紙の本
高潔の人、カドフェル
2003/06/06 16:38
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:saga - この投稿者のレビュー一覧を見る
元十字軍兵士の修道士が殺人事件の犯人を探るミステリー、『修道士カドフェル・シリーズ』の第2作。
十二世紀のイギリス、女帝モードとスティーブン王との戦いで捕虜となり処刑された94名の兵士。カドフェルは兵士の遺体を弔う仕事を引き受ける。しかし、死体の数は95。余分な死体はどれ? それは誰? そして、それを紛れ込ませたのはいったい誰なのか。
犯人探しだけでなく、修道院の生活、カドフェルが丹精込めて育てる薬草、ときおり思い出す十字軍時代の出来事などが興味を引く物語だが、今回はそれにふたつの恋物語がからみ、しかも話の展開がスリル満点。さらに、まったくそれらしくなかった人が真犯人という展開は第1作『聖女の遺骨求む』と同じなのに、今回もすっかり騙された。
カドフェルのセリフには、心に残るものが多い。
「どんなときにも永遠をこの目で見ることができ、今あらわになっている不正が、小さなものにすぎぬとこの目に映るようになるには、半生を要するのだ」
(悪行は時代のせいだという貴族の娘に対して)
「どんな時代にも、人は善か悪かのどちらか以外のことはできない」
このシリーズ、最終巻まで追ってみようと思う。
紙の本
カドフェルシリーズをとりあえず1冊読んでみようと思ったら
2006/02/26 20:34
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栗太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
12世紀はじめのイングランド、スティーブン王と女帝モードが王位をめぐって争っていた時代。スティーブンに占拠されたシュルーズベリでは94名の捕虜が処刑された。だが埋葬のため城に向かった修道士一行が見つけた遺体は95。紛れ込んだ死体の真相解明に、カドフェルが乗り出す。シュルーズベリの城から消えた娘、持ち出された城の宝をめえぐっての駆け引きなど、謎は深まる。
修道士カドフェルシリーズ第2作。カドフェルはシュルーズベリ大修道院の修道士だが、院内の派閥や権力闘争には興味なく、決められたお勤めの他は、趣味と実益を生かした菜園作りに励んでいる。薬草園には彼の王国である作業小屋もあり、規律や、うるさい上司もなんのその、修道院生活を満喫している元気な老人だ。人生経験が豊富(修道院に入る前40年は世間を渡り歩いていた)で、好奇心旺盛で、頭の回転が速く、薬草類について知識があり、何より人間に興味がある、まさに探偵にピッタリの人物である。
カドフェルが解き明かす謎は、どれもきっかけは日常的なものだ。(第1巻「聖女の遺骨求む」は、聖女の遺骨探索から始まったが、あれも修道院的には日常なのかもしれない)修道士という立場上、探偵業の依頼がくるでもなく、身の回りの人が事件に巻き込まれ、彼らを救うために奔走するパターンが多い。特に道に迷う若い男女に手を貸して、納まるべきところへ納めていく手腕が見事だ。
どれを読んでも外れはなく、どこから読んでも、途中の巻を飛ばしても(大きな)問題はないカドフェルシリーズだが、あえて「死体が多すぎる」に書評を書いたのは、なんと言っても、ヒュー・べリンガー初登場の巻だからだ。以後のシリーズにも続けて登場し、カドフェルの良き友となる男も、初登場の時は敵か味方かわからない存在だった。俊敏で大胆で、現実を見極める力があり、計算高く、一癖も二癖もある青年、でも恋には純情。親子ほどにも年が離れたカドフェルとヒューが、互いを探りあい、利用しあい、罠にはめようとし……同時に互いを認めあっていく様は読み応えがある。中年から老年と言った年頃のカドフェルは既に完成されてしまったキャラクターだが、初登場時22,3歳のヒューは、これから、どんどん変わっていく。カドフェルシリーズ入門者にもお勧めの一冊だ。
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自分が中世好きであることを確認できる作品。イングランド国内の内乱、シュルーズベリー城の闘いで捕虜となって殺された人間は94人。でも、そこにある遺体は何故か95体!いけませんよ、戦のどさくさに紛れて日頃を恨みを晴らしては。見ている人は必ず見ている。それが人間か、神かに関わらず。
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前回は修道院から出張しての話でしたが、今回は修道院のある町での話。
12世紀イギリスの時代背景を映して描かれています。
「もうこれだけ○○なんだから、1つくらいちゃんとしてなくってもいいじゃない」という諦めみたいなのが、まったくない妥協のない姿が好き。さわやか〜な恋愛風景も、なんだかほほえましい。
ミステリーという意識は私にはあまりないけれど、楽しい。やっぱり好きだなあ、カドフェルシリーズ。
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第2作では、王権争いにシュールズベリの街も巻き込まれ、城はスティーブン王によって陥落、女帝モードの支持者たちはひそかに逃げ出し、捉えられた94名の捕虜が処刑されます。その遺体の埋葬を頼まれたカドフェルが数えると、なぜか遺体は95体有る!
一方、彼の薬草園に助手見習いの少年がやって来、修道院には王に忠節を誓うために来た、若く美しい貴族の娘が宿泊。そして又一人婚約者を探す若き騎士。誰が誰の味方か敵か思惑渦巻く中、恋が生まれ・・
どちらも、大きな歴史の流れの中、若い恋人たちに危機が訪れるのですが、それを何とか成就させてやろうと、カドフェルは心優しく暖かく見守り、援助の手を差し伸べます。
読んだあと、心温かな気持ちになる作品でした。
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虜の死体が一体多いという小さいけれど魅力充分な謎を中心に陥落した城の娘と宝石を相手側にどうやって渡すかという冒険小説のような面白さで引っ張る。カドフェルとベリンガーの知恵の戦いも見物。メインの解決は本当にちょっとした、しかし決定的な手掛かりがさりげなく書き込まれている。まさかこう締めくくるとは…。
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米澤穂信の100冊その97:これも比類無き「解決篇」。山内進の「決闘裁判」と併せて読むと、おもしろさ累乗。「正しさ」の原風景を垣間見る思いがする。とのこと。
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中世イングランドを舞台として、修道士が探偵役になって事件を解決するという、『薔薇の名前』のような設定のシリーズ。1作目が(図書館の一般書架で)見当たらなかったので2作目を借りてみたのだが。面白い〜〜!! 一気に読み終えてしまった。こういう発見って、とても嬉しい。いやほんと、まだまだ世の中には面白い本がいっぱいあるんだなぁ。このシリーズ、番外編含めて21冊あるようで、当分楽しめそうだ。(2009-05-15L)
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時代背景がストレートに話に絡んできます。知らなかった英国史が勉強できてお得かも。で、2巻目にしてあの重要キャラクターが登場。すごくかっこいいです。いろんな意味で。
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内戦で処刑された遺体の数が合わない、という事実から殺人事件の謎に挑む修道士カドフェル。大勢の捕虜たちが亡くなった中で、たった一人別の理由により殺された者がいる…。
今回、ヒュー・ベリンガーが初登場。敏捷で鋭敏で複雑なのはいつまでも変わらないですが、この頃は実に若々しいです。カドフェルとヒューが互いの思考を探って駆け引きを繰り広げるのがコン・ゲーム的。
さて、久々にカドフェル・シリーズを再読し、登場する歴史上の人物を振り返ってため息。誰かも言ってましたが、この時代「マティルダが多すぎる」。あとロバートって名前もやたら多いな。あと、あと、ヘンリーも!作中では読みを変えて(マティルダとモードとか)分かりやすく区別する形になっていましたが、他に名前ないんか!と八つ当たりしたくなりました。
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修道士カドフェルシリーズ二作目。中世イギリスの雰囲気も楽しめるし、かつ、ご都合主義的大団円。ご都合主義万歳!ご都合主義大好き!カドフェルの人柄に魅力的なゲスト登場人物たちにご都合主義的ミステリで、暖かい気持ちで読めて良かったな。
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修道士カドフェルの第二弾。
二作目も面白かった。
アガサ・クリスティーで有名な「死体を隠すなら死体の山の中に」を地で行く話。
縛り首にされた捕虜の死体の数が一つ多く、しかも他殺体だった。
殺人事件を解くとともに、若い娘を安全な地へと逃がそうとするカドフェルの前に好敵手が現れる。
鋭い観察力と推理力で、カドフェルから若い娘と宝を奪おうとする若い騎士。
とはいえ、とても好ましい青年で、
最後には正義と愛する女性の名誉を守るために、
殺人犯に決闘を申し込む。
相変わらず恋愛問題も解決して、ハッピーエンドで良かった。
一つ難癖をつければ、タイトルがちょっと。
多すぎる死体、ではだめだったのか。
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前作よりも好きだった!イングランドが、モード側とスティーブン側が対立する時代。カドフェルのもとに逃げてきた少年のふりをした少女のゴディスと、モード側の陣営で財宝を移動中に仲間を何者かに殺害されたトロルド。そしてゴディスの元婚約者で後半でがらりと印象を変えるベリンガー。元婚約者を売ろうとする抜け目のない嫌な奴と思っていたが、実はめちゃくちゃ良い青年だった。カドフェルとベリンガーが、殺人犯を告発するシーンや、決闘のシーンはわくわくした。
カドフェルシリーズはまだ2冊目だが、芯の強い女性が出てくる印象。そしてカドフェルが何においても守ろうとする若々しい男女の愛が、物語を通して描かれている。