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ヴァールブルク著作集 7 蛇儀礼 みんなのレビュー
- アビ・ヴァールブルク (著), 加藤 哲弘 (訳)
- 税込価格:3,960円(36pt)
- 出版社:ありな書房
- 発行年月:2003.3
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紙の本
アメリカ先住民文化と西欧文化における「蛇」像の比較研究
2003/05/20 12:02
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投稿者:小林浩 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今から百年以上前のこと、1895年年末から約半年間をかけ、著者はアメリカ南西部の先住民族「プエブロ・インディアン」の自然信仰と精神文化を取材した。その旅程から得た情報資料をもとに、1923年スイスで多数のスライドを駆使しながら行った講演「北アメリカ、プエブロ・インディアン居住地域からのイメージ」が、本書の内容である。ウォーバーグ研究所所蔵の草稿から翻訳されている。コロラドの岩棚住居、ニューメキシコの先住民絵画や土器や壁画、アリゾナをはじめとする各地の舞踊を見聞し、時代の流れのなかで失われゆくそれらの習俗と伝統のうちに、著者が「文化史記述の全体にとってきわめて重要な意味をもつ」と推察した、「キリスト教以前の原始的な人間世界の本質をなす特徴」について問い掛けるための契機を見いだしている。蛇儀礼とは、先住民が雨と雷の象徴として崇拝する毒蛇を用いて行う、呪術的な舞踊を伴う一連の祭式のことだ。毒蛇は荒野に降雨をもたらす豊穣の象徴であり、「人間が精霊的な自然の働きのもとで外面的にも内面的にも克服しなければならないものの象徴」である。ヴァールブルクは、これらの表象を、西欧における古代神話世界から初期キリスト教世界にまで見ることのできる蛇の表象と比較対照する。蛇は原罪をもたらした諸悪の根源であるだけではない。それは不死身の異教的シンボルとして、治癒の神としても、聖書に「再び忍び込んで」いるのである。ヴァールブルクは、これらの原始的信仰が洗練され、あるいは棚上げにされ、代用品で置き換えることによって「現代文化」が成り立っていることを示す。雷という自然の猛威は、電気をコントロールする現代文化によってもはや畏怖の対象ではなくなる。そうした「進化」がもたらした世界観の「破壊」が、人間の思考に与える影響について彼は示唆する。貴重な当時の写真や図版が満載された好著である。
連載書評コラム「小林浩の人文レジ前」2003年5月20日分より。
(小林浩/人文書コーディネーター・「本」のメルマガ編集同人)
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