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紙の本
アメリカ文学の初学者にオススメのテキストです。
2023/05/31 17:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Order 6601 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカ文学史のテキストとして使用しました。非常に分かりやすく、分かりやすかったです。アメリカ文学を専攻する人やそうでない人でも手元にあるとよい一冊です。
紙の本
著者コメント
2003/01/14 00:09
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:巽 孝之 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これまでに書かれたアメリカ文学史は、決して少なくない。1980年代以降には英米でもピーター・ハーイによる最も簡便な『アメリカ文学の輪郭』やエモリー・エリオットの編纂になる『コロンビア版アメリカ合衆国文学史』といった決定版が相次いでいる(ともに邦訳あり)。しかし、じつをいうとかつて四半世紀以上も前、大学時代から大学院時代にかけてのわたしがいちばん愛読したのは福田陸太郎他編『アメリカ文学思潮史』(中教出版、1975年/増補再版・沖積舎、1999年)である。日本人学者集団が日本語で書いていながら、必ずしも日本人読者向けにレベルを合せたわけではなく、むしろ英語圏におけるアメリカ文学研究の最先端にふれている実感を与えてくれたものであった。
だが、そのようにまだ「文学」が大きな力を持ち得た1970年代に比べ、わたしたちがいま暮らしているのはインターネットが普及し全地球的な「文化」抜きには物語ひとつ考えられない1990年以降の時代である。先達に敬意を払う点では人後に落ちるものではないが、新しい世紀にはそれにふさわしい構想になる新しいアメリカ文学史が必要だろう。そのためには、少なくとも新歴史主義やポストコロニアリズムといった最新の批評理論をふまえつつも、文学史そのものがひとつの物語として楽しめなくてはならない。
そこでわたしは、10世紀におけるウ゛ァイキングのアメリカ到達から20世紀のポスト冷戦時代に至る一千年のアメリカ文学史という独自のヴィジョンを据えた。映画化作品のスチル写真や「アメリカ作家地図」をふんだんに盛り込むなど、ヴィジュアル面でも工夫を凝らした。巻末には詳細な文学史・文化史年表とともに、アメリカ文学史上の正典をアン・ブラッドストリートの詩集からトマス・ピンチョンの最新長篇まで20点ほど選び、詳細な解説を付した。そして何よりも、随所にアメリカ文学豆知識というべきコラムをはさみこみ、水路による北米大陸横断や禁酒運動の真相、そして果てはナノテクノロジーを駆使した文学作品の可能性に至る話題までを閲覧できるように心がけた。前作の『アメリカ文学史のキーワード』(講談社現代新書、2000年)がコンピレーション・アルバムだとしたら、今回の『アメリカ文学史——駆動する物語の時空間』はそれに徹底した加筆改稿を施したばかりでなくまったくの新構想を与えたディレクターズ・カットといってよい。とりわけスタインベックの『怒りのぶどう』やボウルズの『シェルタリング・スカイ』のロック化作品への言及まで含むところは、おそらく世界でも先例のないアメリカ文学史になったのではないか、と自負する次第である。
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