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紙の本

世界は宮沢章夫的である

2004/06/20 15:45

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 なにしろタイトルがいいですね。カバー裏の「脱力感みなぎる71篇」という評言も秀抜です。力が抜けて脱臼し、関節がはずれる感じがうまく表現されています。脱臼とか関節はずしというと、かのジャック・デリダの脱構築が思い浮かびます。筒井康隆の「関節話法」(『宇宙衞生博覽會』)は、文字どおり関節を鳴らして異星人とのコミュニケーションを図るという趣向でしたが、宮沢章夫の関節話法は、世界の根源にある力がぎくしゃくと軋み、狂気すれすれの世界が現出するその様を、ほとんど狂気そのものの精神でもって描写し尽くします。(脱構築とはつながらなかったけれど、このつながらなさ、ズレた感じもまた宮沢章夫的である、と言えば言えます。)実際、宮沢章夫のエッセイは、読みすぎると狂いますよ。それだけの力があります。「読書する犬」に収められた書評や解説は、一見まっとうなことを書いているように見えるふしがありますが、騙されてはいけません。やはりそこはハマると抜け出せなくなる狂気の世界です。要注意。

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