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自由を考える 9・11以降の現代思想 みんなのレビュー

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15 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

現代思想おたく向けのSF蘊蓄話

2003/06/23 10:15

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:mistypink - この投稿者のレビュー一覧を見る

この対談に関しては、既に多くの賞賛が寄せられている。
確かにおもしろいし、刺激を受ける。だが、読後漠然とした不満が残るのも
事実だ。見当はずれな言いがかりを承知の上で、その現実に対する感度に
ついて批判を試みたい。

端的に言えば、「世俗的で対症療法的な『現場主義』」に対して「ボトム
アップ式に理論をたたき直す」試みがあまり成功していないのではないだろ
うか。

たとえば『審判』の「掟の門」や『収容所列島』との関連で語られるスターリニズムの不条理性、確率や数値化の言及を読めば、現代のビジネス人は苦笑するしかないだろう。中国等の工場に対抗してリストラを進める国内生産基地や消費不況の中でノルマを達成しなければならないセールスにとって、不条理は現実以外のなにものでもないのだから。日々の作業は時間効率性を追求され、能力査定で個人の商品属性は計数化される。転職の自由はある。しかしそれを現実化するには資産、社会福祉、労働力商品としての自己の優位性が担保となる。確定記述の束として属性管理されながらも匿名で交換可能であるが故にそこで生きるしか選択肢がないのだ。東が情報管理社会のモデルとして参照する自動改札機ではパンチ音を鳴らす駅員もまたデリートされていた。

東は消費社会論の重要性を指摘し、すぐに市場と言い換えているが、80年代ポストモダニズムの消費社会論はあたかも下半身のない身体のように、生産や流通を捨象して成立していた。オタク産業化の延長線上にリナックス革命に言及するが、オタク的映像の進化がスポーツ用品のCMを商品から自由なスポーツそのものの表現に達したとしても、製品がインドネシアや中国の出稼ぎ労働者によって製造されていることに変わりはない。情報資本主義の矛盾を見逃しているというのではない。認識される現実、参照先が一面的なのだ。多様性や自由の認可とそれと気づかれぬ管理の二面性は市場の全体性を考慮すれば当然のことでしかない。

東はまた、フクシマを引用して、プライベートな優生学を止める方策がないという指摘を鋭いと言う。現に出生前診断に悩む家族にとってそれは「おもしろい話」どころではない。現実がとっくに問題意識を追い越している。
あとがきで大澤はコロンバイン高校事件とコソボ侵攻の同時並行性を挙げ、内在する敵と戦争の関係を指摘する。それを言うならば、ジュリアーニのニューヨークがゼロ=トレランスの実験場だった、つまり棍棒で浄化された安全都市に飛行機が激突したことに触れなければならないだろう。

「冷戦崩壊期のスノッブなシニカルな消費社会」の後に出現したのは、世界的競争の血なまぐさい世界だったように思われる。無論ヴァーチャルな次元で血の匂いや暴力性は巧妙にフィルタリングされてはいた。そこでは生権力の影である死権力が優生学とセキュリティを携えて主導権を握る。もはや自由というものも、気が付けば畜産処理場という猶予期間を<平穏無事に生き延びる自由>に切り下げられてしまった。

この対談で欠如しているのは「第三者の審級」でも「大きな物語」でもなく、現実認識なのだ。このままではポストモダニズムの語彙でポストモダニズムの限界を語る近過去SF談義でしかない。


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紙の本

面白いけど、こういう言葉遣いでよいのかなあ?

2003/04/30 21:18

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投稿者:GG - この投稿者のレビュー一覧を見る

ポストモダニズムとは何か。著者の一人東浩紀は次のように要約している。それは「マルクス主義を継承し、記号論や精神分析の概念をもとに組み上げられた難解な理論」である。大いにもてはやされたポストモダニズムの言説も今ではすっかり影をひそめ、2003年の現在、言論界では現場主義が幅をきかせている。そうした流れに掉さし、実感主義に対して理論を再導入するために本書の対談は行なわれたと、彼は述べている。都合三回に及んだ共同討議は果たして所期の目的を達しているだろうか。

頭脳明晰な二人のことだから何をどう問題にしたらよいのかはハッキリ捉えられている。理論が現場に有効打を浴びせるための最も良い方法は、適切なキーワードを発明することである。そのフレームで現実を思いがけない視点から分析してみせる、これである。その昔マルクス主義は<疎外>を用いて世界をクリアカットに分析してみせ、文化状況全体へ強い影響を与えた。現代日本を分析するキーワードの候補として、大澤は<第三者の審級>、東は<動物の時代>といった概念を用意し、議論は<本質的偶有性>や<匿名の自由>へと深められていく。議論の過程で、デリダ、アーレント、アガンベンなどの諸説が要領よくまとめられ、引用されている。

そうした議論は(ポストモダニズムの通過者には)それ自体十分面白いし、新しいことを知る楽しみも与えてくれる。しかし、最初に掲げられた高い目標からするともの足りない。早い話、大学生の読者が本書を読んで社会理論の勉強に燃えるだろうか。その昔、浅田彰の『構造と力』に年若い読者がわけもわからずにアジられて、パラノだスキゾだと友人との会話でもつい使ってしまったようにはいかないだろう。実感主義に抗するだけの強さを、理論の言葉はもう持てずにいる印象だ。

その原因も著者たちはもちろん認識している。現代思想のタームというのは、たとえ表面上は批判を行なっていても、本質的には冷戦崩壊期のスノッブなシニカルな消費社会を人間社会の最終形態として捉えているからである。つまり9・11以降の現在へ至って、批判の言葉の方が現実よりも後ろに来ているのである。サイバースペースを論じる過程で、大澤真幸は「批判よりも権力の現実の方が先へ行っちゃってる」と述べている。そして、僕らが模索すべきは権力よりもさらに先へ行く道だとも。

その意気やよしだが、実際のところ、本対談は最良のポストモダニズム(80年代風言説)でしかない。

本書は今後刊行される二人の論文、大澤真幸『<自由>の条件』と東浩紀『情報自由論』のあらかじめの脚注というトリッキーな性格も持っている。上に批判めいたことを書いたが、本書は80年代に自己形成したおじさんの読み物としては十分面白かった。ベタな現実への目配りがより優れている点において、東の新刊の刊行を楽しみに待ちたい。

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