紙の本
著者の雑文は読み易く面白い
2004/02/19 21:19
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投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一流の人の著作は、面白く、いろいろと教えられるものだ。著者はこの本を、雑文といっているが、素人にとっては本格的な論文より、この本の様のものの方が、読み易く面白い。これも中公文庫にある「九品官人法の研究」(1997年)は、終わりの1/4以上が文献データの羅列といった感じで、最後まで読み通せなかった。この本に収録されているような、日常生活の事柄もふくめ、ちょっとした話題についての、簡潔な文章は、素人に解り易い。「竜の爪は何本か」とか「仙人の暮らし」とか、筆の立つ人なら、小説がいくつか書けそうなネタが沢山ある。そのほかに、文化大革命への見解、欧米の中国史の研究者と研究状況、中国史を学んだ師と同僚について、等の文がある。
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宮崎市定『中国に学ぶ』を読む。
「あとがき」にこうある。
中国を学ぶことは、中国に学ぶことに終わる。
ただし中国に学ぶとは、
何もかもすべてを肯定することではない。
学ぶためにはまず批判することが必要だ。
(中略)
私が中国から学んだ若干の事物のうち、
最後まで心の底に残るのは、
長い目で物を見ること、表面ばかりでなく
必ず裏面の存在を考えること、等の数端を最とする。
しかもこれを能くすることは、
何人にとってもはなはだ難い。
(p.339)
今年7月以降に上海、北京、瀋陽を仕事で訪れた。
特に東北随一の都市、瀋陽で街を散策し人を観察しながら
ここには計り知れない巨大な謎が横たわっていると感じた。
瀋陽はかつての奉天であり、
日本の歴史とも密接にからまっている。
当たり前のように吉野屋がありUniqloがあり地元の人で賑わう。
表面ばかり見ていれば中国に学ぶことはできないと思った。
『アジア史概説』『中国史(上・下)』に続いて
本書を読んだのも、長い目で物を見、裏面の存在を考える力を
学び、養いたかったからだ。
「はしがき」の最後の一文に苦笑した。
世は白眼視しながらでも渡って行ける
という余の発明からして
どうやら中国に学んだ結果であるらしい。
(p.12)
軍部、官公庁、学会、マスコミなど、
そのときそのときの大勢、権力に安易に乗らなかった
硬骨の碩学に僕は惹かれる。
(文中敬称略)
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結構古い本でして、昔ながらの文体というか何というか美文ではありません。したがってリズム感が少なくとも現在性を有しておらず読み辛い。
それでも幾つか印象的なコメントがあります。中国史を学ぶのは日本人たる自分を知るためとか、数十年スパンの観点からの某欧州企業の投資感覚の遠大性とか、欧州と比較した際の日本の(アジア)世界の把握の仕方の狭小さとか、あまりに現在を的確に言い当てていて、この本には歴史を学ぶ意味が確かに詰まっております。