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紙の本
心揺れるみちのくの鬼
2003/12/06 10:18
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投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公鬼悠市は奥州・松ヶ岡藩で最も格の低い浮組足軽。
藩主の菩提寺裏の竹林に住み、竹細工の鳥籠を作って暮らす。
姓が鬼なのに、繊細な細工物を作っているとは、名前負けじゃあないか。
そう思った方、お待ちあれ。刀をふるえば、形相は一変、鬼となる。
鳥籠献上のための登城を口実に、
人の名を聞き、その者の護衛または暗殺を実行する。
それが、彼の裏の任務。
命令の証拠は一切残らない。
彼や養子の柿太郎が危険な目にあったり、最悪死んでも、
藩は一切関知しない。彼は、まるで江戸のフェルプス君。
TV番組の「スパイ大作戦」では、チームを組むが、彼は一人で行動する。
いざという時のしがらみをなくすため、妻帯せず、養子をもらうの
だから、ストイックぶりも徹底している。
ところが関わりを避ける鬼悠市のまわりに、なぜか人々が集
まってくる。そして鬼も、名目だけの上司・足軽組頭や、前藩主の側室だった
尼僧、柿太郎らと接している時は、少し生の感情をのぞかせる。
根っからの殺人機械かと思われた彼の意外な一面を見て、ふと顔がゆるむ。
詳細を知らされず、老人を預かる事になった鬼は、
「場合によっては彼の命を奪うこともある」と耳打ちされる。
しかし、なかなか上からの指令が来ないままに、謎の男達が老人を襲う。
上司に絶対服従の鬼にとっては、上下関係よりも大切なもの
を選び取った老人は、対極にいる存在。何か訳ありのようだが、
深く関わっては判断を誤る。だから情は絶つ。
鬼がもし、上司との関係しかない生き方をしていたら、そう判断し、
極力交わりを持たないよう努めただろう。
だが鬼は、老人の人柄や過去が次第に明らかになるうち、
単なる警護の対象以上の目で、彼を見るようになる。
様々な立場や価値観の人達を知るようになった事も影響して、
鬼は、人間に近づきつつあるのだ。
しかし、彼が独自の正義感を持つようになったら、決定的に上司とぶつかる
事もあるのではないか。その時彼は、一体どうするのだろう。
杞憂であってくれればよいと思いながら、その不安はぬぐえない。
連作短編集「孤剣竹林抄」続編。
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