、人生の着地の仕方のメドをつける段階にはいった私(らの世代1950年代初頭生まれ)にとって一読、二読、三読する価値のある本である。とくに私の父と同年生まれの吉本隆明さんの意味ありげで確信にみちた言説がいかに20歳前後の自分に影響していたかを改めて確認できた。と同時に、大学卒業後の自分のあり方が非吉本的な方向をもっていることを漠然とながら感じていたのだが、それはそれで正当な吉本圏からの離脱であったのだとも思った。

 一言で言えば、私に大きな影響を与えた吉本隆明さんにしても故江藤淳さんにしても言葉を紡ぎだす根本にあったのは、世代的・個人的には止むを得ないにしても、私情に傾きがちだったとする説に私は同意する。それでは経営はでけん、ヒトは使えん、会社事業は継続せん。正当な離脱というのはそういう意味である。

 もちろん吉本隆明さんや故江藤淳さんの考え方を経営に反映させようと言うのは行き過ぎだとは思うが、かつての私は、ヒトを雇う時、解雇する時など経営的な判断をするときに「吉本さんならどういう風にするだろうか」と思ったほど深く浸透していたのも事実であった。吉本さんには迷惑な話だろうが。

 吉本隆明さん以外の人々からも自分が影響を受けた事も良く分かった。自分が故竹内好さんや小田実さんと共通する部分を持っていることを知ったのは意外だったし、もっとびっくりしたのは、60年安保のくだりを読んでいた自分の起こした激しい感情的動揺だった。

 このようにどんな日本の戦後の思想(家)が自分に影響を与えているかが分かっただけでなく、この本は歴史的な事実についても今まで知らなかったことをたくさん教えてくれる。例えば戦後すぐの段階では日本の一人当りGNPは100ドルだったこと、アメリカの10分の一以下だったことなど。

 以上のような含みをもってこの本のお薦め度は五つ星、最高評価をつけた次第。読書仲間で評判の講談社の日本の歴史が完結したことでもあるので、終わりの23−25巻あたりを読めば更にこの作品への理解が深まるのではないか、と思っている。

 著者の小熊英二さんに、このような本を世の中に出していただいたことにたいして深く御礼申し上げたい。

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紙の本

読み応えがある

2015/08/12 23:15

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る

小熊英二氏の本は、大部のものが多いが、それだけの価値があります。この本も戦後の思想を知るのに必携です。吉本隆明氏、鶴見俊輔氏、小田実氏、江藤淳氏等、今では故人となってしまいましたが、歯に衣着せぬ評価(もちろん批判だけではありませんが)は読む価値があります。特に今のような不穏な時代には、読んでおくべきでしょう。

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紙の本

日本人の必読書

2003/03/08 13:15

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:相如 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 これは日本人の必読書である。従来はナショナリズム批判のためのナショナリズム論と言うべきものが多かった。しかし小熊氏はそのような姿勢をとらず、思想家個人を追体験的に叙述することで、「民族」「民主」「愛国」などの言葉に賭けた彼らの心情というものがきちんと描かれている。我々日本人の戦後思想の過去の営みに思いを馳せ、現在の戦後民主主義の「来歴」を確認できるという意味で、まさに小熊氏のこの労作は見事と言うほかない。これを読まないで日本のナショナリズムを語ってはいけない本である、とあえて断言しておきたい。

 しかしこれは読み物、あるいは一般教養の基礎文献としての評価である。これを学問的にみたらどうだろうか、というといささか疑問なしとしない。つまり、記述はあるが分析は弱い。
 とくに第1章の戦前の記述は平面的で深みに乏しい。戦後の回想に頼っている部分も多いのはちょっと問題である。なんで戦争に突き進んだのか、国民の大多数が支持したのか、そして止められなかったのか、これがきちんと描かれていない。ひたすら悪い時代だった(それは自明である)、ということだけが延々と書かれている。とくに目新しい視点がない。戦後民主主義と称される知識人がそう思っていたことをそのまま叙述する必要はなかったのではないだろうか。「にもかかわらず」というところを描けばよかったのではないか。
 思想家の評価も個人的な好みや道徳感情に基くものが多い。妙に公平に描かずに好き嫌いがはっきりしている点は小熊氏のいいところだが、嫌いな人物についてももうちょっと丁寧な叙述があってしかるべきだった。特に福田恒存の思想を「良心の呵責」をかきたてられたくなかったから、などという評価などはそれを示唆するような文章の引用もない乱暴な推測であり、オールドリベラリストもこれも大した文章の引用もなく単なるノスタルジックな生活保守主義者として断罪されている。こういう断罪調の叙述は感情移入の方向を決められるので読む分には面白いが、「結局人間的にダメだったんだ」という印象しか残さないという点では問題である。丸山や竹内が戦争体験に真摯に立ち向かっていたか、というのも微妙である。とくに丸山や鶴見の戦争被害体験を過大評価するのは少々問題である。平時であれば人並み以上の尊敬を集めるはずの知識人が、学もない上官に命令されたり殴られたりするのだから。丸山が近代主義思想を動員してそれを「前近代性」とか「主体性の欠如」とか断罪したのだ、と言えないこともない。オールドリベラリストを生活保守の側面から批判するのであれば、当然このような批判も成り立つ。
 これが保守ナショナリズムへの強力な批判になっているかというと、それも微妙だ。「民主」と「愛国」を切り離した現在の戦後民主主義観が60年代後半以降に作られたものであり、保守ナショナリストがこうした「誤読」に基いているというのはこの本の学問的成果と言える部分である。しかし、こうした「誤読」は保守に限ったものではなく全般的なものである。最後の保守ナショナリズムへの批判も逐一は指摘しないが、これだけの量を論じてきたわりにほとんど聞いたことがあるような議論であるのにはがっかりした。果たして小熊氏の言う「戦後思想の現代的な読みかえ」から、現在の保守ナショナリズムは除外されるのだろうか? 「民主」と「愛国」の一致を叫んでいる保守ナショナリストの試みは全否定できないはずではないか?

 いろいろ批判を連ねたが(本当はもっとあるが字数の都合上)、あくまでこの本を大きく評価した上でのことである。とりわけ、戦後民主主義を「復権」して「健全なナショナリズム」を構築していこう、という小熊氏の熱意が感じられた。もっとも小熊氏自身はそれを否定しつつも、「それでもなおナショナリズムと呼ぶかどうかは各人の自由としよう」と答えるだろう。

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2004/09/27 21:26

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