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紙の本
不思議な水色の玉にこめられているのは
2004/05/09 10:47
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投稿者:ひろえ - この投稿者のレビュー一覧を見る
町のはずれのたそがれ屋敷に、お母さんとお手伝いさん2人と一緒に暮らすスゥとルゥルゥの姉妹。宝物は、遠く航海に出ているお父さんが昔おみやげにくれた「宝石」—卵型で水色で「金と銀の粉が舞い踊り、海の夕陽と、妖精のため息と、高原の風とか、ぜんぶ詰まっているような、いえ、それ以上に美しいかもしれない、水色の玉」である。
3人目のお手伝いさんとしてきたルチアさんは、なぜかその水色の玉と同じように光っていて(それは姉妹にしか見えない)、幸せと満足感を体じゅうから醸し出している。その秘密を知るために、二人はある夕方、屋敷を抜け出してルチアさんの後をつけていく……。
今ここにいることと、憧れとを同時に自分の内側で満たすこと。逃避と言われそうなそれを描けることは、ファンタジーのひとつの大きな要素である。水色の玉にシンボル化されて語られることで憧れの気持ちじたいが主役に立ってくる。その意味で、ルチアさんも含めて人物にあまり共感することはなく、あえていえば、ルチアさんの血のつながらない娘で水色の玉の秘密に触れたのちに哲学することを覚えた、はじめはごくありきたりの少女だったボビーが心に残る。
高楼方子ということで、「憧れ」というモチーフそのものも含めて、バックグラウンドとなる部分で『赤毛のアン』的な世界も感じさせる。
紙の本
日本の児童向けファンタジー作家のなかで今「書ける」作家のひとり高楼方子さんの中篇。少女たちが魅せられた不思議な光の秘密の話。
2003/09/08 20:42
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投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
高楼方子さんといえば『ココの詩』『時計坂の家』『十一月の扉』といった長篇ファンタジーからシリーズのような幼年童話、そして絵本のテキストまで幅広い年齢層向けのお話を手がけるオールラウンダーだ。
複数のエピソードをまとめ大きなうねりを作り上げていく長篇、ワンアイディアで展開していく幼年童話、絵に託す部分を残す絵本のテキストは、それぞれに発想や技術が異なるから、単に文字量を減らしていけば成り立つというものではない。このすべてにおいて、それ相応の評価が出されるものを書くということは大変なのだ。全部読破しているわけではないが、高楼作品はそのいずれにおいても一定以上の水準で出てきてハズレがないと思う。
話を広げついで、日本の児童向け(あくまで児童も読むことが可能だという意味)ファンタジー作家で今、新作が出て私がチェックしておきたい作家というと、この高楼さんに富安陽子、たつみや章、それからどうしようか…梨木香歩の各氏といったところ。ひと昔、ふた昔前であったなら、いぬいとみこ、神沢利子、別役実、安房直子、山中恒といった名前が浮かんでくる。
翻訳ファンタジーの出版が盛んだが、並べてみると国内に読みごたえある作品はたくさんある。文体や素材との相性が自分にはどうも…という理由で挙げない作家もいるが、まだ試していない作家も多くいる。ハリポタを入口に本の世界へ訪れた人たちが楽しめるファンタジーの層は日本でもなかなかのものではないだろうか。
ということで、久しぶりに高楼さんが手がけた長めのものを読んでみた。
エロール・ル・カインの細密画を彷彿させる表紙装画が素敵。この人物たちのアンダーな雰囲気、最近よく見かけるなあと思ったら、ルイス・サッカー『穴』の装画を手がけた画家の手になるものだった。本文中の挿画も楽しめるし、目次や各章の文字まで手書きで、しゃれた包装紙にくるまれたお話という感じの本だ。
「たそがれ屋敷」とかスゥとルゥルゥという屋敷の娘たちの名前とか、ユニークな名づけのセンスは高楼作品の特徴のひとつである。
もうひとつの特徴「時間の流れ」に対するこだわりも見受けられる。少女時代のなぞをその時制では解かないようにし、時が流れたのちにほとんどは解いてみせる。ただし、なぞの残りはその先、読者の想像に任せるという展開になっている。
それに加えて、少女時代の前にあった過去の出来事をお父さまの船の旅のみやげ話として配し、物語は過去からつづいているという設定に仕立てている。空間の広がり、時間の広がりを無限に推し進めていくのはファンタジーの使命のようなものであろうが、この短めのお話の中でもきちんとそれをこなしている点はさすがだ。
少女たちが大切にしているのは、父親が遠い異国から持ち帰った水色の宝石。それと同じ光を放つ女性が、ある日、お手伝いさんとしてやって来ることから物語は動き始める。しかし、その女性ルチアさんが体から発している光は、ルゥとスゥスゥのふたり以外にはどうやら見えない様子。自分たちの宝物の正体は何なのか、ルチアさんはどうして光って見えるのか、光自体は何を意味しているのか。シンプルな筋立ての中にも、想像力をいろいろかき立てられる答なきファンタジーである。
紙の本
ほのかに光る
2003/07/18 19:58
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投稿者:ミリーモリーマンデー - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある時、たそがれ屋敷にルチアさんというお手伝いさんがやってきました。8歳のスゥと7歳のルゥルゥ、この幼い姉妹はルチアさんを見てビックリ。お父さんが二人にくれた異国のお土産—水色で卵型の宝石とルチアさんがそっくりだったからです。どうそっくりなのかって? ルチアさんは二人の宝物と同じように卵みたいな体つきをしていました。おまけにほのかに水色に光って見えるのです。二人はふしぎなルチアさんのとりこになってしまいます。ルチアさんの事が知りたくて、家へ帰るルチアさんの跡をつけていくと、あたりはすっかり夕闇に…。そして二人はルチアさんのすごい秘密を知るのです。
表紙はもちろん見返しやちょっとした挿絵まで、ルチアさんのフシギ世界が、この本のすみずみに満ちていて、ふしぎなほのかに水色に光る世界に、どっぷり浸れます。