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紙の本
「学ぶ」を「遊ぶ」快楽
2003/09/28 10:59
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:脇博道 - この投稿者のレビュー一覧を見る
とてもうれしいニュースです。
このたび、あの伝説の大部「遊学」が文庫2分冊となって帰還しました。
やっと帰ってきてくれたか! 愛すべき放蕩息子よ、といった感慨をおさえ
きれない今日この頃である。1と2合わせて約800ページ! マツオカ氏
の言葉の魅力に耽溺するのに充分のボリュームである。
本書が「遊学ー一四二人のノマドロジー」として刊行されたのが1986
年。17年もたっていたのかとこれだけでもなにやら感じ入る次第では
あるが、今回再読しながらいささかも内容が色褪せていないことにただ
ただ驚いている。むしろ21世紀の現在に帰還するにあたり、その輝き
は増幅しているとさえいえるだろう。
ラディカルな雑誌「遊」によって一読難解な諸概念を、一気に遊学という
軽やかなスタンスに変換したマツオカ氏は、自らの実践として本書を
はじめ、大部の著作を世に送りだしてきたが、残念ながら、当時のもので
現在容易に入手できるものは少ない。文庫というハンディなスタイルで、
刊行されることは、ありがたい限りであるし、書を持って街に出よう、を
実践できる機会が再び到来したといえる。
142人! 古今東西の哲学者、文学者、音楽家、デザイナー、おっと
このような単純なカテゴリー分類こそマツオカ氏が回避してきた重要
な事柄であった。鉛筆1本からピタゴラスの数理に飛び、バッハを論じ
ながらパウル・クレーの微細な線画と接続しつつフラジリティーの
概念に至り、三遊亭円朝と狩野派をフラットな平面に配置しながら
ルネサンス的思考を提出する、こんな力技の数々が本書のなかでは
自遊(誤植にあらず)自在に展開される。
(注:142人は1と2合わせた人数です。)
なに、お前の解説ではなにがなんだか解らない、大変失礼しました。
それでは、ぜひ本書をひもとき、至福の読書タイムをお楽しみください。
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