サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

「e-hon」キャンペーン 本の購入でe-honポイントが4%もらえる ~7/31

hontoレビュー

ほしい本の一覧を見る

乱視読者の英米短篇講義 みんなのレビュー

  • 若島 正 (著)
  • 税込価格:2,09019pt
  • 出版社:研究社
  • 発行年月:2003.7
  • 発送可能日:購入できません

第55回読売文学賞随筆・紀行賞 受賞作品

予約購入について
  • 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
  • ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
  • ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
  • 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。

みんなのレビュー6件

みんなの評価3.8

評価内訳

  • 星 5 (1件)
  • 星 4 (2件)
  • 星 3 (2件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
6 件中 1 件~ 6 件を表示

紙の本

仰ぎ見る「階上のファンタジア」——人生の半分以上を小説読みに費やしてきたという人が縦横無尽に舞い踊る英米短篇物語の時空。

2003/12/09 16:21

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 私は小間使い。半地下の食品庫で年代物のワインを探している。今宵のパーティーにはダンスの名手が来ており、階上のホールからは舞踊曲と軽やかな靴音がひっきりなしに聞こえてくる。盛況でお酒は用意したものがもうなくなりそうなのだ。
 どんなステップが刻まれているのだろうかと想像してみる。仕事を終えたら、想像したように屋根裏部屋で踊ってみようかと楽しみにしている。

 英米の小説に興味はあるものの原書での読書はほとんどしたことがなく、もっぱら翻訳書を頼りにしている私にとって、たとえ同じ「小説読み」ではあっても、大学で英米文学の講義をし、ナボコフやスタージョン、パワーズといった癖の強い作家たちの翻訳を手がける若島先生は、ダンスの名手のような階上の存在だ。でも、自分を保存庫でチーズをかじっているネズミではなく人間の小間使いにさせてもらったのは、「読んでいると訪れるよ、私にもそういう瞬間が…」と共感できる喜ばしい驚きが本書にいくつか発見できたからである。

 短篇の講義といっても、英米文学全体の見取り図を広げ、代表的な作家や作品を取り上げて各々の位置づけを論じたり、潮流を解説するというオーソドックスなスタイルではない。偏愛する作家の特性や気になる作品を挙げて、そこから別の作家の別作品へ回路をつなげていく。ごく私的な読書体験から「読み」の楽しみを紹介していこうという内容である。
 読者に媚びるのとは違った、それでいてフレンドリーな感じが前面に出ている。それがどこから来ているかというと、この先生は「文学」というものを決して専門的な学問対象として囲い込んでいないからではないか。短篇小説を読んでの「個人的な印象や記憶がまわりに呼び寄せてくるものを配置するという趣向」を選び、自身が小説をどう生きたか、こちらとあちらの作品をつなげてどう生きたかという姿勢を絶妙の話術で綴っている。その底にはあるいは「論理的な解析では小説の精髄に触れることはできない」という専門研究に対する思いがあるのかもしれない。
 ここで挙げられている作品の2割も私は読んでいない。名前も知らない作家、聞いたこともない作品がいくつか出てくる。ご本人が明言している通り「マイナー小説好みがふと頭をもたげている」のである。それでも、できれば学生になってこの先生のゼミに参加したい。夏休みにナボコフ作品の試訳に挑戦して(『The Eye』がいいな)、新学期になったら「数ページ分だけでも目を通していただけませんか」とお願いしてみたい…などと思わされてしまう、とびきり面白い仮想講義集となっている。

 室生犀星の『或る少女の死まで』を読んでいて『ナボコフ自伝 記憶よ、語れ』とトルストイ『幼年時代』を想起し、生い立ちについて書かれたものを読むことは幻想小説を読むことに似ていると感じた。ナボコフの「初恋」をめぐる講義のなかにあった「記憶が想像力と等しくなる魔術的な一瞬」(83P)という表現に、「これだ」とはっとさせられた。詩人・久坂葉子とアンナ・カレーニナの自死のイメージの重なりについても、「列車が来た時、数歩前に踏み出しさえすれば」のような気迷い的瞬間の去来を長年感じてきた。階段をひとつ上がれたような喜びに満たされた。
 読み飛ばして消費していくのではなく、細部にまでこだわってテーマや表現、記号やほのめかしに注意深くあれ。そうすれば、「階上のファンタジア」はいつか君にも見えてくるはずだよ…と声をかけられた気になってくる。おそらく大切なのは選書なのだ。回路作りのためにこそ出会えたのがこの本だと信じることができる。
 

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

デリケートな読みによるマイナー作品への偏愛ぶりが魅力

2004/10/06 21:51

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:きらきら星 - この投稿者のレビュー一覧を見る

著者がこよなく偏愛する作品の英米短編比較論。主に彼の嗜好で選んだ短編から連想される似た筋書きの短編を挙げ、プロット、レトリック、タッチの違いなどを論じている。有名どころ、例えばホーソン、メルヴィル、ポーなどは出てこない。5年前の同著者による『乱視読者の冒険』ではあまり知られていない難解そうな長編の羅列に尻込みしてしまった。けれどこれは短編講義なので興味がわけばいつでも読めそうだ。そんな手軽さがいい。何より30年間、著者が山のような様々な作品を読んできた中で読み返してきた逸品を紹介してくれてるところが素敵だ。
ある意味、亀井俊介さんなどの批評と傾向が対照的ではないだろうか。後者はキャノンをばんばん挙げかつ周辺作品について啓蒙。社会的事象、歴史的背景、キャラクター心理、文体など多視点からの骨太で安心感ある慎重なアプローチとなりがちだ。こういうタイプの分析に異論を唱える人は少ないだろう。わたしも実は好きでかなり読んでしまった。けれど教科書的な文学史を読みちょっと踏み込んで調べてみれば想像がつく内容も多いかもしれない。後者の場合、読後に強く読みたいと思う作品がほとんど浮かばない。
その点若島さんが扱う作家は「へ?」って拍子抜けする感じで結論も「それは違うんじゃないか?」と思ってしまったりする。例えば、ナバコフの文章にこだまする響きはわたしには感じられなかった。小説中のゲームの場面解説は歯切れよく簡潔だけどどの作品についても社会的歴史的考察への言及がないのはちょっと寂しい。何より「現実が愛人で本が本妻なんじゃないか」って言ってしまうあたりは少しこわい。偏っている。けれどどちらかというと若島さんの批評になぜかわたしはひかれる。文章のあり方のみにこだわっている姿は潔い。また時に捉えがたい繊細な文章の襞に隠れたデリケートな本質を見逃さずに鋭くついてくれる。そして何より歴史の中で評価が高い作品について頭でっかちに講義するのではなく、自宅の風呂でマイナーな本をぬらしてはかわかしたりしながら何度も読んで、心から「この作品よかったよー。その理由はね、僕だけが気付いたんだけどね…ふふふ?」って感じて紹介してくれる。だからつい読みたくなってしまうのだ。
 おすすめのA・E・コッパードの「アダムとイブとつねって」やギャスによるガートルートスタイン論、オフェイロンは死ぬまでに一度読んでみたいと思った。ついでに「SFはアルファベットの順に読め(ABCDとはAsimov、Bradbury、Clarke、Dick))という金言も参考になった。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

著者コメント

2003/07/14 18:30

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:若島正 - この投稿者のレビュー一覧を見る

そんな人種がいるかどうかは知らないが、わたしは短篇小説のコレクターを自認している。雑誌などから短篇を切り抜いて集め、作家別に簡易製本するのが趣味なのだ。だから短篇のアンソロジーを作るのも趣味で、これまで私家版のテキストを何冊もこしらえた。今回まとめた『乱視読者の英米短篇講義』も、やはり私流のささやかなアンソロジーのつもりである。読んで気に入ったものが何本かあれば、著者兼編者としてはとても嬉しい。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

2011/07/23 07:45

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2011/10/31 13:04

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2013/03/07 17:57

投稿元:ブクログ

レビューを見る

6 件中 1 件~ 6 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。