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紙の本
ケニア版「百年の孤独」
2010/07/02 01:15
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:青木レフ - この投稿者のレビュー一覧を見る
と帯つけて売り出せば良いのに、と思った。
ケニア版「百年の孤独」といっても、本書は小説ではなく社会学者によるフィールドワークの成果物である。著者はライフヒストリー(生活の歴史の聞き取り)の社会学的手法をとっているようだが、ライフヒストリーというより もうクランヒストリーといって良いかもしれない。一族(クラン)の歴史を聞き取り調査し、まずミクロでリアルなアフリカを伝え、解説としてその時の社会情勢や歴史的経緯を加え 俯瞰的なわかりやすさを得ている。
ガルシア・マルケスの「百年の孤独」はマジック・リアリズムと評されたが、本書「呪医の末裔」では本当のリアルとマジックを書いている。両者に共通するのは"読者を惑わせるほどの遠い異世界"がベースである、という事。その遠さを実感させる細かい情報が読者に用意されてる、という事だ。
「百年の孤独」は創作ゆえに色々な事件が起きたが、本書ではケニア特有の"歴史の早回し"が著者に有利に作用している。19世紀末から21世紀までの歴史を聞き取りしてるのだが、ケニアの植民地化が始まったのがその辺りで、ギリギリ「その時のわしらの一族の誰々は何々で~」とライフヒストリーを語らせることができる。
また停滞した歴史というものがなく、世代ごとに特徴が変わり記述しやすい。白人家庭でサーバント(使用人)として働いたら女主人に理不尽に鞭で打たれた話が1950年代なのも意外な現在との近さで臨場感がある。人気職種が独立後の1960年代~70年代は公務員、80年代は外資系、90年代以降は国際NGOや援助機関とクルクル変わるのも猛スピードで現在に肉薄してて、ちょっと眩暈を覚えるほどだ。ちなみにそれ以前は作業が楽という理由でサーバントも人気だった。
なお、聞き取り調査をしたのがケニア内の主たる部族の人ではないので、一般的なケニアの歴史を知りたいと思って本書を読むと足りなかったり過剰だったりするかも。
(投射by 懐柔する怪獣)
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