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紙の本
十題噺
2005/04/13 10:33
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たむ - この投稿者のレビュー一覧を見る
期待したほどのケレンのある物語でもなければ、教養小説といえるほどには成長物語でもない。丁寧に丁寧に十八世紀という時代を描いているので、任意のページを開けばどこにでも十八世紀そのものを見つけることができるけれど、コクだけではなくスパイスもほしかったというのが一読した正直な感想。
先入観が強すぎたのかもしれません。
なぜ十八世紀なのか。形見函という興味深い素材のあった時代だからでしょう。
ではなぜ形見函なのか。一人の発明家の人生を描くだけならば——袖に引用された書評が本書を『薔薇の名前』と比較していますが——それこそ『薔薇の名前』のように、手記が発見されたという形を取ってもよいのです。
形見函を通して発明家の人生を描き出すということは何を意味するのでしょうか。十個の仕切りの中にある九つの骨董。形見函の持ち主以外には何の意味も持たぬような骨董ですが、それにまつわるエピソードを求めて、語り手は過去を遡ります。
けれど蒐集した話が正しいものなのかどうかはわからない。伝聞や記録自体が誤って伝えられているかもしれないし、集まった不完全な手がかりやエピソードを語り手が誤って組み立ててしまったかもしれない。
この作品を読む前には、これは十個の手がかりをもとに一人の人生を再構築するような話だと思っていました。言ってみればクイズみたいなものですね。「読む」「書く」「黄色」「犬」……答えは「bk1」、といったような。ところがクイズの答えにそれほど意外性がなかった、と。
でも実はそうではなく、本書はむしろ落語の三題噺に近いのではないでしょうか。再構築するのではなく、新たに構築する。九つの骨董と一つの空仕切りというてんでばらばらな十個のお題をもとに、アレン亭カーズワイルが作り上げた物語とは——。
そう考えて読んでみると、展開はなかなかスリリングです。例えば第一章の広口壜——壜が人生の転機となった理由はすぐにわかりますが、話の流れから言ってそのままでは壜が形見函に収められるのは不可能です。はて、これは実際の壜そのものではなく、代わりの壜に過ぎないのか——? そんな疑問もとうに忘れ果てたころに、答えが悪戯っ子のように向こうから顔を覗かせます。護符の話はさわりでお終いなのかな、と思いきや、むむ、そう来たか、という三題噺「鰍沢」の展開を連想するのはあまりにも偏りに満ちた見方でしょうか。
あるいは——邦題どおりにすべてが発明に関する“形見”なのかと思いきや、意外なエピソードの思い出だったりするところに、作者の「してやったり」な顔が目に浮かびます。
三題噺ならぬ十題噺だと思うだけで、それまでは丁寧で丹念だけれど何かが足りない印象だった物語が、飄々とした語り口の夜語りに聞こえるから不思議です。
ケレン味もなく奇想天外でもないけれど、名人による手練れの技をお楽しみ下さい。
紙の本
編集コメント
2003/01/14 14:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:東京創元社編集部 - この投稿者のレビュー一覧を見る
骨董の“函”が語る自動人形発明家=フランス版平賀源内の数奇な運命!
1983年、パリの骨董品オークションで手に入れた、がらくたの詰まった函。それは産業革命以前のフランスで、自動人形の開発に心血をそそいだ天才発明家の「形見函」だった。10の仕切りのなかには、それぞれ、広口壜、鸚鵡貝、編笠茸、木偶人形、金言、胸赤鶸、時計、鈴、釦、そして最後のひとつは空のまま。フランス革命前夜、の
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とまれ、「形見函」とはいったいどんなものでしょう? 美しく、妖しげなカバーとオブジェにぜひご注目ください。さらに驚きの仕掛けのある本書の続編も、翻訳準備中!
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