紙の本
人間は不完全な存在であるという思いから出発することの大切さ
2004/11/27 10:15
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
予備知識もほとんどないまま手にしてみたものです。作者名も何となく聞いたことがあるという程度でしたが、本書には私が中高生の頃に国語の教科書で目にして強く記憶に残った詩が二編も含まれていることに驚きました。
一編は「夕焼け」という詩です。混み合った電車の中で二度も高齢者に席を譲った若い娘が三度目はとうとう席を譲ることなく、うつむいてしまう。夕焼けを目にすることもなくじっと座り続ける娘の姿を読んでいます。娘の心をちょっぴり理解しがたい思いをしながら読んだ記憶があります。
今一編は「I was born」。日本語も英語も「生まれる」という受身形で表現されることに気づいた作者がそのことを父に語るという内容です。確かに人間は自らの意思を斟酌されることなく産み落とされるという受動的な存在なのだと思ったことをよく覚えています。
しかしこの作品には、息子の言葉を聞いた父が、出産直後に亡くなった妻の話をするという続きがありました。高校時代にもこの続きを含めて読んだはずなのですが、「生まれる」という言葉が受身だという発見にばかり気を取られ、父が息子を諭すために用いた妻(息子の母)の挿話のことはすっかり失念していました。
さて、表題ともなった「祝婚歌」ですが、これは実に味わい深い詩です。酸いも甘いも噛み分ける年齢に達した人生の先輩が、若い新郎新婦に贈る「仲睦まじくあるための秘訣」。
「正しいことを言うときは/相手を傷つけやすいものだと/気付いているほうがいい」というのは意味深い言葉です。「人間も人生も完璧なものでは決してない」という思いから出発していて、その点が共感を呼ぶのでしょう。離婚調停に携わる弁護士がこの詩を当事者夫婦に見せて翻意を促すのに使うという挿話もとても興味深く読みました。
紙の本
なぜ男の愛はうねりが大きいのだろうか
2014/05/07 11:32
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投稿者:gaoyee - この投稿者のレビュー一覧を見る
大まかに見えてはいるが、繊細さに感応し、過ぎゆく時間を感じ取る単位は日常の時間単位を大きく上回る。そのサイクルは、一見大きくはみえるものの、女性の持つ感性に揺れてうねって滝のように高地から流れ落ちる。吉野氏の詩の主旋律に、絡みながら聞こえる氏の伴走ランナーである奥方の吐息が詩の行間から聞こえてくる。
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大好きな詩人です。
まっすぐで伝わる言葉の数々。
そして、なおかつ人の心の繊細な部分を映し出してくれます。
「夕焼け」「雪の日に」収録
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「夕焼け」「I was born」「虹の足」といった代表作も収録されている詞華集。
私にはまだ早かったのかもしれない。
代表作は確かに胸に迫るものがあったが、他の詩にはあまり心が動かなかった。
あるフレーズは頷けるのだけれど、全体の印象はぼやけている。
でも、きっと本当は素晴らしい詩集なのだろうなという予感はある。
また読み直したい。この詩の発信するものが理解できるほど成長したときに。
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「祝婚歌」お祝いに朗読してもらい、忘れられない詩のひとつ。
どんな人との関係でも、大切なことのような気がします。
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『祝婚歌』が読みたくて借りました。
睦まじくいるために大事なことが過不足ない言葉で書かれています。
これから結婚や出産を迎える友人に贈りたい詩集。
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吉野さんが紡ぐ言葉は、自然と涙がでてしまうくらい、美しい。
結婚したばかりのカップルに贈りたくなるくらい素敵。
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この詩集自体は読んだことがないけれど、
ここにおさめられている「夕焼け」は
ある意味、今の私を形成する原点になっています。
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元々、吉野弘さんの「祝婚歌」が好きだった為に手に取った詩集。
どの詩も好きだけれど、「ひとに」が素晴らしい。
冒頭「美しい人よ」から始まり6ページにわたって綴られた、男性から女性への語りかけ。
ラストの6行で心を持って行かれた。
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表題になっているのは『祝婚歌』の一部です。
友人の結婚に、スピーチをすることになり、この詩を贈りました。
とてもやさしい、思いやりにあふれた詩です。
お勧め。
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「祝婚歌」大好きな詩です。「正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだと 気づいているほうがいい」というくだりを読んで、ああ、そうだと、いつも気づかされるのです。他にも「夕焼け」「奈々子に」「虹の足」など、以前に読んだことのあって、今も心に残っている詩が多数収められています。茨木のり子さんの「あとがき」もすてきです。
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書名は、吉野弘さんの作品の中でも、最も有名と思はれる「祝婚歌」の冒頭部分から取られてゐます。
即ち。「二人が睦まじくいるためには/愚かであるほうがいい/立派すぎないほうがいい」
二人の門出に、かういはれると肩の力が抜けて、気取りや衒ひから解放されるやうな気がします。実に優しい言葉ではないでせうか。
吉野弘さんを知つたのは、20年くらゐ前でせうか、佐高信さんがやはり「祝婚歌」を紹介してゐたのを読んで興味を持つたのであります。
その後思潮社から出てゐる作品集を求め、さらに『感傷旅行』といふ詩集を偶然入手し、平易な言葉を駆使した人間賛歌に魅せられたわたくしであります。
佐高氏がしばしば引用してゐたのは、「正しいことを言うときは/少しひかえめにするほうがいい/正しいことを言うときは/相手を傷つけやすいものだと/気付いているほうがいい」といふくだりであります。
自分にとつて正しいと思はれたことが、相手にとつてもさうなのか、常に考へるやうになるきつかけになりました。
夫婦間のイザコザから国際的な外交問題まで、さういふ視点は基本ではないでせうか。
自分が気に入つた本があつても、他人に薦めることは滅多にないわたくしですが、本書は結構お薦めしてゐます。
今回は、新聞の紙面にひつそりと訃報が報じられた吉野弘さんの追悼の意を込めて取り上げました。
ご冥福を祈ります。
http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-149.html
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「夕焼け」で初めて知った吉野作品。久々に読み直したくて詩集を購入しました。
数々の作品の中で、「祝婚歌」の良さがわかる自分になったのではないかと思います。お祝いの歌として耳にしたことは何度かあるのですが、やっと味わえるようになったのが嬉しいです。
吉野弘さんは今年お亡くなりになりましたが、きっと作品はいつまでも人の心に響き、癒し続けるのだろうと感じます。
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久しぶりに詩集を読みました。
「祝婚歌」は日本人らしい素敵な詩です。我侭をついつい言ってしまったり、思ったことを直ぐに口に出してしまったりしますが、相手をどこまで想ってあげれるかを挑戦するのが夫婦関係なのかと。。。
あと、「虹の足」も好きな詩です。当たり前のことや、今自分が置かれている状況が実はとても幸せなかも知れない。
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涙が出そうになった。
そんな詩が、いくつもある。
かならず何度も読み返したい。
そう思った。
こころを打つ言葉たちに感謝。
なによりも、この詩人に感謝。