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紙の本
「グローバリティの句切れ(カエスラ)」
2004/07/23 00:04
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BCKT - この投稿者のレビュー一覧を見る
まだ若い著者32歳による「原稿用紙」「350枚」の作品。
もとネタは,著者の修士論文(98年,27歳———ってことは,
修士課程で2年間の留学をしたってことか)。
ウォーラーステインが指導教官である以上,彼の影響は
甚大だけれども(そもそも「世界システム」って用語自体が
ウォーラーステイン自身の用語だし),カール・ポランニーが
けっこうインパクトがあったみたい。ポランニーのコロンビア大学
在職時代に,学生(?)ウォーラーステイン自身が会っている。
ってことは,山下とウォーラーステインは,
ポランニー=発想の源泉を共有してもいるわけだ。
誠実な巻末参考文献は著者の広範な関心を物語っている。
日本史はもちろんのこと,中国やヴェトナムなどの歴史にも造詣が
深い。若い歴史家らしく,近年の出版物では珍しくはない目次まで
付けられており,同一・近隣分野の研究者にとっては,
参照しやすいつくりになっている。
「世界システム論で読む日本」という題名からも,
日本をあぶりだすという側面とともに,「世界システム論」研究では
沈黙されがちだった日本を積極的に研究することで,既存概念たる
「世界システム論」を脱構築しようとする覇気が感じられる。
キーワードは「グローバリティの句切れ(caesura,カエスラ)」
(ただし原語の発音は[siзu'(э)rэ])。1500年から1800年までの
世界に起きたある「不在」「真空」こそが,その後の現代世界までの
歴史を作り上げた契機となるものだという立場。非西洋世界では
日本だけが,なぜ西洋世界の一部に並んで近代化を推進できたのか?
という疑問を,従来的な「日本例外論」以外の論拠で説明しよう
というのが本書の狙いなのだが,「理念としての帝国」という
概念と並んで,僕には腑に落ちなかった。そもそも「近代化」
というときの「近代」とは何を指しているのか,経済学部卒の
僕にはよくわからなかったです。「資源」という用語に無形の
条件もふくませているのなら(223頁),なぜに川北稔
『工業化の歴史的前提———帝国とジェントルマン』やケイン&
ホプキンス『ジェントルマン資本主義』などにも言及(批判?)が
あって然るべきなどと素人の僕などは思うのだけれど(とくに後者は,
ブローデルやウォーラーステインほどではないにせよ,
専門書のわりには売れたからね),これに限らず,
西欧諸国をモデルとした歴史理論には驚くほど言及が少ない
(というか,ない)。もちろん取捨選択の結果なのだろうけれども,
これも「近代」概念が僕には不明確なので,その理由が不明だ。
終章で,「911」(世界貿易センタービルへの自爆攻撃)やら
アメリカ政府のイラク攻撃にまで言葉を費やしているのは,
(「歴史に内在してこそ現在が見通せるのだから,現在の
出来事については沈黙を決め込む」ことが暗黙の決まりに
なっている?)歴史学界への不満だろうと思う。
僕のような低偏差値バカ野郎にも,もっとわかりやすい
独自の歴史把握を,新書かなんかでやって下さい。
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