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青森県岩木山周辺でアベック暴行殺人事件が起こった。
襲われた女性は「おに・・・」と言う言葉を繰り返すだけで正気を失っており、やがて原因不明の突然死。
「鬼の血」を受け継ぎ、200年に1度生まれてくる鬼を崇める「鬼族」と言う名のカルト集団。そして、生物界には有り得ない性染色体YYを持つ、「鬼」と呼ばれる「鋼丸」と言う名の巨体な男の存在。
主人公の壕太が、幼少の頃に別れて以来17年振りの父と再開し、その父から自分の出生の秘密を聞かされ、否応なく「鬼族」の事件に巻き込まれてゆく。
そして次第に明かになってゆく衝撃的な事実。
とにかく面白くて、一気に読んでしまった。
昔から青森県一体で伝説になっている「鬼」を題材にしてある、ってだけでもなかなか興味深かったし、そもそもの鬼伝説の由来が日本国の成り立ちとか、古代史に遡って説明されていて、大いに知的好奇心を揺さぶられた。
話の展開も、適度なスピード感で自然に先へ先へと進んで行き、後半一気に加速して盛り上がっていく感じ。
自然とか、生物の循環とか、神の世界と物質の世界とか、深い部分もあって単なる娯楽伝奇小説ではない深遠さを感じられた。
終わり方には、ちょっと物足りない部分があったけれどね。
事件終了後の、主人公達のことがとっても気になる。
彼らはどこへ行ったのか。彼女は妊娠してないんだろうか?
あと、希望としては、主人公の母の過去をもう少し詳しく書きこんで欲しかった。
最初の妊娠の時の詳しい経緯と、当事者の感情。
「鋼丸」が生まれて来る時の詳しい様子と、その後の成長過程。
なんにしても、面白く楽しめる本である事は間違いない。