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紙の本
<準創造者>かく語りき
2004/09/01 00:29
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Leon - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題にもなっているエッセイの他に「神話を作る」(Mythopoeia)と「ビュルフトエルムの息子ビュルフトノス」(The Homecoming of Beorthnoth Beorthelm's Son)を併録。
「妖精物語について」はファンタジー擁護論とも言えるもので、「言葉」にまで突っ込んで起源を解くのは言語学者である著者独特の論法で面白い。
ファンタジーについて語られるとき、必ずといって良いほど引き合いに出される「不信の自発的停止」(サミュエル・コールリッジ)という考え方に疑問を投げかけているのだが、この部分には大きく頷いた。
読み手が物語世界に入り込むためには「不信の自発的停止」が必要としたコールリッジに対し、トールキンは同じ状態を「<準創造者>として成功したのだ」と言う。
プロの詩人であるコールリッジが読み手に努力を求めるいるのに対して、専門外のトールキンが創造の巧みさこそが重要であるとしているのは皮肉めいている。
また、<準創造者>として成功するための鍵として「形容詞」の重要性を指摘しているが、これを言語学者らしく自在に使いこなして成功した「指輪物語」の存在があればこそ説得力がある。
「神話を作る」は、トールキンがC.S.ルイスに宛てて送った書簡で、前後の文脈は判らないものの、ルイスが「神話と妖精物語は嘘だ」と言ったことに由来するとのこと。
創造主に似せて造られた人間が準創造を行うのは自然なことであるとするのはカソリックである著者らしい論法だが、神話を作るのが人間の能力だとすれば、「旧約聖書」との折り合いのつけ方が難しいのではないだろうか。
「ビュルフトエルムの息子ビュルフトノス」は10世紀にヴァイキングとイングランドの間で起こった「モールドンの戦い」を素材にした戯曲的な叙事詩。
「アングロ・サクソン年代記」を物語風味に最話したものとも言えるが、英雄であるビュルフトノスその人ではなく、家臣にスポットライトを当てているのが興味深い。
「指輪物語」を読んでも感じられるが、トールキンは勇敢さよりも忠義心に心を動かされるタイプであったようだ。
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