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資料番号:010606754
請求記号:F/ホリエ
『仙台市荒浜地区の図書館員による、あのとき役に立った本』
※今回、ゆうき図書館3月のイベント棚では、仙台市荒浜区で被災した図書館員の方に、ご協力頂いています。
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静かな一日の終わりにぴったりな本です。
堀江氏の文章力はすごいなあ。
この小説の全体のように、大きな出来事がなくても、自分を見つめて、他者とも関わりながら、前向きに、そんな風に一生を過ごしたいものです。
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忘れ去られたような静かな町で静かに暮らす人たち。
誰もが寂しさを胸に、でも幸せに向かって生きている。
自分の今までと、これからの生き方について
ふと考えさせられた。
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雪沼(という地名?)と、その周辺の一見するととるに足らない、でもやわらかくあたたかな出来事を紡いだ連作中編集。
眠りに落ちる寸前を、この物語と共有する日々は、しあわせだとおもう。
すべてすきだけれど、特に挙げるならば川端康成文学賞受賞の『スタンス・ドット』はやはり秀逸。
センター試験にも出題された『送り火』もいい。
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小さなレコード店や製函工場で、時代の波に取り残されてなお、使い慣れた旧式の道具たちと血を通わすようにして生きる雪沼の人々。廃業の日、無人のボウリング場にひょっこり現れたカップルに、最後のゲームをプレゼントしようと思い立つ店主を描く佳品「スタンス・ドット」をはじめ、山あいの寂びた町の日々の移ろいのなかに、それぞれの人生の甘苦を映しだす情緒豊かな短編集。
他人にとって、うちっていう存在は例えば何となく手に取って、すぐ棚に戻されるスプーンのようなもので、うちとって他人は、水彩で描かれた森にすこしだけ混じる水色のようなものでしかないと思ってたんだけど、他人っていうものの存在が懐くものが個々にあって、読むとそれを思い出すことができる。猥雑ななかで生きているけど、そのなかの他人っていうものはパーツではなくて、美しいとかそうでないとか、勝手に評価できるものではないと、改めて思うくらいに、それぞれ全く異なる生き方をして、全く異なるやさしさを持っている
生きたすべての時間を絵だとして、他人というのは、ひととの関わりというのは、それぞれに色を持っている。それは幾つも混ざり合ってたくさんのうつくしい色、時にはそうでない色をつくる。それで、描いていく。最期、その絵を自分らしいと満足できればいいなあと思う。
読みながらふとそんなことを思えるようなやさしさがあった
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別に、これと言ったドラマチックな展開もなく、刺激的な展開もなく、しかし読むのを止められない。そんな作品です。著者の筆力に脱帽です。また、読み返したいと思わせます。他の著作も読んでみたいです。
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いい場所を見つけたな、と思った。それまでもパリ郊外や東京の中心をすこし外れた町と、そこに住む人々をめぐる物語とも、エッセイともつかぬ独特の小説を発表してきた作家が、新しく見つけたのは、どこか北国にある雪沼とよばれる小さな山あいの町である。静かな雨の音や、ひんやりとした大気のにおいにつつまれ、雪沼に住む人たちが、互いにそれとは知らず、かかわりとも言えないほどの細い糸でつながりながら、それぞれの人生を生きている。
巨大な駐車場もきらびやかなホテルもないが、「雪質のいいゲレンデで、静かに、ぞんぶんに滑りたいその筋の人たちには人気の高いスキー場」を持つ、その町には、いかにもそこに住むのがふさわしい住人たちがいる。静かな声で、ゆっくりと話す、自分の人生であるはずなのに、どこかしら無駄な力のぬけた、ささやかながらたしかな日々の空気を呼吸する人々。人生に見合う応分の哀しみと孤独を我が身に引き受けながら、愚痴もこぼさず、担ったものの重さにつぶされもせず、毎日を真摯に生きている人たち。
作家その人を彷彿させる人物が、町の中を歩きながら、友人や出会った人とのふれあいの中で起きる事件とも言えないほどのできごとを淡々と綴るのが、これまでのこの作家の方法だった。それは、それで堀江敏幸という作家の持ち味でもあったが、小説という旧来の枠組みからは意識的にはみ出したような、よくいえば方法論的な試行とも見える反面、どこか正面切って勝負することから逃げているようなところがないでもなかった。
今回の『雪沼とその周辺』は、ひとつひとつの作品はそれぞれが、独立した短編小説でありながら、連続して読むと雪沼という町のクロニクルとしても読める仕掛けになっている。これまで、話者の方に置かれていた作家の関心が、登場人物の方に一歩近づいたのである。それは、随筆家と小説家のあわいという曖昧な境界上に位置することをあえて意識的に選びとっていたように見える堀江の、短編小説家への名乗りととればいいのだろうか。それとも、一時的な試みにすぎないのだろうか。
登場人物たちは、善人ばかりだが、主人公になりうる資格を持つのは、どこか内省的であからさまに自分を語りたがらない人々である。難聴であったり、背が低かったり、不器用であったりと、大きな不幸とまではいえないが、本人にとっては意識から去らない程度のコンプレックスを背負っている人も多い。そして、それぞれが、自分の生きる場所については小さなこだわりを持っている。
『スタンス・ドット』で、閉店が決まったボウリング場のオーナーがこだわるのは、「ストライクのときすばらしい和音を響かせるかわりにかすかな濁りとひずみがまじる」ブランズウィック社製の最初期モデルであるし、『レンガを積む』のレコード店の経営者がこだわるのは、古い家具調ステレオの再生機。『緩斜面』の和凧といい、『送り火』の灯油ランプと、この作家ならではの修飾語を多用した息の長い情景描写に堪える、聊か古風な趣をたたえる小道具選びは、ますます渋みを加えてきている。
フランス語の本の話題が出るのは『イラクサの庭』一編であることからもわかるように、給費留学生当時の思い出を生かして書いていた初期とくらべると、より地に足の着いた生活が表現されるようになってきている。作家の成長ぶりが窺えて、ファンとしては次回作が楽しみな半面、今回は、新鮮な風景として目に映じた雪沼とその周辺の人物スケッチだが、パリ近郊の乾いた空気と合理的な気質の中で、日本人の主人公が感じる異和のようなものを主題に据えたときに生まれる著者独特の日本離れした空気のようなものを、日本の湿潤な風土の中で、今後どのようにして保ち得るのかが、老婆心ながら心配になったりもしたのである。
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同じ町で、ほぼ同じ時期に起こる、ある人たちのお話7編。一人ひとりの人生って、当たり前だけど、主役は全部違う。テレビに取り上げられなくても、どちらかというと不幸な人だと思われようとも、全員が自身の毎日を生きているわけで。
そんなこんなを文章から感じられるのが、とても素晴らしく、楽しくなる時間だった。
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雪沼という土地の周辺にまつわる7つの短篇集。
堀江敏幸の物語の主人公たちは、幸せや悲しみや怒りを経て、生活している。感情の起伏を抑え社会と共に過ごしている。いつまでも感情を露わにすると、心が持たない。だから、なかった振りをしながら、やさしく生きている。
しかし、抑える気持ちは滲み出る。そんな気持ちを表現されていると感じます。
『スタンス・ドット』のボーリングのピンの音や『河岸段丘』の傾き加減は好きでした。
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誰にでも生活の中に大切な一場面があって、そこだけ見ると地味だけれど、その人がそれまでどういう風に生きてきたかを併せて見ると、ちょっと感動してしまう話になったりする。
一場面一場面を大切に噛み締めて暮らしてみようかな。すぐに飽きて忘れるかもしれないけど、思い立った今だけでも。
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「雪沼」という響きの通り、ここで語られるのは
とても静かな7つのお話です。
時代から取り残されたような小さな町。そこに住む人々もまた
ずっと大切にしてきた旧式の道具や機械とともに日々を送っています。
今日で最後の営業日となるボウリング場の店主。
理想の音を求めてスピーカーの下にレンガを積むレコード店主。
20年以上も旧い裁断機を大事に使い続ける製函工場のオーナー・・・
ドラマチックな出来事も、辛い出来事も、ここでは声高に語られることはありません。
でも、どのお話に出てくる人の感情も、記憶も、読みすすめるうちにゆっくりと心の中に残り、読み終えた時には、たとえ幸せばかりではないお話だとしてもおだやかな気持ちになります。
降る雪は冷たくても、つもるとあたたかい、そんな感じににているかもしれません。
私たちの生活の中に、日々大声で割って入ってくる効率ばかりを求める騒がしい言葉に疲れたり不安になったりしたら、ぜひこの本を手に取ってみて下さい。
ここには、世界がどんなに変わっても、ずっと変わらず人とも、物とも心を通わせながら誠実に暮らす人たちがいて、いつでもあなたを迎えてくれるはずです。それは現実から「逃げる」ことではなくて、もう一度自分にとって大切なものを確かめるような時間だと思うのです。(N.M)
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堀江敏幸さんの文体に憧れています。川端康成文学賞を受賞した『スタンド・ドット』を含む、最新連作短編集。小説ですが、評論のような、エッセイのような、一種名状し難い、うねうねと続く文、いつの間にか物語りに引き込まれ、私は電車を乗り過ごす...そんな文章を書きたいのですが、現実はなかなか厳しい。
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湿り気を帯びた文章で描かれた、地方に暮らす人々の姿を浮かび上がらせる物語。織物職人が機織り機で糸を織り込み複雑な模様を形作るように、堀江敏幸という作家は細やかでしっとりとしたその文章で物語と登場人物の人生を丁寧に紡ぎ出している。佳作。
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表現がとても映像的で、穏やかな物語を光らせる。
一つ一つの表現から、音色や質感を感じさせるのは本当に読んでいて驚かされるし、心踊る作家さん。
寂しさと人間臭さに魅了されます。
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時間が経過する ということ。
やがては私も老い、たとえば友人たちも老い、新しい世代としての子どもが生まれ、そいつもいずれ大きくなって、恋をしたり、働いたりして、老いていくのでしょう。たとえばそれが慌ただしい都会でなく山間の町であったなら、循環するように変わっていくのはまるで人間たちだけのような錯覚に陥るのかも、しれま、千年(せんねん)。