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パズルがぴったり組み合わさるように、極限状態で集団が結束したときの強さは計り知れないものがあります。全員生還の奇跡は著者シャクルトンのリーダーシップによるところが大きいと思うんです。これが実話だとは驚愕です。人間の不屈の精神に、言いようのないくらいの大きな感動を覚えました。
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物語とは直接関係ないけど、シャクルトンのプロフィール、「1908年極点へ120キロ余りに迫り、前人未到の新記録をたてたが、飢餓と猛雪で引き返す。その功績でナイトの名誉称号を受ける」はかっこいい。
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「エンデュアランス号漂流」(アルフレッド ランシング著)が、全体をみた話とするなら、こちらは船長の側から書いた本。ランシング著読めばまあ読まなくてもいいかなと思う。にしても、淡々と話を語ってるが、本物の迫力はスゴイ
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ちょっとまえに、WBSの内田和成教授がblogで、リーダーシップの好例として取り上げていたので読んだ。
1912年に、筆者を隊長として、南極大陸横断挑戦のため、エンデュアランス号で南極に向かう途中で、氷塊で船が破壊され、2年近く27人と漂流するも、誰一人命を落とさず生還させた、当事者の漂流記。
想像を絶する状況なのだが、当事者ゆえ、淡々と述べられており、それが妙なコワさを覚えた。いつ命を落としてもおかしくないのに、隊員が上位者への決断への絶大な信頼と隊長の決断力に敬意。
常時、なんだかんだ指示するだけがリーダーシップではなく、何かあったときに連帯感を発揮できる状態を常時保っていることも大事だと感じた。
作品としては、ジャンルが似ている「八甲田山の彷徨」の方が内容は濃いかな。
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南極探検というと、1911~12年のアムンゼンとスコットによる極
地踏破が有名ですが、シャクルトンはこの次の大きな探検目標とし
てクローズアップされていた南極大陸横断を企てた人です。しかし、
1914年に出航したエンデュアランス号は、南極大陸に到達する直
前に厚い氷に閉ざされてしまいます。その後、氷の圧力で船が砕か
れ漂流生活を余儀なくされるのですが、その漂流期間は何と22ヶ
月。本書は28名全員が奇蹟的に生還するまでの22ヶ月間の漂流生活
を、隊長であるシャクルトン自らが描いた異色の探検記録です。
希望に燃えて南極に向かったものの氷に閉ざされ船を失うまでが最
初のクライマックスです。その後、浮氷上の不安定な漂流生活から
エレファント島へと脱出するものの、絶海の孤島にいても埓が明か
ず、隊長以下数名が捕鯨基地がある南ジョージア島へと小さなボー
トで決死の航海を試みるまでが中盤。そして、何とか南ジョージア
島に辿り着いたものの、島の反対側に着いてしまったため、峻厳な
氷に覆われた島を何の登山道具も持たずに横断するという荒業に挑
む場面が終盤です。
数ある極限のサバイバル記録の中でも本書が卓越しているのは、シ
ャクルトンという希有な人物のリーダーシップを学べる点にありま
す。常に最悪の事態を想定しながら隊員の安全を最優先に考え、そ
の時々で最善と思われる判断を下す決断力。常に忘れない隊員達へ
の心配り。重大な決断をする時にも独断専行はせず、持てる情報を
開示し、全員の意見を聞こうとする姿勢。その底にある隊員達への
信頼。極限状態でもユーモアと祝福の儀式を忘れない人間味。そし
てどんな状態でも絶望しない超人的な克己心と忍耐力。
中でも印象的だったのが、最悪の事態を常に想定しながら持てる情
報を綜合して最善の判断を下そうとする姿勢でした。希望は常に捨
てないけれど、希望的憶測で判断はしない。こういう現実に対する
峻厳さに、欧米のリスクマネジメントの考え方の真髄を垣間見た気
がします。原発に対する日本人の姿勢の対極にあるものですね。
なお、この探検に当って、シャクルトンは下記のような新聞募集の
新聞広告を出したと言われています。
探検隊員求む。至難の旅。わずかな報酬。極寒。暗黒の長い月日。
絶えざる危険。生還の保証無し。成功の暁には名誉と賞賛を得る。
ほんの小さなスペースのこのぶっきらぼうな広告が、何と5000人も
の応募を集めたそうで、今だに広告人の間で語り継がれる伝説とな
っています。本書には出てこないエピソードですが、シャクルトン
の人柄がよく出ている広告だなと思いました。
およそ22ヶ月という長期にわたる絶望的な状態においても、人は前
を向いて生きることができる。そんな不屈の意志の記録です。
是非、読んでみてください。
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▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)
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わたしは複雑な自分の胸中を、うまく書きしるすことができない。
航海者にとって、船は浮んだ家以上のなにものかである。わたしは
エンデュアランス号に、野心と希望と欲望をかけてきたのだった。
ところが、船は彼女の人生がこれからはじまるというときに、うめ
き声をあげ、船材を砕かれ、傷口をあけながら、いまその生命の感
覚を徐々に失おうとしているのだ。船はすでに、使いものにならな
いほどに粉砕された。
第一にせねばならないことは、探検隊の安全を期することであった。
そのためには、わたしは全身全霊をかたむけて、わたしの過去二回
の南極の体験でえたあらゆる知恵をしぼりださねばならないのだ。
これは長い困難な仕事になるだろう。しかし、もしわれわれが生命
の損失なく、これをやりとげようとすれば、秩序だった士気、それ
に整然たる計画をたてる必要があった。人は、ある事態がおこった
とき、古い目標をすてて、新しい目的にむかって全精力をかたむけ
て邁進しなければならない。
こんなときには、なにか心をとらえるもの、はるかな故郷や、故郷
の人たちの思い出となる品物が必要である。そこで、われわれは文
明社会でなければ用のない金貨などはすてて、家族の写真をたずさ
えることにした。
われわれは浮氷上の生活に甘んじてきたものの、上陸地点を発見す
るという希望をつねにいだいていたのであった。ひとつの希望が消
えくずれても、またつぎの希望をもやしてはがんばってきた。
人間という動物の味覚はなんでもおいしく食べられるようになって
いる、とわたしは考える。
わたしは、両肩にのしかかってくる責任の重さをひしひしと感じた。
だがその半面、わたしは隊員たちの態度に激励されもし、よろこび
もした。孤独は隊長たる者が当然うけるべき罰でもあるが、決断を
くだす者にとって、したがう隊員たちが彼に信頼を寄せ、命令が確
実に遂行され、成功さえ期待できるようなときには、大いに勇気づ
けられるものである。
最小限、食物と避難場所がえられさえすれば、人はなんとか生きの
びることができる。しかも、笑いを忘れない人間本来の姿があらわ
れるものである。
海はだれにも胸をひらいてくれるが、だれにも慈悲をかけない。お
となしそうにしていても無言のうちに人を脅迫し、いつも弱い者に
は無情である。
苦闘ののち、あらゆる物資をうしなったが、うわべの虚飾をつきや
ぶったのだった。探検隊は、「苦しみ、飢え、そしてよろこびにお
どり、南極の無辺の力に戦慄平伏しながらも、栄光をもとめようと
し、人間として、全体の偉大さにおいていっそう成長した」のだっ
た。われわれは、その偉大さのなかに秘められた神の御姿をみいだ
し、自然があたえてくれる教訓をきいたのだった。われわれは人間
のほんとうの魂にふれたのである。
あの長く苦しかった三十六時間にわたる南ジョージア島横断の行進
中、われわれは三人ではなく、四人いたのだと、しばしば思えてく
るのだった。このことについて、当時は同僚になにもうちあけなか
ったが、あとになってワースリィは、わたしに、「隊長、行進中に
われわれの他にもう一人いるような、不思議な感じにとらわれまし
たね」と語ったことがあった。
われわれは死の世界から、狂気の世界にかえってきた人間であるよ
うに思えた。(…)われわれが去ってきたつめたい氷の世界とはち
がって、戦争とはなんと陰惨で熱いものなのだろう!
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●[2]編集後記
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先日、チンパンジーの研究で知られる京大霊長類研究所の松沢哲郎
先生の話を聞く機会がありました。すこぶる面白いお話でした。
中でも興味深かったのは、チンパンジーは「今ここ」を生きている
というお話でした。とにかく眼前にあるものの認知力は凄いのです。
ほんの一瞬で状況を見てとり、それを記憶することができます。実
験映像を見せてもらいましたが、それは本当に驚くべき能力でした。
でも、「今ここ」にないものは想像することができないのですね。
例えば顔の輪郭の絵を見た時、人間の幼児であれば目や鼻を描き加
えることができますが、チンパンジーの場合はそうはならない。欠
如を補うとか、違う時空の世界を生きるとか、そういうことができ
ないのだそうです。逆に言えば、「今ここ」以外を生きることがで
きるのが人間の特徴だと言えます。「想像する力」が人間を人間た
らしめているのです。
そして、想像力があるからこそ、希望があり、絶望があるのだ、と
松沢先生は仰っていました。確かに、希望も絶望も、「ここにはな
いもの」をどう想像するかということに関わっています。まだ見ぬ
「ここにはないもの」を求めて前に進むのが希望であり、かつては
あった「ここにはないもの」に執着して前に進めなくなるのが絶望。
そんなふうに捉え直すことができるかもしれません。
だからチンパンジーには絶望がないのだそうです。「今ここ」しか
生きていないから余計なことは考えない。そういうチンパンジーの
生き方には「今を生きる」ことの大切さを教えられます。同時に、
人間の特権を十二分に生かそうと思ったら、想像力を絶望に使うの
は損で、希望のために使うべきだよな、と思ったのでした。
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高野秀行さんオススメの冒険記。いやまあすごいもんです。南極大陸横断を目指したものの、その手前の海で漂流の後船を失い、ボートと徒歩で救援を求め、全員が生還を果たすまでの顛末を隊長が綴ったもの。よくぞまあ生きて帰ってきたものよ、という危機の連続だ。
しかしこれはもう百年も前のこと、素人にはイマイチ具体的な装備とかがわからないところに隔靴掻痒の感がある。ああ、誰か現代の冒険家で文章のうまい人がたっぷり説明をつけてリライトしてくれたらいいのに。このシャクルトン隊長がすごい人だというのはビシビシ伝わってくるんだけど、どうすごいのか誰かに説明してほしいなあ。
リーダーシップというのは、「決断力」と「人を使う力」なのかも。そんなことも思った一冊。
追記
と、書いてからふと気になり、もう一度「辺境の旅はゾウにかぎる」を確かめたら、高野さんが「名著」と書いているのはこれではなくて、ランシングの書いた「エンデュアランス号漂流」の方だった。あらー、そっちを読まなくちゃ。
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ある疲れた隊員を見て!「私は疲れたからあたたかいミルクを飲みたい。少し休もう。」と隊長が自ら言う!!その隊員は自分のせいで行軍が遅れるとは思わないですむ!!!隊員達の体調や心理を読める隊長!!!!そんな人が上に立つと素晴らしい集団になれる!!!!!「おもいやり」
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山口周さんの「読書を仕事につなげる技術」に載っていたから読んでみた本。
リーダーシップの本として紹介されていたけど、どーなんだろう。具体的なものとして書かれているわけではないため、ある程度推測しながら読めば得るものがあるのかも、、
単純な読み物として読んでしまいました。
読み物としても十分面白い本です。
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南極横断探検隊、シャクルトン隊長の記録をもとにした、遭難、脱出、生還、救出の物語。「火星の人」のような、冒険小説としての脚色がない分だけ淡々としているように感じるが、地図とあわせてみたり、寒さを想像してみると、大変な状況が肌感覚で理解できる。シャクルトンのリーダーシップや危機管理能力についても学べる参考書。これはビジネスでもそうなのだが、徹底的な準備、慎重な分析、そして決めたことは即実行、ということ。
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エンデュアランス号が漂流し、17ヶ月ぶりに無事に全員救出されるまでの話。
実際に起こったことだから、それをデフォルメして欲しいわけではないが、読んでいてもあまり緊張感がわかない。本当は、かなり極限な状態であったとは思うのだが。
淡々と、救援までの話が綴られているだけだ。
ただ、遭難して、全員が救出されたというのは見事なことであり、統率者のリーダーシップや人間力が相当高かったのだろうと思う。
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すばらしい本だった。初の南極大陸横断を挑むも遭難。しかし、不屈の精神とリーダーシップで奇跡の全員生還を成し遂げた冒険録。
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図書館で。
まだ地球に冒険が残っていた時代、といえば聞こえはいいのですがある意味はた迷惑な人達が活気づいていた時代だったんだなぁなんて思いました。
だって。まるで違う土地に未知の病原菌を持ちこみ、その地に住まう動物を殺して食料にし、持参した器物や装備を荷物になるからと現地に廃棄する。南極の動物にしてみたらいい迷惑だよなぁ…
でもまあそう言う言っては悪いかもしれないけれどもバカみたいな事に全力で取り組めるというのは中々羨ましいなと思います。命の危険を顧みずに挑戦できるってのはどういう事なのかな。面白いなぁと思いました。でも私は頼まれたって南極なんか行きたくないですけどね。寒そうだから。
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寒いのが苦手なのでわしには絶対無理な漂流である。
人間を狙うサカマタクジラ。後で調べたらシャチをサカマタと言うらしい。
アザラシとペンギン。味はともかくたくさん居てよかった。
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1914年南極での英国隊遭難の記録。シャクルトン隊長、最初はあっさりした記述で、船が氷に閉じ込められようが沈没しようが淡々としている。でも後半ボートで救助を求めにいくあたりから俄然やる気になって記述も具体的。自分で動くのが好きみたい。この人はリーダシップを高く評価されているようだが、プレイヤータイプに見えた。
寒いだけでなく、ずぶ濡れで、腹ぺこで、喉も渇いている様子がよく伝わってきた。これがいわゆるイギリスのジョンブル魂か。最後の3人での山越えで3人ともが「もう1人いるみたいだった」って回想する箇所がぶるぶるっときた。
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本書は、1914年に最初の南極大陸横断を目指したシャクルトンが、壮途なかばエンデュアランス号を氷に砕かれて遭難し、氷海に投げ出されて孤立無援となった探検隊28名を率いて、全員を生還させた報告書の抄訳である。
その行程は、1914年8月にロンドンを発ち、同年12月に最後の寄港地南ジョージア島を出帆、南極大陸に接近しようとしたが、ウェッデル海の浮氷群に閉じ込められてしまう。1915年10月にエンデュアランス号が粉砕された後は、6ヶ月間浮氷に乗って漂い、1916年4月にエレファント島に上陸。直後、シャクルトン隊長は、22名の隊員をエレファント島に残し、救助隊を求めて、5名の隊員と共に全長わずか6mのボートで800マイル(約1,300㎞)離れた南ジョージア島へ16日間の決死の航海を敢行する。そして、南ジョージア島上陸後、3名の隊員を上陸地点に残し、2名の隊員と共に島の反対側にある捕鯨基地へ、雪に覆われた山と氷河を越える36時間の横断行を成し遂げる。南ジョージア島を発ってからなんと17ヶ月後が経っていた。更に、エレファント島に残った隊員を救助するために何度も船を出したが、浮氷に遮られて残留地に近づくことができず、彼らが救助されたのは1916年8月、シャクルトン隊長が救助を求めてエレファント島を離れてから4ヶ月半後のことである。
シャクルトンの自著であり、筆致は意外なほど淡々としているが(現代のノンフィクション・ライターなら遥かにドラマティックな表現をするのではあるまいか)、その記録は、本当に人間とはこれほどのことに耐え、ここまでのことが成し遂げられるものなのかという、驚くべきものである。
シャクルトンは、「わたしは当時のことを回想するとき、たしかに神の加護があったとしか考えられない」と記しているが、それに先立って、シャクルトン隊長と隊員たちの固い団結心、生死の境にあってなお失われることのなかった深い友情と信義、隊員たちの不屈の精神の、いずれかが欠けていても実現しなかったに違いないのである。
数ある冒険・探検・遭難からの生還の記録の中でも、稀有な感動の手記である。
(2017年10月了)