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紙の本
スペインの魅力満載のエッセイ
2004/12/28 16:17
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投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
アルハンブラに住んで十有余年という著者による、アンダルシアの土地と人々の息吹を伝える好エッセイです。
長年暮らしたマドリードに別れを告げ、後の伴侶となるパコと暮らすためアルハンブラへと著者が向かう場面から本書は始まります。どことなくマザコン気味のパコとその両親、人生のパートナーを求めて文通交際を続ける友人のハビエル、彼と交際を始めるピラール、そしてハビエルがやがて結婚することになるエステル。個性豊かな面々が繰り広げるアンダルシア狂詩曲は溢れんばかりに降り注ぐ太陽のもと、実に変テコで賑やかです。
私もマドリードの友人のもとに滞在していたとき、隣近所の人たちがワイワイとやってきて、夕食を共にしながら熱い議論を繰り広げる場面に出くわしたことがたびたびあります。気持ちが高ぶってくるにつれ、彼らの議論は私のスペイン語力をはるかに超える速さになって、まるで喧嘩をしているようにしか見えません。話されている内容に追いつけなくなった私がハラハラしながらただ呆然と見つめていると、やがて議論はおさまって、何事もなかったように笑いながらまた楽しい食事の時間が続くのです。「私たちスペイン人は議論をするのが好きなの」と友人は悪びれるでもなく笑って私に言うのですが、まさにそうしたスペイン人の議論好きな気質がこのエッセイの随所に見られます。懐かしさがこみ上げてくる思いをしながら頁を繰りました。
他にも(恋人ではなく)友人から「たくさんのキスを(あなたに)」と挨拶されて面食らった経験などが綴られています。著者のスペイン体験は私のスペイン体験と重なる部分が多く、実に楽しい読書をすることができました。
陽気で、気さくで、人との付き合いを最も大切にするスペインの魅力がたくさん詰まった一冊です。
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