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半自伝。
「 頭だけで生きようとするからこの凝視の地獄は避けられないのです。手と足を忘れています。分析はあるけれど総合がない。下降はいいけれど上昇が無い。影を見ているけれど本体を忘れている。孔子のいうようにバクチでもいい。台所仕事でもいい。手と足を思い出すことです。それを使うことです。落ちこんで落ちこんで自身が分解して何かの破片と化すか、泥になったか、そんなふうに感じられた時には、部屋の中で寝てばかりいないで、立ちなさい。立つ事です。部屋から出る事です。
一九八七年一月某夜 開高 健
」
開高さんはオ―パ等の釣りや旅行記も良いが、こうした自分語りの作品も面白い。 ベトナム戦記あたりも今後読みたい
最終章 アラスカの森で朽ち果てて倒れている木に対して老人ガイドが「これは森を守り育てているので”ナースログ(看護婦の木)”と呼ばれているんだ。トラッシュじゃないんだ」という。結局倒れた木が栄養分となり、森のあらゆる生命を育てているそうだ。これは人間にも言える事であり、一見無駄に見える事でも心にとっては無駄な事などなく、栄養となるのだ。だから、無駄を恐れるな。むしろ、無駄をこそ持て。
ありがたきお言葉です