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九条武子・柳原白蓮と並んで「大正三美人」と呼ばれた林きむ子とはどんな人だったのか?表紙には目鼻立ちの整った派手な顔だちの美人写真はイマドキの女優といっても通りそう。
彼女は義太夫語りの夫婦の間に生まれ、持って生まれた美貌と利発さで新橋の料亭の養女となった。その料亭は「待合政治」の発祥の地といわれるほどに政財界人が出入りし、その影響下、14歳年上のアメリカ帰りの実業家&政治家の妻となり6人の子をなした後、夫の急死。その1年後には9歳下の薬剤師で詩人の林柳波と再婚し2人の女の子を産んだ。
活発で行動的、物事に捉われず自分の考えで人生を切り拓く魅力的な人。今で言うならクロワッサンとか婦人画報、ヴェリイに常に登場する「セレブミセス」であり、小説やエッセーを書き、きむ子ブランド化粧品販売、一中節や舞踊の師匠など、多方面に活躍した。
この著作、今はあまり知られていない「きむ子」を中心に描かれているが、井上馨、頭山満、杉山茂丸、板垣退助、原敬、尾崎行雄など政財界人や、らいてう、長谷川時雨などの女性運動家のほか、歌舞伎役者、舞踊家、詩人など大正時代の綺羅星たちが周辺をにぎわすことが面白い。明治と昭和にはさまれた短い時代。そんな時代の華やかな世界を垣間見ることができた。