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紙の本
作中の音楽が、本の記憶に彩りを与えてくれる。そういうことってありますよね。
2010/06/24 11:26
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きゃべつちょうちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ストーリーは、
あんまり売れてないけどたのしく暮らすミュージシャンと、
行方不明中の家出娘の、ボーイ・ミーツ・ガールもの。
でも、そこはモーさまなので、
ただの青春ドラマに終わっていないのだ。
どう見ても男の子にしか見えない家出娘リュ―は、
じつはフランスの葡萄畑を持つお金持ちのお嬢さまだった。
なにひとつ不自由なく暮らしていたリューに
不意に襲いかかってきたのは、「不治の病」という不幸だった。
じぶんを愛する両親が胸を痛めているのを見て、
体ばかりか、心まで病気に蝕まれていくリュー。
彼女は、もっと光のあるところを求めて、長い髪を切り、ドレスを脱ぎ、
ボルドーからマイアミへ。
そしてマイアミで自由に音楽と共に暮らすグラン・パとめぐり会う。
小鳥が必死に羽をひろげるかのように、
残り少ない命を、歌詞につむぎ、ステージで歌うことになるリュー。
グラン・パは、まるで父親のように、リューの存在そのものを
まるごと受け止めていた・・・・・・。
リューがふとした拍子に口ずさんでいたのが
タイトルになっている「アメリカン・パイ」という曲。
マドンナがカバーしているバージョンは、素敵だった。
オリジナルはドン・マクリーン。
原曲はギターがメインの、素朴な感じなのだろうか。
ぜひ、そちらのほうも聴いてみたい。
「♪バイバイ、ミス・アメリカン・パイ・・・」
というサビの部分が、本当にかわいらしくて好きだ。
サビ部分の対訳を見ると、
「バイバイ、ミス・アメリカン・パイ、
シボレーを走らせ、土手までいったけど川は干上がっていた
昔の仲間がウィスキーとビールをのみながら
今日で人生終わりだ、今日で人生終わりだ、と歌っていた」
と、ある。
いっぽう、リューが、作中で歌っていたのは
「今日で人生終わりだ」ではなく「もうなにもかもおしまいさ」。
この部分、原文だと「This'll be the day that I die」
ネットでしらべてみると
「私が死ぬなんてありえない」という趣旨の訳がみつかった。
この訳もまた、いいなぁと思った。
いちばん感動的だったのが、ラスト近くの、グラン・パの歌。
とくに後半部分
「命の消えぬ限り 時の消えぬ限り
いや もし 何もかもが 失われて消えても
・・・果てぬ闇の底に 想いだけは残るのだ・・・
時の流れに 星ぼしのかがやきの下に
また 幾千のいのちの中をどこまでもどこまでも
かけてゆくのだ おまえの想いは・・・」
わたしは、去年の春に祖母をなくしたのだけど、
そのときに色々なことを考えた。
あれから、一年以上が過ぎて、
この「アメリカン・パイ」にめぐり逢えたことは
偶然ではない気がしている。
紙の本
アロイスがしたことはルカスの望みだろう?
2006/06/09 11:17
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ISH - この投稿者のレビュー一覧を見る
ここに収録されている「アロイス」。…怖いことに私ぁこの主人公ルカス君と同じ病気なのだが…。自分だったら何故こうなるだろうか、と考えてみた。
アロイスが不当にもルカスをそうしたように見えるが…実のところルカス君が望んだのでは。
誰もがそう誤解するだろう。「ルカスは優しい子だから母を思うあまり…」母親もそうだと思って「もう気遣わなくていいのよ」と言うが…それが決定的に彼を引き裂く言葉となってしまった。何故?
彼は本当に本当にアロイスのことを思っていた。ただそれだけだった。それなのに誰もその思いに気づいてくれなかった。
誰の目にも見えていなかったのはアロイスじゃない。ルカス。
死ぬほどかわいそうだったのはアロイスじゃない。ルカス。
ルカスがアロイスだと思っていたのはルカス自身。
アロイスを思う心を殺された。殺すことで。そういうことだろ。
一人遊びをしていた本当の理由を誰も気づいてくれなかった。いっそ放っておいてくれたら決定的な破滅はなかっただろうね。
無遠慮に触る人間がいるから一人になるしかなかったのだよ。
それを知っていたからこそ「あいつには関わりたくない」とアロイスは言っていたのだろう?
しかし…やっぱアロイスはルカスなんじゃないの?「母さんが僕を呼んでいる!」と…孤独を解放したのだから。
誰がルカスを救えた?
…誰にも触らせない。その汚い手で触るな!その愚鈍な頭で考えるな!そんなに救いたいならせめて黙ってどっか引っ込んでろあんたにできるこたぁその程度だよ!と言ってやりゃいいのさ。
自分自身で自分の心を語ってみせる。と。好戦的なアロイス君みたいにね。
…今まで気づかなかったがこの作家さんはこんな昔からバルバラ異界と同じことを語り続けていたんですね。
心理分析とか色々やっているがすべて見当違いで…生物の融合あやしいワールド…という。
自サイトより加筆修正
紙の本
号泣間違いなし
2017/02/01 13:14
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pope - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカン・パイは号泣間違いなし。
所謂難病ものとは違い、ヒロインは生きたいと叫ぶのではなく、両親に悲しい思い出を残したくないと思い家を出る。
死んでるのか生きてるのかさえもわからないままにしておいてという切ない願いがたまらない。
あとアロイスも怖かった。
何が本当なのかわからないままなのも怖い。
紙の本
謎のためなら命もいらぬ
2003/05/19 09:24
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:松井高志 - この投稿者のレビュー一覧を見る
20代になってから(それもかれこれ20年以上前の話)少女マンガを読み始めた自分には、萩尾望都さんはすでに巨匠であって敷居が高く、その点ではこの文庫本の解説で宝塚歌劇団の演出家・小柳さんが述べておられるのと同様、気軽に喋々できる身分ではないが、たまたま宝塚雪組で「アメリカン・パイ」が上演されるので、せっかくなので読んで書いてみる。
1970年代前半の9作品を収録。謎めいた、しかもはかなくあやうげな魅力を持つ少年・少女とのつかの間の出会いを描いたものが多い。コミカルなテイストの少女向け恋物語もあるが、むろんそれにはとどまっておらず、どこかに終始張りつめた劇的なものが埋伏しており、軽みと脱力感だらけの80年代以降には、こういうコミックは薬にしたくても見あたらないなぁ、と思う。
こうしたコミックを愛読してきた少女たち(=私とほぼ同世代のはず)のその後の実人生の物語が、とても気になる。
宝塚での男役の主人公と、「アメリカン・パイ」のグラン・パの絵柄とは合わない。が、そこは融通無碍な歌劇団のこと、貴城けいでやるからには長身の二枚目で押し通してしまうだろう。ま、いいか。
ちなみに「ポーの一族」を小池修一郎さんが「ノスフェラトゥ・蒼いくちづけ」という舞台にアレンジした前科がある。