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代々、パリの死刑執行人を務めてきたサンソン家。その四代目シャルル-アンリ=サンソンについて書かれたと一冊。
シャルル-アンリ=サンソンはフランス革命においてルイ16世を処刑した人物。
差別と偏見に苦しむ死刑執行人とその家族。たとえ報酬が良くても辛いことが多いだろう。
誰かがやらなくてはならない仕事だと頭では理解しても、その誰かにはなりたくないし、その誰かが家族にいて欲しくない。
現代でも監守などで明らかに死刑執行人となったひとを、きっと人々は差別する。
同じように差別と偏見の目で見られる職業として屠殺業があるだろう。
大抵のひとは肉を食べる。しかし、その肉が肉となる過程に思いを巡らせることはしない。肉が肉となる前には、生きた牛であり豚であり鶏でありその他の動物であることは考えない、考えたくない。
肉を美味しく食べる癖に、動物の命を落とさせ肉とする仕事に携わるひとを、人々は忌まわしいものを見るように避ける。
人間は本当に勝手だ。
マリー・アントワネットに比べると印象の薄いルイ16世だが、当時取り調べとして行われていた拷問を廃止したりと国王を思いやる国王であったと書かれている。
フランス革命が起きたとき、ルイ16世ではない他の人物が国王であったとしても革命は避けられなかっただろう。ルイ16世ひとりが無能だったから起きた革命ではなかったから。誰が国王であったとしてもいずれ処刑されていただろう。
そう考えると、長く無能とされてきたルイ16世は何とも気の毒に思える。
フランスでの死刑方法は、死刑執行人による刀での斬首だった。この方法は死刑執行人の技量は元より、死刑囚が恐怖を堪えて動かないことが肝要となる。死刑囚が恐怖に負けて動いてしまうと、死刑執行人の狙いが定まらず無用の苦しみを与えてしまう。死刑執行人は当然焦るだろうし、死刑囚は痛みのため更に動いてしまう。そうなったらそれはもう地獄だろう。
死刑囚と死刑執行人の負担を軽くするためにギロチンが発明される。
そのギロチンの刃の形状を改良したのは、なんとルイ16世の指摘によるものらしい。
自分が提案し改良されたギロチンによってルイ16世は処刑される。こんな皮肉なことはないだろう。
しかし、このエピソードからしてもルイ16世の高い知性をうかがわせる。
日本の徳川綱吉も意外と名君だったと最近になり明らかになっているようなので、ルイ16世の名誉もいつか挽回されるかもしれない。
フランスやフランス革命などに興味のあるかたには、別の角度から歴史を覗くことのできる本書は面白く読めることと思う。
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「イノサン」の元ネタの一つ。
執行人から見たフランス革命というか。王政時代、革命期と恐怖政治の期間、ナポレオン治世下、と、ひたすら首を斬り続けた人物。国王も貴婦人も暗殺犯も革命家も強盗も、すべてが彼の前では平等で、彼はただ死の天使として職務を遂行するだけ。本人は国王派で敬虔なカソリでリベラルで死刑廃止論者というのが面白い。生涯で3度ルイ16世に会ってる、てのも出来すぎだ。罪人に死を命じる人々の矛盾や無責任さの対極に、執行人がいるのだなあ、と。
ギロチンの歴史についても触れられてるけど、あの三角刃を考案したのは技術オタクのルイ16世、てのも面白すぎる…!
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サンソンの存在はもともと知っていたし、大体の人物像も他の読み物で知っていたのでそこまでの真新しさはなかったが、彼の心情的側面をずっと深く掘り下げて知ることができたことは貴重だった。
当時は現代よりも人間の生き方が狭く、それだけに色濃い宿命を背負いながらそれぞれが生きていた。死刑執行人の家系などはその宿命の凝縮も並外れていて、自身を強烈に律することなしに人間としての精神を保ち続けることが難しかった様子がうかがえる。それだけに敬虔であり、それだけに無垢であり、平和を愛し、平等を望み、傷つきやすい。彼の独白は血にまみれながらも何度もドラマチックであろうか。剣からギロチンに代わってもその刃は人間の命を絶つだけで、運命も歴史も時代も立つことができない、ただ、歴史と時代の証となり続けるしかなかった。
読み終わった後、思わず240年前の革命に思いをはせざるを得なかった。
文章はわかりやすく、心理描写も心を惹きつけるものがある。しかし主人公が感傷的なだけに、その展開も感傷的におりなされ、後半著者の主張とサンソンの告白の区別が分かりづらくなる感があった。特に「死刑はなくなるべきである!」と繰り返し強調するラストは思想的な香りがしてちょっと現実に戻ってしまった。もしサンソンの回想録に同じような描かれ方があるなら、引用という形で閉じてほしかった。
17.1.10
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死刑執行人を努めたサンソン家と革命前後のフランスが舞台。首を切り落とすギロチンが、苦痛を減らす人道的な手段として発明されたものだったというのが驚き。しかし、その手軽さが大量処刑につながってしまったというのも皮肉。
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死刑囚が処刑台の上から救出されると言う前代未聞のこの事件は、国家の決定が民衆の意思によって覆されたものであり、しかも、国王が宮殿を構える本拠地、ベルサイユで起こったことである。これを革命と言わずして、なんと言おう。67 68ページ
ジャン・ルイ・ルシャールはフランスで車裂きの形が宣告された最後の例となった。…事実上はこの時、ベルサイユ住民の意思で車裂きの刑は廃止されたのであった。68p
ギロチンは本来人道的配慮から生まれたが、あまりにもかんたんに殺せる機械だった。従来の処刑なら一日数人が限度だったものが、ギロチンにより数十人の処刑が可能になり、恐怖政治をまねいてしまっった228p
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サンソン、と言えばフランスの死刑執行人。代々世襲であり、非情な死刑を行うということで皆から恐れられていた。とはいえ、死刑執行は国王の名における命令であるし、残虐な刑はサンソンが考えたのでなく、時代が求めていたと言うべきもので、執行人たるサンソンは心を痛めていた。一番の悲劇は尊敬するルイ16世を処刑することが自分の手でなされた、ということであり、何も悪くないサンソンは終生その罪に苦悩することになる。全く理不尽な死刑執行人の世襲にかの時代の残酷さを実感するとともに、死刑囚を瞬時に死に追いやる「人道的な」ギロチンなればこそ血のフランス革命が成功した皮肉に歴史の哀しさを知る。
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【作成中】
大学の西洋史(ドイツメインだったが)の講義で、車裂き・八つ裂きの刑と衝撃的な死刑の執行方法があったことを知って、他国はどうだったのか興味が湧いていた。+荒木飛呂彦先生の帯で、購入を決意。
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大学の西洋史(ドイツメインだったが)の講義で、車裂き・八つ裂きの刑と衝撃的な死刑の執行方法があったことを知って、他国はどうだったのか興味が湧いていた。+荒木飛呂彦先生の帯で、購入を決意。
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フランスの死刑執行人サンソン家の歴史の中で、
フランス革命期に生きた四代目シャルルーアンリに
焦点を当てて、本人の生き方、関わった人々、
時代について、詳細に書かれている。
死刑執行人として逃れられない運命。
職業差別、死刑執行の緊張感と喪失・・・様々な葛藤を
抱えながらも、結局は執行人としての職務を
こなさなければならない。
それでも抗い、死刑反対を信条にした男。
しかし、恐怖政治で2700人の超える人の首を
落とすことにことになろうとは!
シャルルーアンリの姿を追いながら、フランス革命とは
なんだったかがわかる。
そして死の苦しみを和らげるために発明されたギロチンが、
多くの死をもたらした要因になるアンビアンス!
まさにフランス革命の裏面史。
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ノンフィクション小説みたいで読みやすい。
死刑執行人は好き好んで処刑しているわけではない
命じられたから仕事としてやっているだけである
しかし市民はそれを穢れたものだと嫌悪し、差別する
感情の仕業だからしょうがないと諦めるも、人権宣言で事態はひっくり返る
それまで嫌悪されていたのが社会に認められる。
差別というのは社会によって引き起こされるのだなと思った。
ギロチン開発にルイ16世が携わり、最底辺だった処刑人が最高位だった国王を処刑するのは皮肉にしてもできすぎていると思った。
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漫画「イノサン」の元ネタ、参考書籍。
「ムッシュー・ド・パリ」シャルル-アンリ・サンソン(四代目)中心。
――初めに恋があった
序章の1行目からこの言葉。サンソン家のすべてはここから始まった。というか、この恋がなければその後の(子孫の)苦悩は無かった。
シャルル・サンソン・ド・ロンヴァル(初代)の恋がサンソン家六代の歴史を使ったという恋愛小説のような実話。
「イノサン」読後なら、この場面知ってる!(下敷きだから当然だが)という部分があり楽しいし、漫画を知らなくてもギロチンなりフランス革命なりに興味があれば面白いとかと。
お馴染みマリー・アントワネットもちょい役(サブタイ通り王家側の主役はルイ十六世)で出てきます。
日本で切腹を見たフランス海軍が居たたまれなくなった話や素人がギロチンを使うとどうなるか、という挿話もあり処刑人一辺倒ではないのも箸休めになる。
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サンソン家執行人の4代目シャルル・アンリ・サンソンの生涯が綴られています。
サンソンの中でも一番多く首を落とし、敬愛する国王ルイ16世までもあの世へ送ってしまいます。
ギロチン誕生と革命・恐怖政治という激動の時代に処刑を受け持った、強靭な精神力の持ち主です。
最後まで丁寧に仕事をやり遂げたわけですが、彼の幸せは生前には無かっただろうと不憫に思います。
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20180212
漫画イノサンに触発され読んだ新書。漫画では死刑囚解放事件までが連載されていて、そこまでの流れは坂本真一氏が描くシャルルアンリの表情がありありと浮かんでくる。妹のマリーの存在が全く描かれていないので、史実はどうか気になるところ。
ルイ16世までの王朝国家においては、法務官勅命の死刑執行人が存在していた=サンソン家。時代の流れは第三身分の民主政治であり、遂にギロチンによってルイ16世も処刑される事になる。民主化を達成したフランスであったが、ロベスピエールによる大粛清があり、サンソン家は死刑執行人であり続けた。そして、ナポレオン1世による帝政が始まるも、シャルルアンリの願いであった死刑廃絶=死刑執行職の根絶は達成されず死を迎えることになる。(ちなみにフランスでは1981年に死刑廃絶となる。)
生まれながらにして家格が決まってしまう中世を、ひっくり返した大革命を肌で感じることができる。フランス革命に裏側として付きまとう死刑執行人の話を理解することで、民主化までの流れを血生臭く感じることができた。
生まれながらにして死刑執行人というのは、自分は苦悶するだろうか?明らかには見えないが、総中流として生まれた我々は、自分で何かを為さなければ得ることはできない。しかし、貴族制国家よりもはるかに多く可能性は開かれている。
//MEMO//
イノサンを読んでいることもあり、学術的に歴史を追いたい。
フランス革命をモチーフにしており、第三身分に分かれていた旧世代から、民主政治を獲得する最初の時代の裏側を見たい。
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Fate/Grand Orderというスマートフォン専用ロールプレイングゲーム、1.5部・亜種特異点IV 禁忌降臨庭園 セイレム『異端なるセイレム』にて、シャルル・アンリ・サンソンは果てしなくフィーチャーされ、Twitter上でこの作品が紹介されていたので読んでみました。
死刑執行人。サンソンの名前はなんとなく知っていましたが、ギロチンで処刑をし続けた人、と言うくらいの軽いもので、彼がどんな道を歩みどんな思想をしていたかまでは全然知りませんでした。
Booklive!で購入したので、電子書籍版として、『ジョジョの奇妙な冒険』作者の荒木飛呂彦さんのイラストが挿入されていました。
死刑執行人として代々引き継がれて来たこと。
そもそも引き継がれないといけないものであったこと。
国王を処刑した際には大変につらい思いをしたであろうこと。
国王という存在の大きさ、処刑人という存在の大きさ。
日本の死刑執行人は、ボタンを何人かが一斉に押して自分が殺したことがわからないようにしていると言うけれど、サンソンは違う。自分の手で持って人を殺した。だからこそ血塗られた。だからこそ誰かがその役目を負わねばならなかった。
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伝記でありながら小説のような一冊。
フランス革命の時代を処刑人として居合わせてしまったシャルル=アンリ・サンソンの物語。
彼は優秀な処刑人であり、だからこそ熱心な死刑廃止論者であり、そして運命の数奇さにより王の首を落とす男となった。
勢いから一般人が処刑を実行したときは、人を殺したことと人前で一挙手一投足に注目されるプレッシャーに耐えきれず、脳溢血で死亡してしまったなんてエピソードがあるあたり、彼ら一族がどのようなものを家業としていたかわかる。
ちなみに、タイトル通りルイ16世との関係は熱量を持って触れられているが、マリー・アントワネットとの話は20文字ぐらいしか書いてないのでそこを期待して読む人は注意だ。