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紙の本
『マリン・スノー』の作者である高野が書くのだから、面白くないわけがない、そう思った私が馬鹿だった。それにしても、あの硬質な描写と綿密な取材は、どこに消えたのだろう
2005/01/11 20:58
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投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
装丁は多田和博、もっとデザイン能力のある人だとは思うのだけれど、この本のカバーデザインは、はっきり言って俗。今までの本のそれを一歩も出ていない。しかし、高野裕美子といえば、私がその筆力を絶賛した『マリン・スノー』の作者である。カバーやタイトルのフツーさに気を取られてはいけない、絶対に面白いはず、と力んだのだが。
小説の舞台は沖縄。主人公は、今は離婚をして息子を夫に奪われている天城遙である。女性月刊誌『アルテミス』のリゾートの特集のための取材で、編集者の折戸文夫と東洋一の水族館〈アクア・ハーモニー〉に来ている。二人の前で行われたイルカとベルーガ四頭のマリン・ショー、事件はそこで起こった。
その事故の中心にいるのが29歳の鳥羽真澄。伯父の葉山日出男は、数々のリゾートやホテルを経営する葉山グループの頭領である。真澄は、一時はそのグループの後継者とも目されていたが、今は日出男が先妻亡き後に迎えた後妻の淑美の息子で26歳になる清孝に快く道を譲る気でいる。
傲慢で人の気持ちも顧みないような真澄を、今のような心境にさせたのが恋人の貝原彩乃であり、変わった真澄のお陰で自分の人生を見直すことができたのが、今は水族館で飼育トレーナーをしている真瀬垣稔となる。そして一つ年上の真澄に兄として以上に思いを寄せるのが葉山家の次女で絶世の(我ながら古い表現だ!)美女玲香である。
自分の息子に葉山家を、そしてその富を継がせたいと願う淑美、腹違いの姉に思いを寄せるグループの後継者。その思いを知りながら、従兄を愛してしまった令嬢、自分の血を引くものに全てを譲ろうとする一族の長、環境の保護に目覚め富にも地位にも興味を失った有能な美丈夫(これも古い表現だな)。すれ違う思いが交差したとき。
それに、『マリン・スノー』の時と同様に、主人公の昔の恋人で今は妻と子供を愛する自衛官が絡んだりするのだが、ま、これくらいにしておこう。はっきり言って、腰砕けである。いや、考えようによっては前半ですでに崩れていたというべきだろうか。少なくとも高野のこの本は、張り巡らされた伏線を楽しんだり、意外性に胸をときめかせるようなものではない。
そう、ここには、『マリン・スノー』の厳しさはない。はっきりいって甘い。とくに後半、これは腰砕けといったレベルではない。TVの二時間ドラマの原作ではないか。たとえば、これとプロダクションI・Gのアニメ、例えば『攻殻機動隊』を比べてみればいい。足元にも及ばないのは明白だ。
どうしたのだろう、あの量と質で読者を圧倒する情報は、どこに消えてしまったのだろうか。しかも、登場人物のステレオタイプ化のひどいこと。残念だ。前作がよかっただけに落差を感じる。これが新聞連載ならば、不満はあるものの致し方ないと納得もしよう。でも書下ろしなのだ。ガックシである。
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