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紙の本
地球の環境を守る、ということ
2004/06/05 20:34
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:後藤和智 - この投稿者のレビュー一覧を見る
はじめに言う。地球の環境を守ることは大事であり、それ自体は否定の余地がない事実である。例えば、地球の自然浄化能力が低下している、と考えるならば、なぜそれが生じたのか、そしてそれをどう食い止めるか、ということを長いスパンで問うことが必要である。だから、環境学が、一過性のブームを生み出すものではならないと思う。確かに、本書で指摘されている通り、環境学それ自体の歴史は、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』(新潮文庫)やローマクラブの『成長の限界』などによって、環境の悪化が指摘されてから始まったものなので、長期的な蓄積があるとはいえない。それでも、地球環境というテーマに挑むためには、何年も先を見据えて考え、問い直すことが必要である。
翻って現実はどうだろう。本書のテーマである「ダイオキシン」は、最近ではあまり聞かなくなった。しかし一昔前には、これが日本を滅ぼすとまで悪魔視されたことがある。あるジャーナリストは当時の風潮を「ダイオキシン症候群」と名付けたけれど(日垣隆『それは違う!』文春文庫)、それが何を残したのか。
本書の議論は、ダイオキシンはそんなに悪いものなのか、ということから始まる。たとえば、ダイオキシンの毒性はサリンの2倍、といわれる。なるほど、確かに致死量で換算すればそうかもしれない。しかし、致死量に相当するダイオキシンを食料経由で摂取するには数百年もかかるのである。ダイオキシンは自然には存在しない、人工の化学物質だ、という話もあるけれど、なんてことはない、有機物と塩素が低温(およそ数百度)で燃えれば発生するのである(現に米国におけるダイオキシン発生量の約4分の1は山火事である)。
それではなぜ「ダイオキシン症候群」は発生したのだろう。「ダイオキシンが日本を滅ぼす」という言説が(恣意的に操作された)データによってまことしやかに語られ、市民の間に高まっていた環境意識を間違った方向にあおったのではないか。しかし、冷静に事実を検証してみれば、ダイオキシンはそれほど危険なものではない、むしろニコチンやアルコールや自動車のほうがよほど危険なのだ。
ダイオキシンという「未知なるもの」に対する恐怖感を煽ることによって、このような騒動になってしまったのではないか、と思う。「未知なるもの」をスケープゴートに仕立て上げることは、ダイオキシンのみならず、ほかのものにもいえるのかも知れぬ。川上和久『情報操作のトリック』(講談社現代新書)あたりとの併読を勧める。
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