投稿元:
レビューを見る
読むたびに印象に残るシーンも台詞も移っていく「ベルサイユのばら」。趣味から生き方まで影響を受けた女性たちがそれぞれのテーマで語る。 一様に書かれているのは、少女のころは華やかな絵や恋物語にときめいたけれども、大人になって読み返してみると細かいストーリーや展開に発見がいろいろあるということ。インターネットで見ていても、そういう方は多いみたいです。私もその例にもれませんが。 今回は(私は好きなのに)あまり注目されないキャラのアランを語っている文があって、とても嬉しかったです。ふふ… それと男の涙の場面、がよかった。 産声から死ぬまで泣きっぱなしのオスカルさまもよいけど、泣く男ナンバー1のアンドレ。助命されては泣き押し倒しては泣き、想いが叶ったといっては泣くってところ、爆笑。 フェルゼン伯の涙は客観的で醒めているという分析も納得。彼は貴族だから、自分がどうすれば美しいシーンになるか計算でなくわかっているのね。 アランの場合は、他人のために流す涙。妹を死に追いやった悔しさのため。盲目で危地に赴く仲間のため。そして自分の腕の中から逝く人のために…。アンドレを引きとめるときの涙、私もこんな場面で流してみたい。 それから衛兵隊でアランの次に出番の多いフランソワ。本編では脇役だけど彼自身が主役の物語が当然あるわけで。優しげで泣き虫なところが好きなキャラなんだけども、どっかでサイドストーリーを読んでからますます気にいりました。平民だからと虐げられる矛盾への怒りをあらわす涙ですね。少女マンガという、その稀有な媒体によって描かれたことが、この物語が魅惑的である理由かもしれません。文章は古典になるけど、レンブラントはいつ観ても素敵だと思うので。