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海を失った男 みんなのレビュー

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みんなのレビュー10件

みんなの評価4.5

評価内訳

  • 星 5 (3件)
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10 件中 1 件~ 10 件を表示

紙の本

「幸福の孤独さ」、そしてそれゆえの厳しさを真摯に突きつめて行く人物たちが怖いぐらい。原型に強烈な揺さぶりをかけられて、かなりヤバい。

2003/10/10 10:56

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る

「さしあたって家族に問題はなく、そこそこの家に住みそこそこの暮らしを営み、時間には追われ気味だが、好きな本も適当に読めているし…」と納得しながらも、うっかりすると別の生に強烈に引き摺られそうな自分がいる。
 たとえば、灼熱の砂漠や重苦しい密林を旅しながら、昂揚と挫折のままに野垂れ死にたいとか、山奥や無人島に古典・経典の類いを携えていき、正気と狂気のあわいをさ迷いながら朽ち果てて行きたい。あるいは、マザー・テレサのようにただひたすら尽くせないものか…と。そういった外れたことを思い描くのは、自分にとっての真の幸福はそういうものではないかと時に問いたくなるからである。

 幸福を確かめるとき、人は周りとのバランスでそれを量ろうとしがちだ。世界の人々のなかにあって、日本の社会のなかにあって、学校や会社の人たちの輪のなかにあって——視野の狭い広いはあるにせよ、ぼんやりと相対的尺度を使っている。
『夜と霧』の著者として知られる心理学者のフランクル博士は、「幸福は内面の充実にある」というようなことを主張し、自分にとって絶対的な幸福の追求を勧奨した。しかし、絶対的な価値には程度の問題がつきまとうと私は考える。内面の充実は、謙虚に自分を見つめているうちはいい。だが、宗教的情熱や芸術的狂気が行き過ぎると、人の輪にあっては多大な迷惑がかかる。そういう人は、砂漠や無人島にはやばやと逃れているべきだと思う。

 フランクル博士の思想は戦後ヨーロッパの虚無主義を払いのけるもので、50年代の重要な思潮を形成したようだが、同時代に海の向こうで書かれていたのが、このスタージョンの中短篇群である。
 SF作品としての位置づけは、このサイトに投稿されたSlowBird氏のレビューが要を得た内容でとても参考になった。「読み」に関しては、朝日新聞に寄稿された山形浩生氏の文章が助けになった。山形氏は、スタージョンが描いているのは「異常であるが故の幸せ、変態としての幸せ、殺人の平安」だと指摘する。ほかの変態や「異常な」存在を描いた小説の場合、その多くは異常行動の原因の記述に終始し、行為自体の快楽や幸福はゆがんだ「まちがった」ものとして描くが、スタージョンはちがう、というのだ。
 
 一読では理解が覚束ない作品が「ミュージック」「ビアンカの手」「海を失った男」と、3つあった。強烈な何かを自分の原型に刻印された気がするのだが、物語の意味がよく理解できない。それぞれ3回ぐらいずつ読んでみたところで、「ああ、これは」と思い知らされ、大げさに表現すれば「閾を越える」覚悟のようなものをすることにした。一時的に砂漠や無人島に逃れることにしたわけである。「異色」「難解」と特徴づけられるスタージョンの作家性というのは、そのようなところから来ているものなのだろうか。
 上記の3つは、読書体験として得難いふれあい方をした作品ということで、自分のなかに残っていきそうな小説であるが、「閾を越える」覚悟まではしなくとも、
強く感応させられたのは「成熟」という中篇である。超人を扱ったSFとして分類されることもあるが、人間そのものありように向かっていることを示す代表例だ、と編者の若島氏が述べているように、こんな哀切な恋愛小説はめったないと浸った。
 今しばらくは、そこそこの自分、そこそこの暮らしのなかで、こういう本に呼び寄せられることを幸福とし、日常のなかで「閾を越える」機会を伺うことにする。
 

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紙の本

スタージョンさん、あなたははやすぎです!

2004/03/25 20:34

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 収録作の中で一読してよく理解できなかったので再読を必要とした作品は「ミュージック」、「ビアンカの手」、「海を失った男」、一読しただけで面白さがすんなりと沁みてきたのが、「シジジイじゃない」、「三の法則」、「そして私のおそれはつのる」、「墓読み」。
 こうしてみると、スタージョンは、ある程度の長さがある作品のほうが「理解しやすい」とはいえますかねぇ。少なくとも、わたしという読者にとっては。
 というか、短いの三作については、展開の早さ、めぐるましさにこちらがきちんとついて行けなくて、ざっと読んだだけでは簡単に振り落とされちゃうというか。もちろん、必要な情報は文中に書いてあるし、よく読むと、「ああ。そういうことなのか」と合点のいく造りにはなっているのだけれど、逆にいうと、きちんと楽しむためにはある程度の精読を強いられる。要するに、密度が濃い。濃いわりに、文章自体は、邦訳で読んでも分かる程度には、リズミカルで読みやすい。読みやすいから、内容を理解する前に、前々へと読み進めてしまって、読了後に「ん? もう終わり?」と呆然というか「おいてけぼり感」を感じがち。
 いやぁ、もう、「ビアンカの手」とか「海を失った男」とか、けっこうかなり凄ぇことやってだなぁ、と、再読した今になって思うんだけど、「内容の濃さ」と「文章の早さ」のコンボをかき分けて理解しようという根性のある読者が、今時、さて、どれほどいるのか?
「シジジイじゃない」、「三の法則」、「そして私のおそれはつのる」の三作については、長さによって説明不足の難を免れたということもあるし、それ以外に、わりと(当時の)ジャンルSFのメソッドに沿った設定やらストーリーなんで、消化不良にならずに済んだ、という側面もあるかなあ、と。
 ここ数年、やっと再評価の機運が高まったスタージョンの作風と栄光と悲哀については本書編者の若島正氏が巻末でしっかり解説してくださっているので、そちらを参照してもらうことにして、わたしからは一言。
「スタージョンさん、
 あなたの作品は時代的には早すぎましたし、
 文章の速度はもっと速すぎます!
 われわれ読者は追いつくのが大変です!」

酩酊亭亭主

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紙の本

待ち望んでいても手がつかないものもある

2004/01/16 22:01

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:グリーンアイ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 正直言って、何度読んでも理解できないのが「ビアンカの手」だ。「一角獣多角獣」で読んだときもそうだったけれども、今回もそうだった。私にとってスタージョンの作品の半分はまったく理解できない。話は分かるけれども、一体何が面白いのかさっぱり分からないのだ。一方、他のアンソロジーや雑誌に収録されているものでいつまでも記憶に残る作品も多い。「隔壁」、「極小宇宙の神」。「あなたに必要なもの」「空は船でいっぱい」などは忘れがたい作品だ。しかし、それでも私はスタージョンの熱烈なファンだと思っている。名前を見たら衝動的に購入してしまうから。ファンというのが良いも悪いも含めて応援するものだとすれば明らかに矛盾しているが。

 この本の中で私が理解できた作品は「成熟」「シジシイじゃない」、「三の法則」、「そして私のおそれはつのる」だけといってもいいだろう。今回どうしても読みたいと思っていた作品は「成熟」だった。編者あとがきでも触れられていたが、スタージョンも「成熟」という言葉を真剣に考えていたようだ。何度も結婚生活に失敗していたせいもあるのだろうが、この作品を書くまで何度も自問を繰り返している。私にとっても成熟という概念は切実である。作品中のロビン・イングリシュが味わっている苦悩は読んでいて精神的に苦しかった。何度も途中で投げ出してしまった。何もかもが簡単に出来てしまったら、すべてが予想できるようになったら次は何があるのだろうか? この究極の問に答えていこうとするロビンは精神的に追い詰められていく。そして、終局。私はロビンの達した答えを何度も読み返した。何度も、理解しようとして、何度も。

 最後に「シジシイじゃない」を読み直した。手に入れられないものを人は求める。また、その思いを断ち切るのは結局自分に他ならないことを知る。そして、前回と同様に理想の女にあった男の悲惨な結末に同情した。

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紙の本

伝説は静かに降臨する

2003/10/04 23:33

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る

 日本では長いこと「人間以上」の作者として、また“奇妙な味”の作家として一部の好事家だけに愛されていたスタージョンだが、米国での再評価の動きと、編者の熱意で出版された由。
 スタージョンが、あるいはこの本がSFかというと微妙で、あえて区分けするなら、人間の幻想の視野に新しい科学のもたらしたイマジネーションが入り込むことを拒否しない、というタイプの作家になるだろう。それは例えば、現在の世界で最も人気のある作家と言っていいレイ・ブラッドベリに近い。この作品集で言えば、「3の法則」「海を失った男」「そして私のおそれつのる」などがその範疇だが、「ビアンカの手」「墓読み」あたりはもっと原初的な、ポーの系譜に連なる幻想ものと言えるだろう。
 スタージョンに特徴的なところは、いかなる登場人物に対しても、同じ目線で視て語るというところだ。いかなる人物にもとは、打ちひしがれた男、世間の波から外れてしまった男、狂い行く男。このアウトサイダー感はP.K.ディックの主人公に近いが、無力感さや倦怠は無く、それらの人々がそれぞれの道で生きていく意思の力強さが各作品から滲み出てくる。
 そして大事なのは、登場人物の目線、つまり主観的な見方であることを意識すれば、実際に起きていることが何であるかも読者は理解できる、という二重構造にある。
 例えば、白痴の少女の「手」を偏愛する男を描いた「ビアンカの手」は一種のフェチズムの物語と捉えられそうだが、男と交歓する“手”は何者の動機によって動いているのかに思いをめぐらせる時、読者はそこで主題に引き続いて二重に打ち抜かれることになる。
 日常の向こう側にある幻想の振りをしながらも、さりげなく我々の日常にも網をかぶせられて逃れられない。だから単なる“奇妙な味”に見せかけながら、何かどよーんとした重みが余韻として残ってしまう。
 個人的には「シジジイじゃない」で新しい恋人に舞い不がる男や、「墓読み」で妻の裏切りに気づいた夫の描写に、胸がきゅうぅと苦しくなる。
 「成熟」がスタージョン版アルジャーノンとすれば、「そして私の」は「幼年期の終わり」あるいは「童夢」か。1940〜50年代の作品にも関わらずこの普遍性は驚異。
 とにかく、静かに、静かに、読後の余韻を味わってもらえれば、伝説の作家の伝説たる由縁がわかってもらえると思う。

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紙の本

スタージョンの新しい顔を発見してほしい

2003/06/18 00:39

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:大森望 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 シオドア・スタージョンと言えば、日本ではまず第一に『人間以上』の著者として、 第二に「スタージョンの法則」(SFの90%はクズである──ただし、どんなものも 90%はクズである)の生みの親として知られているらしい(google調べ)。
 もちろん、「SF界でも一、二を争う短編の名手」としての名声はつとに高く、絶版久しい『一角獣・多角獣』はネットオークションに出れば5桁を下らない(最高落札額は5万円超。つい1、2週間前も4万いくらで落ちてました)。
 ただし、ポール・ウィリアムズの編集で刊行中の米国版スタージョン短編全集全10巻をまとめて買ってもお釣りが来るこの高騰ぶりが端的に示すとおり、斯界に名声を轟かせる短篇群が日本語で読めない状態が長く続いていた。
 が、待てば海路の日和あり。長かった飢えを満たして余りある最高水準のスタージョン短編集、若島正編『海を失った男』がついに登場した。
 スタージョンの最高傑作というにとどまらず、幻想小説短篇オールタイムベストにも数えられる幻の名品、「ビアンカの手」(『一角獣・多角獣』所収)を若島正の新訳で読めるだけでも、この一巻を買う値打ちは充分。
 それに加えて、過去の邦訳単行本には未収録だった二大名作、スタージョンの超絶技巧が炸裂する「海を失った男」と、ほかの作家には逆立ちしても書けない"夫婦愛" の物語「墓読み」を収め、短編作家としての凄さをまざまざと見せつける。
 そんなのはみんな読んじゃってるから、オレの知らないのを読ませろという重度スタージョン愛好者には、あまりに長すぎて一度も翻訳されたことがない本邦初訳の中編三本がおすすめ。スタージョン版「アルジャーノンに花束を」ともいうべき「成熟」の鮮やかな結末に息を呑み、異色のエイリアンもの「三の法則」の個性的な料理法に瞠目し、「…そして私のおそれはつのる…」でスタージョンの新しい顔を発見してほしい。

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2004/11/28 12:09

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2008/11/03 16:00

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2009/01/05 21:38

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2009/08/28 22:45

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2023/12/01 15:34

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