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立法の復権 議会主義の政治哲学 みんなのレビュー
- J.ウォルドロン (著), 長谷部 恭男 (訳), 愛敬 浩二 (訳), 谷口 功一 (訳)
- 税込価格:4,070円(37pt)
- 出版社:岩波書店
- 発行年月:2003.10
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紙の本
原題は〈立法の尊厳〉(THE DIGNITY OF LEGISLATION)
2007/08/26 21:51
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:半久 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書のテーマは、多数決原理の擁護、そして立法府の尊厳の回復である。
《多数決原理に関する本格的な議論の伝統の乏しさは驚きに値する》
ウォルドロン教授は嘆いているかに見える。アングロ・サクソンでの法哲学界では、議会よりも司法部に関心と敬意が向けられていると診断しているからだ。立法は、恣意的であるとの悪評と反感にさらされている。それは、多数決原理が恣意的であるからという不信に根ざしている。しかしウォルドロンは、司法の判断であっても判事の意見が分かれることは珍しくなく、その際には多数決原理が採用されることになる。多数決原理の結果が恣意的なのであれば、司法の判断もまた大部分が恣意的なものになると反論する。
そして、多数決原理は公平であり、個人を尊重するものだと熱弁する。
《合衆国でも西ヨーロッパでも、また他の全ての民主国家でも、立法府が社会をより安全に、より開花された、より正義に適ったものとする方策は全て、意見の対立を背景にして、しかしそれでも当の方策に反対する人々の忠誠と服従を(不服ながらのそれではあっても)何とか確保しつつとられるものである。児童労働の禁止、刑事手続きの改善、労働時間の制限、人種隔離の廃止、作業場での健康安全確保規則、女性の解放、これらの成果の全てが、ロールズ一派が秩序ある社会の特徴とする正義の共通了解に多少とも似たものの下ではなく、むしろ私のいう政治の状況の中で実現された。》
主張には納得できる点もあったが、ロールズ一派のリベラリズムについては「誤解」もあるように思った。それから、多数決原理の危険性についてはあまり触れられていないのが気になったが、なにも多数決を絶対視しているわけではなく、司法とのバランスを回復しようとしている意図なのだろうと受け取った。
ないものねだりだが、そのように高く評価するのなら、多数決原理をさらに広く浸透させた方がいいのかどうか。つまり、直接民主制的な手法を、採決のステージにもっと組み込んだ方がいいのかどうか。加重された多数決の問題(憲法の改定に関わる)をどう考えるのか、等も論点化してほしかった。
読み進めながら、日本の状況との落差をも感じていたのだった。単純化するが、日本では逆に、司法が立法(や行政)に過度に「遠慮」をしているように映るからだ。下級審はまだしも上級審にいくほど、立法府(と行政府)にぬかづいているのではないかとすら思える。日本の場合はむしろ、司法の復権こそが唱えられてもいいように思える。
本書の紹介に戻ると、その構成は大きく二つのパートからなる。一つは立法擁護の理論家といえそうなルソーやベンサムではなく、従来はそうではないとされていた3人、カント、ロック、アリストテレスの所論の中から、制定法に好意的な議論をサーベイしているパート。3・4・5章を占める。
残りの1・2・6章が、ウォルドロンの見解を中心にした導入~まとめパート。ご用とお急ぎの方は、このパートだけでも教授の言わんとしていることは掴めると思う。
本書は文章は堅めだが、立法と多数決原理を巡って議論するための叩き台として一読の価値はあるだろう。
翻訳も割合良好。
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