紙の本
ダイビングの疑似体験
2009/06/28 16:55
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mimi. - この投稿者のレビュー一覧を見る
完全なるジャケ買い。
あまりにもきれいな写真に引かれて手に取った「沈むさかな」はこのミステリーが凄い!の優秀賞受賞作品だった。
父親を突然失った17歳の高校生カズは、かつての友、英介に父親の死には裏があるのではないかと打ち明けられる。思いもよらない告白に驚くが、真相を追求しようと決めたカズ。英介の紹介でスクーバダイビングを始め、隣にある怪しげなクラブで働き始めるが...
帯にあった青春小説の文字の通り、高校生のサスペンス物語。
でも、ページをめくると、そこに私が描いていた青春きらきらストーリーは無かった。
とにかく、二人称で綴られる物語には苦しめられた。
もうやめよう!と何度も思っては、「きみ」と語りかける文章には絶対に理由があるはず、それを解き明かしてやる!というか解き明かしてくれるまでは止めれぬ!と、この不毛な葛藤に疲れ果てた頃、空気が一変する。
スクーバダイビングの描写が素晴らしすぎるのだ。作者がCMデレクターだと聞いて納得!
ダイビングの事なんて知りもしない私を、深い海に潜らせてくれた。初心者であるカズが、深い海に恐怖を抱くように、私も手に汗を握り、肩に食い込むボンベの重さを、一緒になって体感した、気になった。
あまりの恐怖に息が詰まる。海中の澄んだ青さ、地上では感じる事の無い水圧と浮遊感。そして、一歩間違えば死ぬかもしれない恐怖。1ミリも泳げない私には到底無理なダイビングを、想像の中でだけでも体験させてくれたこの作品には感謝したい。これだけでも読んだ価値はあった。
そして、後半に畳み掛けるように起こるミステリー事件の謎。これはこれで面白かったが、ちょっと唐突過ぎたようにも思う。まあ、私の最大の関心ごとが「きみ」だったのだから、それにさえおとしまえを付けてくれれば、とりあえず良い。
前半と後半で全く違うストーリーを読んだ気になった。わけて考えると、そのどちらも満足だ。しかし、一つの物語としては、、、ちょっと疑問が残ったけれど...
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ミステリーというよりは 青春小説を読んでいる気分で読み通したような気がする。17歳の主人公の存在証明の物語と言えなくもない。
だが、ごく身のまわりの狭い範囲のこと と見せておいて 物語は米軍をも巻き込んだとんでもなく大掛かりな事件へと発展するのである。
しかし 物語の最後はちゃんと 主人公カズの存在証明にもなっているのだ。
物語の主人公は 17歳の矢野和泉=現在はカズ なのだが カズが一人称で物語を語ることはなく、常にどこかからカズのことを見ている誰かが カズを「きみ」として語るのである。この誰かは 物語の登場人物ではない。おそらくもっと大きな何かなのだろう。
米軍と日本企業がつるんで企てたのであろう事件は真相を究明されることなく終わっているのだが それでも世間の目には真相は明らかに見えることだろう。企業も人も 自らを偽る姿ばかりが哀しく印象に残った。
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これけっこう面白かった。性同一性障害(かな?)を扱った内容だったと思う。
ダイビングとか堕胎とか殺人とかなかなか凄いテーマが詰め込まれていて読み応えはあるかな。
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ダイビングの説明がちょっとわかりづらかったけど、後半は意外におもしろかったな。主人公の矢野カズの本名が和泉ってのもそういうことかと。「このミス」シリーズだけどこれは良しということで。
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急死した父親がある企業スキャンダルの当事者であったことから、
地元から離れた場所でアルバイトをしていた17歳の高校生・カズのところへ、
幼なじみの英介が訪ねてくる。
彼はカズの父親の死には裏があり、
その謎を解く鍵が海岸沿いに建つクラブにあることを教えてくれる。
カズはクラブで働き、真相を探ることを決意する。
だが、糸口さえ見えないままに事件は起き、英介が命を落してしまう。
スクーバ・ダイビングの描写も素晴らしい海辺を舞台にしたサスペンス。
『このミステリーがすごい!』大賞第2弾!優秀賞受賞作品。
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四日間の奇蹟のときのこのミスの受賞作でずっと気になっていた一冊。
最後のほうはいまいちだった。あと、叙述トリックはいらない。
男の子だろうと女の子だろうと、別に…というか。
本題はそこじゃないような…
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爽やかな感じを想像してたら、予想外に暗いし重いしで驚いた。
こういうのあんまり好きじゃない。
全体の雰囲気の所為か、三人称で語られるからか、少し読みづらかった。
三人称なのは、気付かせないようにって事なんだろうけど…。
最後まで、父親の死因やプロローグの意味がわからなかったのは、私の読解力不足なんだろうな。
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このミス大賞の候補作になった作品だが、展開にちょっと無理があったかな。途中まではすごくテンポよく進み、特に著者が多分ダイビングをやっているのだろうがダイビングに関係した部分の描写はすばらしく引き込まれた。ところが事件の最後の詰めの部分があまりに弱すぎて、えーこれが終わりか?といった読後感を持った。おしいなあ。
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入口は狭かったのに
途中とてつもなく巨大になって
どうなるの・・・と思ったら
最後は入口くらい小さくなってて
ふ~~ん
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また、スクーバがしたくなった、が一番の感想。
プールで初めてレギュレーターをくわえた時のゴム臭さ、水面が遥か上方で波を見あげるといった非日常の光景、海の中でのもまれ海の怖さを知った感覚が蘇えった。
スクーバでの描写は経験あるものならば『わかる、わかる』といった感じで入り込める。
しかし、冒頭から物語の語り手が第三者で最後までその視点の主は現れない。もしかしたら“◯”なのかな、と思ったが定ではない。
主人公が感じていることの描写は細かで、思春期独特の青く硬い果実の様な心情は懐かしく感じた。
ミステリーとしては、伏線回収が充分でなく、壮大な陰謀や犯罪行為は主人公と、その協力者の推理でしかなく、結局悪は裁かれないし、くじかれない。
私自身、医療職であり、かつダイビングもダイブマスター前まで行った経験があるため、ダイビングの熟練者がこんなことするか?とか、医療行為も“?”が10個くらいでてしまうこともあった。
また物語の最初からミスリードも多くあり
『あれはひっかけだったのね…』と思わされそこはちょっと幻滅した。
辛口になってしまったが、ミステリーとてでなく青春小説・海洋小説としてとても楽しめた。