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【読書その101】コロネコヤマトの元会長の小倉昌男氏。93年に保有していたヤマト運輸の株式の一部を投じ、ヤマト福祉財団を設立。恥ずかしながら知らなかったのは、厚労省の地下一階のスワンベーカリーがヤマト財団の事業の一部であること。おいしいパンを売っており、自分も時々購入している。この本は小倉氏がこれまでの経営者の経験を生かし障害者の自立に向かうための経営論についての論じている。著者は、経営は企業だけに必要なものではないという。障害者のための作業所にも経営が欠かせない。経営がなければ、障害者に十分な給料を支払う事業を打ち立てることなどはできないという。自分自身、生活保護のケースワーカー時代に担当の障害を抱えた人の授産施設を見学したが、自分の手元に残るお金はほとんどない。それでは、障害年金を含めても当然生活はできない。他の民間企業の商品と同じように市場で売れるものを出すことが障害者の安定的な収入につながり、それが自立につながる。この本は福祉関係者もこれまでの事業のやり方を再考を促している。
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1月7日に行われたヤマト運輸高校生経営セミナー。今年のテーマはヤマト運輸の新しい社会貢献活動の提案だった。2回目の出場となった本校ディベート部は、メンターを務めたヤマト運輸の社員の方と話し合い、スワンベーカリーのパンを移動販売しようと言うものだった。
スワンベーカリーというのは、「ヤマト福祉財団が後押しする焼きたてパンの店」で、障がい者が従業員として働いている。都内だと銀座、赤坂、十条に店がある。
生徒達は実際に店でパンづくりもさせていただき、障がい者の皆さんが問題なく働いている姿に接した。また特別支援学校へも伺って、就職の難しさを取材してきた。
そこで、ヤマト運輸から車を譲り受けて改造し、セミリタイアした運転手と販売員の障がい者のベアで車による移動販売を展開しようというプレゼンを行った。
車の改造費はヤマト福祉財団からの援助で行えることや、銀座店から2キロ圏内に国際フォーラムや日比谷公園といった移動販売の拠点となる場所が存在していることや、売り上げ的にも十分利潤を生み出すことができることなどを根拠を挙げて説明をしていた。
僕は全くのノータッチだったのだが、彼女たちのおかげで、障がい者雇用の問題や、ヤマト福祉財団の存在などに興味を持つことができた。
それで、教会の長老と話をしていたら、ヤマト福祉財団の創立者で、ヤマト運輸の創立者でもある小倉昌男さんがクリスチャンだということを知った。そして障がい者の賃金が1万円に見たない状況を改善しようと活動をされていたということも知った。そして勧められたのがこの本だった。
この本で主張してるのは、どんな人も自立できるだけの賃金収入を得られるように、福祉の現場の方も、経営を考えて共同作業所の運営をしましょうということ。
「良い物を作れば売れる」は間違いです、という言葉には、学校現場という温室でぬくぬく生きてしまっている自分には、冷や水を浴びせられたような衝撃があった。
共同作業所の運営者たちを資料代の負担だけで全国から集めて経営セミナーを開催し、成果が上がることを証明するためにスワンベーカリーを自ら立ち上げて軌道に乗せる。
商品を売ることが経営の要諦だという。消費者に買う気になるように、消費者の立場で考えろという。「経営者としてではなく、消費者として商品をどう見るか」を学校に置き換えたらどうなるか。「商品」の部分に入るのは、「授業」か「生徒」か。
誰もが同じ人間であり、豊かな生活を遅れるような社会を作っていく責務がある。それをやさしく、わかりやすく語っている本だ。
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ヤマト運輸の元会長が私財を投じて財団を設立、障害者の自立を支援するため、所得保障を目指し、共同作業所に「経営」の観点を導入する。
世の中で売れるものを作ることによって、売上・利益を確保、そこで働く障害者が生活に必要な賃金を得られるようにする。言うは易し、とはならず、自らの肝いりで街のパン屋さんを立ち上げ、「経営」を軌道に乗せる。
そこに見られるのは、筆者の考えに共鳴し、高い志をもった経営者達の起業家精神。非営利組織にも起業家精神は、やはり、必要なのだ。
その起業家精神。他のところでも発揮されないものか。
一般的に、障害者と並んで、若者・女性・高齢者の雇用が大きな課題とされる。少子高齢化が進み、労働人口が減少していくことが目に見えているのに、である。いずれも働く意欲のある方々のはずだが、世の中では、その雇用確保が難しい。
雇用確保が十分にできず、収入が途絶えると、社会保障費の負担増となって跳ね返る。特に高齢者は2025年には全人口の3割に達する見込みで、障害者の3%どころの話ではない。年金・医療・介護といった支出を抑制しなければ破綻である。
それではどう雇用確保し、所得保障するか。雇う側の立場では、やはり売上・利益が確保されないと厳しいと感じるだろう。鶏と卵の話になってしまうが、筆者はまず障害者を雇い、十分な給料を支払えと言う。そうしてから考えろという。
そうすることで、本当に言いたかったことは。
すでに亡くなられたのが残念である。もう少し国の福祉のあり方に物申すところを拝見したかった。
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★この本からの気づき
・現在、障害者の平均月給は13000円前後。
・小倉氏は、福祉に関わるもっと多くの人々が
「経営」という視点で障害者支援に携わるべき、
と説く。
・福祉の雇用について知るにも良い一冊
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■福祉経営
A.日本の福祉は、ノーマライゼーション( 障害がある人もない人も同じように生活できる、という理念)からはほど遠い。
今、障害者に必要なのは、健常者と肩を並べて仕事をし、自立できるだけの給料を得る仕組みをつくることである。
B.これまで福祉や障害者問題は、市場経済になじまない分野と考えられてきた。
しかし、福祉にも「経営」という発想が必要だ。
消費者が欲しい商品や喜ぶサービスを考え、儲けを出すことで、「月給1 万円からの脱出」が可能となる。
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ヤマト素晴らしい。
経営の視点を取り入れる。パラダイムシフト。
工賃が挙げれない言い訳はいくらでもできる。
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ある障害者の言葉「私は障害を持って生まれたことを不幸とは思わないが、日本の国に生まれたことを不幸だと思う」
共同作業所では障害者が月1万円で働いていた。この実情を知り、小倉氏は、福祉にも経営を取り入れることを考え行動にうつした。
経営とは、理屈。目的があり、それを実現させる手段を考える。
手段として合理的かつ効率的な方法を見つけて成果をあげるのが経営。
作ることよりも売ることが大事。消費者が欲しがるものを提供する。
そのためには買い手の視点で考えることが大事。
できるところからやってみる。やらなければ永遠にできない。
経営は楽しい仕事である。
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昔読んだ著者の『経営論』が非常に分かりやすくて
面白かったので著者の別の本を読んでみようと手に取った本。
ヤマト運輸が福祉財団を作っていて、障害者就労の問題に
取り組まれているのを初めてしりました。
福祉のための経済学・経営学と銘打っていますが、非常に
経営・経済の初歩としてまとまっている内容だと思います。
また、障害者がまだまだ世間に出て生活できるようになっていない
現実もまた悲しいことかと思います。
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著者紹介はするまでもないと思いますが、ヤマト運輸の社長・会長を歴任された、故小倉昌男さんのご著書です。2003年10月が初版ですから、いまから11年前の本ということになります。
ヤマト運輸の会長を退任後、ヤマト福祉財団を設立されました。そこで行われてきた、障害者就労施設の施設長や職員向け「経営パワーアップセミナー」の内容を中心にまとめられたご本です。
<目次 >
第1章 障害者の自立を目指そう!私の福祉革命
第2章 福祉を変える経済学
第3章 福祉を変える経営学
第4章 先進共同作業所の経営に学ぼう
福祉について書かれた本であると同時に、あるいはそれ以上に、「経営の入門書」と捉えたほうがいいと思います。
http://amba.to/1oKTV6G
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クロネコヤマトの会長が引退後障害者福祉財団で取り組んでいる話。
おしぼりのタオルはやくざが絡んでいることが多い。
月給一万円で働かせているのは搾取。
スワンベーカリーは冷凍生地を焼くのみ。
給料は成果の対価という部分と反するのではないかと思った。
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この書籍の著者は小倉昌男さんといい、戦う経営者として有名なのだ。
彼を(間接的だが)知らない日本人はいないだろう。そう、小倉昌男さんは宅急便の生みの親である。
もともとヤマト運輸はそごう百貨店の下請けをやっていた。あんまりにもそごうの要求がキツイので、原価計算してみると宅急便事業を起こした方が儲かると分かり、宅急便事業を日本で初めて軌道に乗せたという天才経営者なのである。
その小倉さん、ある日ヤマト運輸の取締役に「小倉会長、もう経営の一線からはお引きください。役員一同あなたのことが邪魔で、邪魔で仕方がないんです」と言われ、ヤマト運輸の経営の一線から退いた。
その後、自身が持ってたヤマト運輸の株式(小倉さんはオーナー経営者)、とヤマト運輸からの出資で何かやろう!と考えていたところ、ふと障がい者の現状にたいそう立腹したのだ。
なぜなら、障がい者の月収は一万円程度、いわゆる共同作業所に障がい者を集めて、ロクに市場価値もないものを専ら製造していたのを垣間見たからである。
小倉さんは、それを目の当たりとして「許せない!」と激怒されたそうだ。これはそごうの庇護から離れるときにも同じ感情を抱いていたのだ。
彼は「障がい者の自立」という概念を考えた。それは簡単に言うと、働いて、収入を得て生活することである、と定義づけた。
そこで、どうすれば障がい者が自立できるだろうかを考えた時、障がい者に「市場価値の高いもの」を製造させることで実現できるのでは?と思いついたのである。
小倉さんは、「市場価値のあるもの=毎日必要とするもの」とまず考え、パン屋さんを障がい者が健常者のヘルプの下、事業としたらいいのではないか?と思われたそうだ。
そこで、天才経営者の小倉さん、障がい者でも美味しいパンを作れる方法として、広島のパン製造・販売の大手タカギベーカーリーの高木社長に同社の冷凍パン生地の提供を受け、それをパン屋さんで焼くだけという、パン作りの素人で美味くパンを作れる方法によって解決。
またパン屋さんの経営テクニックも考えた。まず、パンの製造過程を顧客に見てもらい、陳列方法も「作り立て」にこだわり、ビニール袋に入れずにトレイにそのまま置くといった方法で、「売れるパン」の作り方を考えた。
また、一部の店舗では喫茶店も併設。ここでもこだわりを見せ、圧倒的な同業他社であるスターバックスに負けないように、航空便でシアトルからコーヒー豆を輸入した。(スターバックスは船便)
この方法で、知的障がい者が健常者のサポートの下、一店舗当たり日収20万円・一日当たり顧客数400人という大成功を収めたのである。
この店舗の称号は「スワンベーカリー」といい、そこで働く障がい者は月収10万円以上収入を得ているそうだ。月収10万円プラス障害者年金で6万円強、障がい者は十分自立できるようになったのだ。
このような障がい者には、私生活でも張りが出てきた。まずはピアノ教室に通ったり、空手道場に通ったり、自分自身に自信がついてき��そうである。
ところがまだまだ難題はある。パン屋さんは田舎ではなかなかペイしない。そこで目をつけたのが、「木炭事業」。木炭のプロフェッショナルに指導を仰ぎ、田舎で樹木を伐採し、木炭にするといった事業を考案したのだ。
木炭は実はかなりの需要のある商品で、一流高級ステーキ屋・焼き鳥屋・うなぎ屋、バーベキューに必須のものである。なぜなら、ガスは水分を含んでおり、その上事故防止のため臭いがつけられており、焼き魚とかの調理に向かない。
そんな時、木炭を使うと焼き魚などはパリッと仕上がるし、電気調理器と比べても火力が高く、非常に魅力ある消費財である。
これをまずは九州は福岡県嘉穂郡頴田町で重度の自閉症の障がい者が入所する「カリスタの家」という厚生施設で、清水建設の請負の下かまどを作り、全国で展開した。
このように、名経営者である小倉さんは、数々の障がい者事業を軌道に乗せ(詳しくは本書を)、障がい者のノーマライゼーションに尽力されたのである。
小倉さんが一番本書で言いたいのは、障がい者が十分自立するための賃金を得て、地域社会と共存できるようにしたいということだ。
本書を読んで、障がい者の皆さん、及び近親者の方々ぜひ小倉さん(故人)の事業に参加して欲しい。以上私からのお願い。
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障害者の月給1万円からの脱出、その一番良い方法は?
まず給与を一定金額渡す、それからその金額を払うにはどうする事が必要かを考える。
この考えは我々が仕事をしていく上でとても重要な考え方だと思う。つまり、まずあるべき姿があり、それに向かって行動をする。我々の仕事に関していえば、大事な事はそのあるべき姿の確立だ。
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【ノーマライゼーション】
本書の著者、小倉昌男さんのことを知っていますか? 彼の父は大和運輸(現ヤマト運輸)を創業した人である。そのヤマト運輸の経営に危機が訪れた時に、宅急便の案を取り上げた。その宅急便こそが、誰もが知る「クロネコヤマトの宅急便」であり、彼はその生みの親である。ヤマト運輸では会長を務めていたようだが、その後、ヤマト福祉財団の理事長となっている。
ヤマト福祉財団とは、障害者の援助を行う財団である。皆さんは、障害者の自立とは何だと思いますか?これが、この財団を設立した一つの課題である。障害者の方は、家族が面倒をみていることが多い。自立させたいと思ってはいても、心配でなかなか自立させることができない親御さんが多いのではないか。私も街で、両親と買い物をしたり、散歩をしたりしている障害者を見かけることがある。家族がついていれば安心だし、何かあってもすぐに対応することができる。だが、それでは自立とはかけ離れてしまう。
そこで、障害者のための「共同作業所」という就労施設がある。それは、障害を持った子供たちに、実際に職業を教えて、お金を稼いでいるものだ。それは、自立に繋がる第一歩のように感じる。だが、その作業所では障害を持った人たちに、毎日朝から晩まで働いたとしても「月給一万円」しか払っていないという。それに対し、著者は「経営する概念」が欠けていると述べている。「経営」と聞くと、企業が必要とするものと捉える人が多いのではないか。私もそのように捉える。だが、それは障害者のための共同作業所にも必要だという。そのように著者が考えるのは、自分がヤマト運輸で経験した「経営」の苦労があったからである。
だが、日本では「ノーマライゼーション」とは遠いものとなっている。社会では、障害者に対する差別があり、外に出ることができない人もいたという。今では、バリアフリーというものがあり、障害のある人でも暮らしやすいような工夫がされているのを見る。私は、障害者が自立するのには、差別をなくし、満足してもらうことが「ノーマライゼーション」につながるものだと考える。
著者は、自分だけではなく、相手の立場を考えて、挑戦してみる。その熱意があったからこそ、行動に移すことができたのである。本書は、あとがきで著者も述べていたが、障害福祉の関係者の方はぜひ読んでもらいたい。また、経営について興味がある者も一度読んでもらいたい本である。