紙の本
革命戦場で見いだす女たちのユートピア
2004/06/06 15:30
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投稿者:シャクティ - この投稿者のレビュー一覧を見る
30代後半にさしかかった三人の女性たちが、本書の主人公だ。三人とも、本当はかなりの潜在力はあるし、給料だってそこそこもらっている。だが、出世したり、世間から認められることもない。いい男とも結婚できないし、欲求不満状態に陥っている。
そんな彼女らの楽しみは年二回の海外旅行だ。しかし、今回はいつもと違った。旅行先の東南アジアの架空のビーチリゾートが、過激な革命運動に巻き込まれてしまうのだ。その混乱と戦乱の場を彼女らがサバイバルしていく過程で、日本では見いだせなかった一種のユートピアを見いだすのである! 東南アジア島嶼部の内部に、自給自足可能な豊かな村人たちの生活があったのである。
篠田節子の示すユートピアは、男性中心のイデオロギー過剰を、断固として批判したものである。イスラム原理主義か反イスラムか、民族解放か帝国主義かといったイデオロギー闘争は、実は男たちの政治権力闘争にすぎないから、女たちがコミットするには価しない。むしろ、地に根ざした、村人たちの共同体こそが信頼に足るというわけだ。
なお、小説上の三人の日本女性たちは、帰国後、日本社会からバッシングを受けることになるのだが、まさに最近のヴォランティア・バッシングを想起させる。ボランティア的生き方を許容しない日本社会を、篠田はすでに先取りする形で問題提示していたとはいえまいか。
ちょっと残念だったのは、篠田が丁寧に描いた東南アジア島嶼部は、現実にはあり得ない設定だということである。たとえば、閉鎖的共同体でありながら、英語が通じる開放的社会というのはちょっと矛盾している。あるいはマレー社会に、食糧を自給できる豊かな村なんて、あるだろうか。どうせ架空のユートピア社会を描くのならば、もう少しその説明を簡略化したほうが、読者には親切ではなかっただろうか。そのため、減点1とする。
紙の本
これこそ、女たちのジハード!?
2003/06/04 10:13
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投稿者:PNU - この投稿者のレビュー一覧を見る
三十代独身女仲良し組三人が、政情不安なアジアの某国へブランド買いあさりツアーに出かけた。日本でぬるま湯のような平和に浸かりきった三人は、外国イコールブランド品ディスカウントショップくらいにしか思っていなかったため、ガイドを激怒させてしまう。バヤン・アイランド・リゾートでやりたい放題していた彼女たちは、突如勃発した内戦に巻き込まれていく! 外務省のノンキャリアである真央子、ぽっちゃりグラマーのありさ、大病院のお嬢で医者の祝子ら三人の運命やいかに!?
出だしの女達のバカっぷりが目にあまるが、その後のジェットコースター的展開には引き込まれてしまう。サバイバルを通じ、女達が〈人生における何か大切なもの〉をつかみとってゆく過程が興味深い。いちばん使える女だった彼女に最もシンパシーを覚えた。彼女、冷静沈着で凄いよなあ。ん? と思ったのは祝子が『あの』大学出ということ…あの大学の医学部って、お嬢だろうがなんだろうが、女っつーだけで男以上の苦労をしこたまするから、あんなにきれいごと好きのロマンチストになるなんて…ありえない。物語的にはおもろい設定だけど。
この著者の「弥勒」は、もっと常識的でよい子チャンな男が主人公で、実に甘ちゃんすぎて嘘臭くって、読むのが厭になったものだ。本作はそれぞれ個性的なしぶとい女三人なので、物語世界に奥行きが出たような気がする。「弥勒」よりも架空の国の描写に、磨きがかかってる感じで読むのが楽しい。
自国に誇りを持てない国民の暮らす国、日本、その日本人の迷いが見事に描かれている。本来、自分探しやら生きる意味がなんたらとか言うのは、ゼイタクなヒマ人の悩みなのだな。命があるから生きているのだし、自分は自分。豊饒の国であふれかえる物質と情報の洪水の中、自己を見失い溺れかけている日本人は、このくらいのショック療法でもないと現実に立ち戻れないのかもしれない。
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南の楽園に遊びにきた30代半ばの女3人。いずれもストレスを抱えておりいけ好かない印象。ところが政変に巻き込まれ死と直面してしまう。ここから3人の個性が際立ち自ずと応援してしまう。分厚い大作だがスルスル読めた。
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まず最初に、とても分厚くてビックリ。30代をゆうに越えたいわゆる負け犬路線のバブルを経験した3人組OLの傍若無人な出だしはまず「ナニこいつら」と反感を買ったが、その後グイグイ引きこまれる。篠田節子が民族紛争にスポットを当てた作品。少々エグイ場面もあり。
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30代の独身女3人組が南の国に遊びに行ったら内戦に巻き込まれてしまいましたとさ。ヘビーなんだかライトなんだか。
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30代後半の女性3人のサバイバル物語。
かつて植民地だった国の抱える問題、民族紛争、ゲリラ、イスラム・・・何か遠くの国の話がとても身近に迫ってくる作品です。
とは言えフィクション。
よくここまで緻密に書き上げたなと感心しきり。
最初から最後まで引き込まれまくって、510ページという分厚い本ですが、一気に読んでしまいました。
篠田節子さんの描く強い女性が好きです。
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小説。日本のブランド大好きOL3人組が、アジアの某リゾート地でクーデターに巻き込まれ、生き延びることに命をかけるサバイバル。外国は怖い、と思った。この3人は言葉に不自由しなかったからまだ意思疎通が図れたけれど、旧日本軍が植民地にしてきた歴史や民族紛争、日々入れ替わる権力者など、目まぐるしく変わる事態についていくのに必死。いつ捕虜として売られてもおかしくない緊張感。日本でがむしゃらに働いてるんだから、休暇をストレス発散のためブランドを買い漁って何が悪い、という精神が、だんだん変っていくのが面白い。日本は平和ボケした国という警鐘ともいえる良作。
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これだけむかつくヒロインってのも珍しいわ……と思いながら読み始めた本作。本当、最初はヒロイン三人組にむかつくむかつく。「日本人の恥だ~!」という感じの、デフォルメされた典型的「馬鹿女」そのものとして描かれてるんだもの。いや、こういうの絶対にいるって。なので序盤は、彼女たちがどんな危機的状況に置かれようが、ぜんぜんハラハラできない(笑)。物語自体には惹きつけられるものの、感情移入しようという気になれないのが痛いな。
ところが。物語が進むにつれ、彼女たちがどんどん「かっこよく」なってしまうのが不思議。だんだん感情移入できるようになるので、中盤からの展開はとにかくスリリングに一気読み。そして読後感はかなり爽快。これも「成長物語」なんだよなあ。人間いくつになっても「成長する」ってことを忘れちゃいけないという教訓のよう。それとも平和ボケした日本人への皮肉かも。
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南国のリゾートで旅を楽しむ
30代半ばの独身女3人
優雅な海外旅行になるはずは
内紛に巻き込まれることに
殺し合いは
憎しみ連鎖を生み
殺しあっている限り
良いも悪いもない
目指すものも全くない
ただの同じ分子が
憎悪と恐怖の螺旋となるだけ
3人は
日本で生きることとは全く違う状況で
それぞれの価値観と
逞しさと強さを持って
異国の地で生き抜く
暮らすことではなく
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30代の女性ツーリスト3人グループが南の島でテロに巻き込まれサバイバルを強いられる物語。
イスラムの文化にそれぞれ個性的になじんでいく女性の逞しさが印象的でした。おそらく男性ならば・・・生き残ってなさそう。
最初はいけすかない3人組だったがw人間ピンチになるとなかなか魅力的に描かれてる。
女性の特に海外旅行好きの方は一読の価値あり。
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真央子,祝子,ありさの3人がゲリラ戦真っ最中の南の島に取り残され,したたかに生き延びる物語だが,日本で遊びまわっていたにしては,なかなか芯のある行動が面白い.ありさには現地の男との間に子供ができ,医師の資格を持つ祝子は立派に活躍する.楽しいサバイバル物語だ.
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細かくは読み切れなかったけれど、女のしたたかさや弱さを描いてある冒険ものとして読んだ。
長いけど一気に読めた。
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三十代後半の女三人組が、デモや暴動が起きている最中の南の島へ旅行へ行って政変に巻き込まれる話。
熱帯雨林、サバイバル、異文化、テロにゲリラ、男と女と今作品もてんこ盛り。
平和な日本に馴染まない人にオススメ。
他作品の『弥勒』と展開がちょっと似ているけれど、悲壮感の中に女ならではのしぶとさがあるのが大きな違いだった。女っていうのはこういうもんなんだっていう強さがある。
嫌らしさや馬鹿さ加減も含めて良かったな。
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南の島で内戦に巻き込まれた3人。
内戦の悲惨さと生き方について深く切り込むかと思えば、浅く流していく。
サンデー毎日に連載したものだけに、どたばた劇という感じもする。
取材先はしっかりしているようだ。
宗教的な課題と政治的課題と民俗的課題が、不可分だということがいいたかったのかもしれない。
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弥勒を読んだ後だと、それに似ていると思ってしまった。
場違いな時期にリゾートに行き、紛争に巻き込まれ、その後の人生を送る3人の女性を軸に書いた話。
最初に出てくるツアーコンダクターは、あっという間に消滅するが、何が人生を変えるかわからない。
それぞれの生き方があっていいものだなあと思う。
自分で道を切り開く真知子、流されるようにして、その地になじむまりこ、医者としての道を素直に進む祝子。
なかなか女性としておもしろかった