紙の本
ファシリテーション的会議のマニュアル本。
2003/03/22 11:04
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:aguni - この投稿者のレビュー一覧を見る
上司や権力者にお伺いを立てて決定を下す、デフレを伴う情報化以降の世界ではそんな効率の悪い組織は生き延びることができない。現場に権利や権限が委譲され、その各メンバーが常に改善を続けていく組織、というのが、メジャーな形となっていくだろう。現にトヨタを代表する「勝ち組企業」というものはそういう形になっている。そうではないと、組織体が大きくなればなるほど、「組織の肥大化」「官僚制」という弊害が生じることがわかっている。
個々の人間が現場で考えたり判断したりできる、ということは、しかし決して組織構造がなくてもいい、という意味ではない。やはりそこにはリーダーシップも必要だし、それぞれ個々人の能力を引き出し、あるいは調整し、まとめあげる能力が必要になる。
そこで必要な能力が「プロジェクトマネジメント」やこの本が紹介する「ファシリテーション」という技術になる。この本の帯によると、<「ファシリテーター」とは、中立的な立場で、チームのプロセスを管理し、チームワークを引き出し、その成果が最大になるよう支援する人物>とのこと。
訳者はコンサルタント会社の代表取締役。「より多くの人にファシリテーションの知識を広めたい」との思いからこの本の翻訳・出版を行った、というだけあって、前書きにこの本とファシリテーションが必要な組織について、リストアップしている。引用しよう。
・メンバーに覇気がなく、職場が沈滞ムードである。
・メンバーの多くが、「自分はこんなにがんばっているのに、誰かのせいで成果があがらない」と考えている。
・指示待ちのメンバーが多い。
・権限が一部の人に集中していて、物事がそこでストップしてしまう。
・仕事やプロジェクトに対するメンバーの意識や価値観がばらばらである。
・他部門との協力がうまくいかない。
・会議などでの発言に偏りがあり、声の大きい人や力の強い部門の意見が押し通されがちである。
・結論がみえない無駄な会議が多い。
・会議などで決まったことが実行されない。
以上のうち、思い当たるものが3つ以上あれば、「早急にファシリテーターを育成する必要がある」という(もちろん、この本を買う必要がある、という意味でもあるだろうが)。
この本の内容の中心が「効率的な会議の行い方のテクニック」に終始しているのは残念だが、それだけ詳細に書かれているのも事実。生産性のない報告会のことを会議だと思っている組織にとっては、目からウロコ本かもしれない。
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この本をきっかけにファシリテーターズ・クラブが旗揚げされたという、言わば原点とも言うべき一冊。会議の、グループの、そして組織のファシリテーションについて、その基本スキル(質問をする、意見を聞く、記録する、グループを読みとる、コンセンサスを形成する)と様々な手法やツールについて解説する。また、ファシリテーションの設計(会議の詳細なアジェンダ)についての章も興味深い。
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ファシリテーションに関するスキル・ツールが記載されている。情報量がありすぎて、もう少しまとまっていると読みやすい。ファシリテーションを勉強するときは参考にする。
●熟練はオープンエンド型の質問を多用して、グループが自ら課題や問題の核心を探り当てるように議論を掘り起こしている。
●厄介な問題を扱っている、発言の少ないグループにはオープンエンド型の質問のほうがよい
●応援の言葉をかけることで、発言が出てくる。「ありがとう」や「なるほど、そのアイデアはいいですね」
●沈黙が続いてもあわてない。質問した直後は考える時間が必要だから。
⇒ オープンエンドの質問をしたあとは10までゆっくり数えてみる。
●非言語メッセージ:
⇒ 「他に意見はありますか」といいながら、背を向けたり、顔をしかめたら、「もうこれ以上意見を出してほしくない」というメッセージが伝わる
●発言の中身とその背後に隠れているものを理解する努力をする。
●選択しながら記録することが大事。
⇒ 難しければ、「記録したいので、1つか2つの要点にまとめてくれないか」と聞いてみる
●何かの作業の途中でやる気が低下してきたら、それは次のステップに移る潮時か、グループが難題や困難に突き当たったというシグナルかもしれない。
●ブレーンストーミングは会議の終わりや参加者が疲れているときはやらない(新鮮な気分が必要)
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コンサルのお仕事をしているといろんなお客さま先に伺うんですが、本当にいろんな組織があるんだな、と感じます。そして、そんなところに適したリーダー像も多種多様。ただ、オンラインでのコミュニケーションを多用するような世界観が深化する近年は、その環境で発揮できるリーダーシップが必要だと思ってました。そういう点から、「ファシリテーション・スキル」の高いリーダー像てのは、今後ますます必要になってくるんじゃないかと考えてます。本書はそう感じるのに随分足しになりました。
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グループの生産性を最大にするためのスキルとしての「ファシリテーション」の有効性と具体的に必要なスキルについて書かれている本です。
改めてファシリテーションは、能などの伝統芸能と同じように、訓練と本番での実演によって磨かれていく巧の世界であると実感しました。
訓練(読書・研修)によってファシリテーションで有効なスキル・ツールをいつでも引き出せるように頭に叩き込んでおき、実演(セッション)で適用、演技結果を総括して次につなげていくということを続けていって技を磨いていくしかないのでしょう。
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基礎からファシリテーションを学びたい、初めて学ぶ、という人にはオススメの一冊。基本的なことがそつなく網羅されているので教科書的に使える。際立った特徴はあまり無いように感じたが、ブレストやフィッシュボーンチャート使い方、開催のしかたなど具体的な事前準備方法等まで記載されていてそこは新設だなと感じた。
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項目のまとめが少し冗長な印象で読みづらかった部分はありますが、ファシリテーションを行うに際して基本的なポイントは余すことなく網羅されている感じです。
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ファシリテーションについての本.建設的な会議運営にはコミュ力はじめ色々なスキルが必要と感じた.職業柄会議は多いが,船頭多くして・・・のような無駄な会議にならないようにすることはもちろんとして,短時間で目標を合わせた上で合意形成まで持ってくスキルは継続的に高めていく必要.
本書は事例が少なく会議経験をある程度積んでいないと,スッと頭には入って来ないと思う.ファシリテーションの書籍は初めて読んだが,入門書としてはもっと別の本があるだろう.
自分が出席する会議のパターンは,各部門の知識を結集して合意形成する部門間会議や定期的な部門・関係者の連絡会がほとんどで,ブレスト型の会議はめったに無い.創造性を高めるという点ではもっと活用すべきと感じる.そういった場では合意形成型の会議とは異なる運営方法が求められるであろうし,本書の内容を頭の片隅に置いておきたい.