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紙の本
サイエンス・フィクションとサイエンス・ノンフィクションの垣根
2010/01/26 20:17
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る
発刊当時話題になっていた、古生物学者フォーティによる地球生命の歴史を概観する一冊。
「ワンダフル・ライフ」のようにある時期に的を絞ったものも楽しいけれど、やはりそれらの事実を総体的な歴史のなかで把握できるように、生命の歴史を総覧する本が何か読みたいなと思って、これを読んでみた。
生命誕生の時点から有史直前までを500ページでまとめ上げていて、手際よく巧みな著者の語りのうまさもあって、非常に面白く読める。地球生命の歴史を縦糸としながら、折々に自分の体験や研究の歴史、新説にまつわる論争史などを織り込んでいるのが良い。
特に、恐竜絶滅の原因として隕石衝突説の提示が与えたインパクトについての記述は非常に面白い。仮説の提唱から定説として受け入れられていくまでにいくつものドラマがある。
深海生物学者長沼毅氏は、生命の起源として海底の熱水噴出孔が考えられるということを書いていたが、この本でもその説が生命の起源として有力な仮説のようだ。
時代を遙かに遡って地球生命の黎明期を研究していくことには、どこかSF的なところがある。光合成を行うシアノバクテリアが長年かかって生み出す、層状のストロマトライトは、浸食などがなければどんどん成長していく。ある地層から発見された数十億年前のストロマトライトは、高さ数十メートルから数百メートルに及ぶタワー状のものが数キロに渡って林立していたという。波や浸食がなければ、地質学的な膨大な時間を掛けて想像を絶するものが出来る。異星を探索するまでもなく、地球にも想像を絶する光景は生まれていたというのが非常に面白い。
進化の歴史においても、大陸の移動が生み出す孤島や、隕石の衝突がもたらした災厄のような偶発的要素が、もしかしたら人間を生み出さなかったかも知れない、という考えはきわめてSF的なイマジネーションをかき立ててくれる。
サイエンス・フィクションとサイエンス・ノンフィクションの垣根は、案外と低いのかもしれない。
紙の本
本の厚さが苦にならない、良質の科学エッセー
2003/07/19 11:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆうどう - この投稿者のレビュー一覧を見る
「原始スープ」から生命が誕生し、ヒトに至るまでの、壮大な生命の伝記である。著者は、大英自然史博物館主席研究員で、元英国古生物学会会長。全編を貫く独自の新説の展開などはないが、30億年前の先カンブリア時代のストロマトライトに始まり(もちろん、それ以前の生命の誕生のメカニズムから解き明かしてくれるのだが)、人類の誕生までの地球の歴史を、主要な学説を紹介しながら概観させてくれる。
しかし、著者によれば、「私が語るのは不完全な物語である」。「なぜなら(本書は)歴史の中間部分だけで、その前後が欠落しているから」である。地球以前の宇宙の初期の歴史は「天文学者や理論物理学者の領域」であり、人類誕生後、有史時代になると「考古学者や歴史学者にバトンを渡すことになる」からだ。
日本語版480頁にもおよぶ大作を称して「不完全な物語」とするところに、かえって、本書に対する著者の意気込みが感じられる。十分に濃い内容で、読みごたえのある一冊だ。
しかし、「生物学の教科書」あるいは「学術書」として肩肘張って読む必要はない。生命の歴史に関する長文のエッセーとして、気軽に(!)読み始めればよい。きっと、著者の該博な知識は、心地よく知的好奇心を刺激してくれるだろう。古生物学という学問の成果および研究者にまつわるエピソードは、文学的な修飾を施され、黴臭くはあるが人間的な古生物学という世界への逍遥を堪能させてくれる。
タイトルが示すとおり、著者の意図するところは、年代順に生物の進化の歴史をたどることである。しかし、書かれた内容を通史として頭の中に入れることにこだわらず、良質な科学エッセーとして楽しんでもらいたい。古生物学について知識を得るというより、著者の語り口を楽しむことに快感がある。
紙の本
ミカヅキモ、ミジンコ程度の知識しかない私ですが…
2003/04/30 00:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カズコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
サルが進化して人間になったというのはなんとなく知っていますが、その前が何だったのかは知りません。地球がどのようにできあがって、生命がどのように誕生したのかなんて、まったく存じ上げません…こんな私ですが、この本を読み終えることができました。しかも、楽しく。
このタイトルから、歴史年表に書きこみを加えたような難解な内容を想像したのですが、実際は立派な「読み物」。この地球上の生命を主人公にした壮大な歴史物であり、さらには、彼らの残した化石からその秘密を解き明かしてきた歴代の古生物学者たちの逸話がユーモアたっぷりに挿入され、決して読む者を飽きさせることはありません。
はじめは見知らぬ古代の微生物の名前や、聞いたこともない時代の呼び名に戸惑うこともありましたが、読み進めていくうちに覚えてしまったり、気にならなくなって、いつのまにか夢中になっていました。もし最初の1,2ページで拒否反応が出ても、我慢してしばらく読みつづけてみてください!
また、学校で習う生物とは視点がまったく違うので、生物なんて興味がない、嫌いだという人にもぜひ読んでほしいです。同じものを扱ってここまで違うか!と思うほど、この本で描かれる生命の姿は生き生きとして、過去のさまざまな時代の地球で確かに息づいていた彼らの様子をリアルに感じ取ることができます。化石や地層だけを手がかりにして、そこまで調べあげてしまう古生物学者には脱帽です。
気が遠くなるような昔から私たちに続いている「生命の40億年」。その遥かな道のりをゆっくりと、しかし着実に歩んできた生命と、彼らの歴史を明らかにするためなら努力を惜しまない古生物学者たち。いずれかの「人生」に興味を持った方は、ぜひ一読を!
紙の本
生命の歴史的事実
2003/04/28 00:37
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:宇羅道彦 - この投稿者のレビュー一覧を見る
様々なことを考えさせてくれる興味深い本である。
四十億年にわたる総ての地球生命の歴史的現在は、ただ一つの生命に発する
ことが知られている。今生きてあるあらゆる命は四十億年を生きてきたので
ある。そしてまた、あらゆる地球の命は一つの命を生きているわけでもある。
食物連鎖の頂点に位置する人類は、他の命を食らうことで命をつないでいる。
太陽の恵みを葉緑素(クロロフィル)によって光合成でエネルギーに転換で
きる植物以外の生き物は、すべて他の命を頂くことで自らの命をつないでい
る。それは、地球の命の総体の結果的意志あるとみなされよう。
個体を生きる命はその命に至る果てしない世代の、自らの命を未来につなご
うとする意志の累積として現在を生きつつ、自らをもまた未来への命の橋で
あらしめようする存在である。
ただ、自己対象化能力という意識を獲得した人間だけは生物学的遺伝子のみ
ならず、観念に属する文化の遺伝子をも心として未来につなごうとする。
総体としての人間に貢献することを、心を持った個体生物としての人間が選
択した結果である。
命が生きることを意志する存在である限り、単に生きること自体がすでに意
志の実現として基本的喜びを構成する。
人の死は生物学的あるいは文化的遺伝子の後継世代における命の実現におい
ては一つの人の自然として、またそうでない場合にも、好むと好まざるに関
わらず、事実として受容せざるを得ないものとしてある。
以上は鳥瞰的な視点からの、生命の歴史的事実への認識である。
つまり、以上の文脈に矛盾する思想や哲学や宗教は、すべて事実に背理する空
想的虚妄であると見るべきだろう。
もちろん、この認識自体も一つの観念に過ぎないのは当然であるが。