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蛇にピアス みんなのレビュー
- 金原 ひとみ (著)
- 税込価格:1,320円(12pt)
- 出版社:集英社
- 発売日:2004/01/01
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紙の本
やはり芥川賞受賞作だ
2004/03/08 14:41
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:としりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
不思議な小説である。蛇舌、舌ピアス、刺青、セックス、暴力、SM…。
思わず眉をひそめたくなりそうだ。しかし、読み進めていくと、なかなかどうして、面白い小説ではないか。
私と著者とでは倍くらいの年齢差がある。性描写がややきつい点やオジサン世代には意味不明の語句があることなど、気になる点はある。
しかし、読者を引きつけていく力、そして何とも言えない不思議で複雑な読後感を感じる。
一読後、気に掛かるところがあり、読み返す…。また読み返す…。主人公の心情を推察する…。じっくり読むと味わい深いものがある。それが芥川賞として評価されたところなのだろう。
実は、「よっちゃん」さんも書評で指摘されているが、文藝春秋3月特別号に掲載の「蛇にピアス」と、単行本の「蛇にピアス」とでは、エンディングなど内容がかなり異なっている。
読み比べてみると、単行本のものがやや単調なのに対して、文藝春秋掲載のものは胸にずっしりと響いてくるものを感じるのだ。
文藝春秋掲載「蛇にピアス」をお薦めしたい。
紙の本
がんばれなどとは死んでも言えない
2004/03/07 20:46
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第130回芥川賞受賞作。ピアス、刺青、スプリットタンと、現代の若者風俗はかなり痛みの伴うものであるらしい。そういうものが生理的に合わない人がいるだろうから、この作品の賛否が分かれるのも仕方がない。特に冒頭の数行は表現がきつい。読了しても苦い(口腔の中にひろがる血の味のような)思いしか残らないかもしれない。でも、できれば、そんな人にこそもう一度読み直してもらいたい。風俗という衣装をまといながらも、この作品の根底にあるのが、あまりに古典的すぎるほどの純粋な愛の物語だということをわかってもらいたいから。二十歳の作者がそんな世界を描いたということが奇跡のような作品であるから。
「きっと、私の未来にも、刺青にも、スプリットタンにも、意味なんてない」(80頁)
芥川賞選考委員の一人宮本輝氏は、この作品の読後に残る何かとは<哀しみ>であると表現している。そして「作中の若者の世界が哀しいのではない。作品全体がある哀しみを抽象化している」と続けた。宮本氏がいう<哀しみ>は、青春期特有のどこにも行き場所のない感情の発露だ。もしかしたら、人生でたった一度だけ描ける宝石のしずくのようなものかもしれない。
かつてドラッグとセックスに溺れる若者風俗を描いた『限りなく透明に近いブルー』で芥川賞の文学性を二分させた村上龍氏が、選考委員の一人として、この作品を絶賛したのも興味深い。村上氏はこの作品に反対意見が多いはずだと、事前に良い所を箇条書きにして選考会に臨んだほどの入れ込みようだったようだ(第83回の直木賞の時、選考委員の山口瞳氏が向田邦子の受賞に獅子奮闘したというエピソードを思い出した)。それほどまでに村上氏の心を揺さぶったのも、若さというものだけが持つ才能だろう。そんな村上氏がかつて自身の自選小説集の中でこんなことを書いている。「若い年下の世代には興味がない。常に無関心でいたい。悲惨な時期を生き延びようとしている人間に対しては、そっとしておくしかないのだ。言うべき言葉はない。がんばれなどとは死んでも言えない」(村上龍自選小説集1)
村上氏が芥川賞の選考委員になって四年。初めて彼が認めた作品は、やはり彼のデビュー作のように賛否両論の渦中に巻き込まれている。しかし、それを跳ねのけていくのが作者だけであることを、村上氏自身が一番知っているはずだ。金原さんはまだ二十歳。悲惨であるその時期に、奇跡のような作品を書いた。作品を作者自身が乗り越えられるか、静かに見守ってあげたい。
「がんばれなどとは死んでも言えない」(村上龍)
紙の本
完成されてる
2004/06/23 15:35
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投稿者:ハチミツ - この投稿者のレビュー一覧を見る
すごく面白かった。
正直、あまり期待していなかったんだけど、のっけからその表現力にはうなった。著者本人が非常に興味を持ってる世界なのかもしれないけど、こういう世界をあまり知らない人間にも懇切わかりやすくそれでいてストーリーの邪魔にならない説明の仕方でうまくひきこんでいってくれる。
人間関係のあり方も非常に興味深くて、どうなるんだろうとドキドキハラハラしながら最後まで夢中で読みました。
ある意味、もう完成されている気がします。
他の作品も読もうと思える魅力ある作家さんだと思う。
紙の本
すんげえ好き。大好き。すんげえ痛いけど。すんげえ気持ちがいい。これは私の世界だよ。
2004/01/28 22:40
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投稿者:アベイズミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
連れ合いから携帯にメール「すんげえ好き。『蛇にピアス』電車で泣きそうになった。いけてもいけなくても。とにかく読んで。今日は余韻で仕事が出来ない」って。そうあった。
その夜、三時までかかって「蛇にピアス」を読み切った。眠かったけど、明日も早いんだけど、そんな事は本当にどうでもよくなって。最後までゼイゼイ言いながら読み切った。
私もこの本が、すんげえ好きになった。大好き。すんげえ痛いけど。すげえ気持ちがいい。
私にはこの世界がよく分かる。分かる。なんて言ったけど、ずうっと前ピアスを開けて、あっという間に塞げちゃった腰抜けの私。ピアスの拡張にも、身体改造にも、舌ピ(アス)にも、入れ墨にも、スブリットタンにも興味がない。っていうか、やってみたいなんてこれっぽっちも思わない私なのに。
私は「ルイ」って女の子が、とっても好きになった。「ルイ」はすごく素直。目の前にべろっと出された「スプリットタン」に本能のままに惹かれていく。「自分でも何でそんなに惹かれるのか興奮するのか分かんない」世界に、素直に踏み入っていく。きっと、そこに「スプリットタン」があったから。ってだけな所が好き。作者の「金原ひとみ」って子が、そこの所をとっても素直に書いてるんだと思う。「ルイ」のアタマで「ルイ」のまんまで書いてる。きっちり持った女の子として書いている。
彼女は美しい動物だ。「アマ」も「シバ」も、すんげえバカで可愛いくって、やっぱりただの美しい動物。私がなりたかったのって、これじゃなかった? だから、この本を前にすると、どうしようもなくメゲてもくる。私は年をとったのかもしれない。分別を知ったのかもしれない。バカなアタマで利口に立ち振る舞っているのかもしれない。
「私の血肉になれ。何もかも私になればいい。何もかもが私に溶ければいい」
「母性本能」や「愛情」が枯渇したような「ルイ」みたいな女の、底の底にある感情を突き付けられた時、私はひれ伏すしかない。低く低く頭を垂れて「負け」を認めるしかないってこと。
「今、この入れ墨には意味があると自負出来る。私自身が、命を持つために私の龍と麒麟に目を入れるんだ。そう、龍と麒麟と一緒に、私は命を持つ」
「ルイ」と「アマ」と「シバ」。その三人を想うとき、私はとても優しい目で眺めてることにも気付くんだ。俯瞰している。まるで「神の子」にでもなったみたいに、眺めてる。そのウロボロスの輪っこを、この手でそっと抱きしめてやりたいと思うんだ。
この輪っ子は、形を変えて続いていくかもしれない。「ルイ」が「アマ」になって、誰かの前でべろっと舌を出す日があるかもしれない。ないかもしれない。だけど、その後やそれからがどうでも良くなるぐらい。この物語は完結していて。本当の所もう、どうだっていい。この本があればいい。ただここにあればいい。この世界があればいい。そう思う。
みんなバカでみんないとしくてみんな好き。この世にバランスのとれた関係なんてありはしない。この世に生きやすい場所なんてありはしない。子供の笑い声や愛のセレナーデが届かない、そんな世界に届く光だってある。
この本を「いいから読んで」って言ってくれてありがとう。私が読み終わるまで、起きててくれてありがとう。泣いてるあたしの頭を撫でてくれて、ありがとう。一緒に泣いてくれて、ありがとう。ありがとう。ありがとう。
そして、何と言われようと、私はすげえよく分かるんだよ。
アナタがこの本を好きな事が。これはアタシの世界でもあるけれど、アナタの世界でもあるって事が。それがうれしくってうれしくってたまらない事が、アナタにも分かるといい。分かって下さい。それだけだよ。