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蛇にピアス みんなのレビュー

130(2003下半期)芥川賞 受賞作品 第27回すばる文学賞 受賞作品

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みんなのレビュー425件

みんなの評価3.2

評価内訳

高い評価の役に立ったレビュー

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2004/03/08 14:41

やはり芥川賞受賞作だ

投稿者:としりん - この投稿者のレビュー一覧を見る

 不思議な小説である。蛇舌、舌ピアス、刺青、セックス、暴力、SM…。
 思わず眉をひそめたくなりそうだ。しかし、読み進めていくと、なかなかどうして、面白い小説ではないか。
 私と著者とでは倍くらいの年齢差がある。性描写がややきつい点やオジサン世代には意味不明の語句があることなど、気になる点はある。
 しかし、読者を引きつけていく力、そして何とも言えない不思議で複雑な読後感を感じる。
 一読後、気に掛かるところがあり、読み返す…。また読み返す…。主人公の心情を推察する…。じっくり読むと味わい深いものがある。それが芥川賞として評価されたところなのだろう。
 実は、「よっちゃん」さんも書評で指摘されているが、文藝春秋3月特別号に掲載の「蛇にピアス」と、単行本の「蛇にピアス」とでは、エンディングなど内容がかなり異なっている。
 読み比べてみると、単行本のものがやや単調なのに対して、文藝春秋掲載のものは胸にずっしりと響いてくるものを感じるのだ。
 文藝春秋掲載「蛇にピアス」をお薦めしたい。

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低い評価の役に立ったレビュー

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2007/08/04 13:36

若い人たちの関係のあり方

投稿者:sanctusjanuaris - この投稿者のレビュー一覧を見る

この作品で注目すべき点は、ルイ、アマがお互いの本名をしらないで同棲していたことだ。ルイもアマもシバも、どのような生い立ちかなどのプロフィールはほとんどない。また、ルイやアマはそういったことを全く知ろうともしない。にじみ出る、間接提示される、他者の生き様・経験、それまでの人生。そういったものへの無頓着は若さゆえなのだろうか。私も以前そうだったが、今ではそうでなくなっている。あれは彼らなりの"プライベート"や"プライバシー"への配慮なのだろうか。若者の間の儀礼的無関心といったところか。

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紙の本

エロ小説

2004/02/06 14:22

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:LAM - この投稿者のレビュー一覧を見る

芥川賞も地に落ちたものですね。これは、若い娘が書いたエロ小説です。スプリットタンとか00Gとか、選者連中の世代では判らない言葉の羅列、感情表現も稚拙。新人賞は理解できるとしても、このレベルが芥川賞とは!
今の文学界は、枯渇状態なのでしょうか?

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紙の本

若い人たちの関係のあり方

2007/08/04 13:36

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:sanctusjanuaris - この投稿者のレビュー一覧を見る

この作品で注目すべき点は、ルイ、アマがお互いの本名をしらないで同棲していたことだ。ルイもアマもシバも、どのような生い立ちかなどのプロフィールはほとんどない。また、ルイやアマはそういったことを全く知ろうともしない。にじみ出る、間接提示される、他者の生き様・経験、それまでの人生。そういったものへの無頓着は若さゆえなのだろうか。私も以前そうだったが、今ではそうでなくなっている。あれは彼らなりの"プライベート"や"プライバシー"への配慮なのだろうか。若者の間の儀礼的無関心といったところか。

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「これって、芥川賞受賞作!!??」と、いい歳をしたオジサンは混乱しています

2004/02/29 13:05

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投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

粘膜にぐりぐり穴あけてピアスをひけらかし、刺青をするのがカッコイイとする若者の風俗があることは知っていますし、子どもが事件に巻き込まれ、あるいは犯罪の加害者になるたびにテレビの報道番組や週刊誌のドキュメンタリーで想像以上に若者の日常生活・精神がおかしなことになっていることもわかっていましたが、最近の財団法人日本青少年研究所「高校生の生活と意識に関する調査」にはおどろかされました。たとえば。
●「女は女らしくすべきだ」・日本28.4%・米国58.0%・中国71.6%・韓国54.9%
●「男は男らしくすべきだ」・日本43.4% ・米国 63.5% ・中国 81.1% ・韓国 54.9%
●「結婚前は純潔を守るべきである」日本33.3%・米国52.0%・中国75.0% ・韓国 73.8%
●「偉くなると責任が多くなるから嫌だ」日本55.6%・米国18.9%・中国42.6%・韓国43.0%
●「全体としてみれば、私は自分に満足している」日本35.7%・米国82.7%・中国55.4%・韓国 47.7
ゆゆしきこと、なんとかしなくてはとため息をついた方は多かったでしょう。しかし、この小説に芥川賞という文芸作品として日本最高レベルの評価をあたえる大人の感覚と若い世代の堕ちていく状況とはけっして無関係ではないと感じるのです。
そして小説自体の評価はともかく、著者のキャラクターや芥川賞選考委員の評価スタンスを詮索し、華やかな授賞式、マスコミの取り上げ方を眺め、また芥川賞作品を普段は読まない人も含めた周囲の轟々たる反響や単行本とこれを掲載した文藝春秋の爆発的売れ行きを耳にするとますます心配になってきます。
良識あると自認するする人々は物書きにとって天敵だそうですが、天敵と嘲笑されるのを覚悟で「賞の授与はまずかったんじゃないの」と苦言したくなります。でもオジサン的発言は今の時代、通用しなくなっているのでしょう。マスコミにも書評にもこの視点からの取り上げは見当たりません。芥川賞の威力でしょう。ますます釈然としません。
オジサンの周囲には「著者がなにをいいたいのかわからない」との意見も多いのですがそのとおりです。この作品のポイントである一節、「家族連れが多い商店街のうるさい人々の声に、吐き気を覚えた」「子供がぶつかった。素知らぬ顔をするその子の母親。私の顔を見上げて泣き出しそうな顔をする子供。舌打ちしながら先を急いだ。こんな世界にいたくないと、強く思った。とことん、暗い世界で身を燃やしたいと」思う。人間として生きるでもなく死ぬでもなく、これがルイの非社会的棲息のありかたです。ルイを小説の主人公として描くことのできた作者は「日常的世界」に生きいて、そこから主人公を観察しているはずなのですが、マスコミを通してあたかも作者が主人公その人のように印象づけられてしまう。それがまたこの作品の話題性を高める。肝心なことは作者が主人公の生き方を積極肯定するのか、是認するのか、諦観しているのか、反省を求めているのか、否定するのか、小説中に滲ませるべきだと思うのですが、ここがよくわからない。推薦した評者の視点がわからない。元ポルノ女優の自伝的小説のたぐいではない、芥川賞小説であるからこの事態はなんとも落ち着きが悪いのです。
文芸春秋に掲載されている「蛇にピアス」と単行本の「蛇にピアス」では蛇舌に一歩近づく興奮、刺青の画竜点睛の昂揚感、同棲相手を殺した男との新生活をはじめる心境についてエンディングがかなり異なることもわりきれないところです。どちらが芥川賞を受賞したのでしょうか。なに、あげつらうほどの変更ではないのだからと、どちらも受賞作の『蛇にピアス』なのかな。なにやら出版業界の無節操とそれを放置する選者の無責任が見えかくれするようで、これが本当のスプリットタンだとオジサンは思うのです。

書評集(よっちゃんの書斎)はこちらです。

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もう一息!?

2004/02/26 09:33

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投稿者:むし - この投稿者のレビュー一覧を見る

期待して読ませていただいたのですが、衝撃的な言葉や描写・展開が多い割には、中身に欠けてしまっていたような気がします。「蛇にピアス」の話なら、その辺の話をもっと深めてもよかったのでは。
この年で、これだけの小説を書けるのは賞賛すべきなのかもしれませんが、ちょっと物足りなかったです。
終わり方も「あれ?」って感じでした。もう少し深さが欲しかったかな、と思います。これからに期待?なのでしょうか。

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1時間半で読めました。

2004/10/27 01:52

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投稿者:あいちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

『蛇にピアス』の前に同じ芥川賞を受賞した『蹴りたい背中』を読んだのですが、私はイマイチだなぁと感じたので、『蛇にピアス』に期待しようと思い、読んでみました。

感想としては、受賞した作品なだけあってか、引き込まれるのは事実ですが、中身はエロとグロって感じがしました。受賞作ってもっとすごいものかと思ってたぁっていうのが読み終わってすぐ思いました。

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人は純愛から逃れたがるか

2004/08/08 12:18

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投稿者:祐樹一依 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 第130回芥川賞受賞作。しかし純文学賞の受賞作である、という先入観は禁物です。耳ピアス、脱色なんて当たり前、舌ピアスやタトゥーすらも当たり前の世界に生きる少女が主人公。スプリットタン…、つまり蛇のように先が割れた舌を持ちたい、という衝動が、「身体改造」を臨む語り手のルイを突き動かしていく…。可愛さに惹かれる男と、格好良さに憧れる男との三角関係までも繰り広げられて、精神的にも肉体的にもプラトニックな心情から離れよう離れようとしている作者の意図が窺えます。

 求める思いだけでなく、求められる思いまでもを描いたところがジレンマティックな要素を増すことに成功していますね。誰もが間違いなくアブノーマル、しかしその根底には真っ直ぐ過ぎるくらいに真っ直ぐな「想い」が秘められているのは明らかで…、しかし、本質的なところは、実はシンプルではないかと思います。冒頭1ページ目から読者を惹き込むのは、他者と同じであることを拒むが故に、己を表から「改造」してしまおうとする「普遍」から逃れようと願う思い(或いは欲求)。でもそれは、好意を向ける人がもたらした切っ掛けによる、「この人と同じでありたい」という思いが正体であるのではなかろうか、と僕は思うのです。

 そういう意味では、恋愛文学の新しい形だと言えなくもないと思うのですが、どうでしょうか。ただ惜しむらくは、ここまで徹底してダークネスな雰囲気を維持し続けていたのに、読後感は決して悪くないのです。いい意味で読者を突き放すのではと期待してしまいました。本書を誰かに読ませようとするときに心残りであるのは、ピアスとタトゥーの良き悪しを個々人がどう思うかを除けば、この点に尽きるように思います。

(初出:CANARYCAGE)

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ピアス・タトゥーをしたことがない私には、刺激的な読み物だった。

2004/03/21 14:11

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投稿者:PNU - この投稿者のレビュー一覧を見る

 醒めた少女・ルイは蛇のように裂いた舌を持つ男・アマと知り合い、ピアスにはまり、タトゥーにも興味を抱いていく。ルイは子供のように加減を知らぬ熱い男と、アダルトムードなサディストのクールな男の両方から強く求愛されるが…。

 ルイがもててもてて困っちゃう、というお話。それぞれタイプの違う、可愛いオトコ・アマとカッコイイ男・シバさんの両方から特別なオンナとして求められるのだから、或る意味女の子の夢のような物語と言えよう。

 少女漫画でよくあるヒロインを中心とした三角関係に、ピアスやタトゥーなどヒップなエレメントで味付けをしたかのような印象だが、新しさがあるとすればルイのアンダーグラウンド指向だろうか。愛されるのには慣れているが、能動的に人を愛するのはどこか臆病で、ふてぶてしいのにナイーヴで、海千山千の強者なのに傷付きやすい純なところも持つ女の子。家族とは関係が希薄で、愛する男になら殺されちゃってもいいかなと思うけれど、強い希死念慮があるわけではない。そんなルイは、平凡に堕したくはないが天才ではありえないコンプレックスを抱え、現在を嫌悪しつつ未来に希望が持てないという我々の代表なのだ。闇に在りたい彼女の願いは私の願いでもあり、そこがたいへんに共感出来た。

 いまいちだと思ったところは、ルイの恋愛観。フィーリングさえあえば、すぐにセックスというのは物語ゆえか。それともこれが現代の若者の実情なのか。肉体関係は最後の最後、ゲームで言うならラスボスに位置する世代の私には、ルイの身軽さが理解出来なかった。最もわからないのは、同棲してセックスもする男と「付き合ってない」というルイ。それじゃあ何をもって「付き合ってる」ことになるのだろうか? 婚姻という紙切れ、それとも魂の問題?
 ルイと男たちとの濃厚なセックス描写よりも、ルイの内面の描写がもっと読みたかったな。
 大切なものは「青い鳥」みたいなものなんだとか、なくしてみなければありがたみがわからないとか、悲しくても人は生きていくのだなあとか考えさせられた。 

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今という時代の一部分

2004/02/28 16:25

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投稿者:karasu - この投稿者のレビュー一覧を見る

 人は千差万別であるけれど、この作品は、今の時代の千差万別の一部分を切り取った作品だと思う。この作品で表現されている世界観が全てでは無いが、確かに今という時代が反映されている。
 スプリットタンや刺青という題材が突出してしまっているが、実は人の内面がメインであるように感じた。メインだと思うのだが、それが丁寧に描かれているかは微妙なところだと思う。明確に表現されている事が多く、明確すぎて、さらりと軽く流れて行ってしまうように感じたところもある。
 主人公ルイの根拠の無い自信や、居なくなってからはっきり気付いた同棲相手のアマへの思い。そんなルイを痛々しく思いながらも、最後までつらつらと読めてしまった。ラストは、突然終わってしまった感が残るが、次回作への期待を感じる作品だった。

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飢えと抵抗。

2004/02/28 15:52

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投稿者:川内イオ - この投稿者のレビュー一覧を見る

刺青を入れた体を持つ友人がいる。
私はその刺青を見たとき、無性に寂しくなった。
それは、同じ地平に立っているのに違う風景を見ているような、
近くて遠い距離を感じたからだ。


『蛇にピアス』は、スプリットタンや刺青、
拡張ピアスで「武装」した、こっち側の論理でいう
「はぐれ者」達の青春が描かれた物語だ。

主人公の「私」は何かを拒絶するように
無気力に無感動に無目的に生きる。
そして、蛇の舌を持つ男に出会い、彼女の中に変化が起きる。
その何かに対抗する力を手に入れるために、
身体改造に惹かれていくのだ。

主人公が付き合う男は、闇雲な優しさと抱えきれない不安を
持て余す。そして、その因果から逃れるために、強者への
「変身」を望み、割いた舌と赤い髪で人工の異形の者と化す。

主人公に刺青を施す男は、「私」が恐れる何かへの抵抗に
絶望し、自分へ向かうはずの溢れるほどの殺意に倒錯した
官能を見出す。その官能は、男を新たな地平に導き出す。

『蛇にピアス』に漂うのは、「痛み」への飢えだ。
「痛み」を求めることで、彼らは「生」を実感する。
具体的な「痛み」は彼らの実存を証明するが、
当然のように一度味わった「痛み」は時を経て薄れ、
麻薬の禁断症状のように彼らは更なる刺激を求めて加速する。


舌を割き、刺青を背負う者とそうでない者の違いは何だろう。
私はきっと彼らはそうでない者より繊細で敏感なのだ、と思う。
どこかの少年が自らを「透明」だと表した。
彼らはその「透明」な自分と、それを促す既存の
システムや価値観に、無自覚に、無意識に抵抗しているのだ。

しかし、身体改造でいくら生を実感し、現実を拒否しても
当たり前だが、彼らを取り巻く環境は変わらない。
だから彼らは寄り添う。孤独を紛らわせ、自分の身を守るために。

私が感じた距離は、国家が異民族を隔離するために建設した
「分離壁」のようだ。「こっち側」の私と「あっち側」の彼を
鮮明に浮かび上がらせる。
それでは、私は「あっち側」で彼らと同じように
抵抗したかったのだろうか。

そうではないと思う。
私は、誰かに手を加えられた人工的な実存を信用しない。
私は、自分の手で自分の意志で、実存を獲得したい。

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ピアスというより、刺青の話かな?

2004/02/17 10:37

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投稿者:レノン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 芥川賞を受賞した話題作の一つだ。受賞者の二人が女性で年齢が低いことから話題になったが、小説の内容も面白い。
 ただひとつ気になったのは、ある男性の舌(ピアス)に惹かれる話なのに、舌の魅力がいまいち伝わってこないことだ。後半では背中に刺青を入れるのだが、もうピアス(舌)のことはどうでもいいように感じてしまった。
 結局、ピアスや刺青というのは、生きにくい若者たちが行う一つの自傷行為であるのだろう。著者は、そのことを分かりやすく示している。そうした小説としては、とても興味深い内容だ。

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やさしさを抱えて現代を逍遙する心のピアス

2004/02/07 23:41

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投稿者:ろこのすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る

今風に言うなら「ぶっ飛んだ」作品。
山田詠美を彷彿とさせるテイスト。
現代風俗を映す鏡としての役割を芥川賞に課すならば、その役を充分になし得た作品と言ってよいだろう。
舌にピアスをはめ、それを徐々に拡張して行き、最後は舌先を切って蛇の舌のように割れたものとする「スプリットタン」。
つまり身体改造することで「かっこいい」と思う感覚。
背景にはSMセックスあり。刺青あり(それらに「ハッパ」が入ればもうアウトだが…)。

そんなマッドでパンクなシチュエーションで彩られた作品に主人公とそれに関わる人々を投入させた著者とは恐るべき人物だ。

暴力でしか相手を守れない優しさ、倒錯した性の快楽の中、やすやすと人を殺して愛を確認する優しさと呼ぶもの。
そんな者達の狭間で主人公の「ルイ」は
『陽の光が届かないアンダーグラウンドの住人でいたい』と思う。

子供の笑い声や愛のセレナーデが届かない場所はないのだろうかと模索し逍遙する。
そんな姿は現代という砂漠に生きる若者達の声なき声なのかもしれない。
安穏や静謐には自分の居場所など決して見いだせない。
やさしさを抱えて現代を逍遙する心のピアスとでも呼べる作品。
ピアスが題材なだけにやけに心が痛い作品だった。

時を同じくして同世代(19才と20才という若さ)。女性同士が芥川賞受賞という快挙。
しかし、作風が全く異なるこの二人。

「蹴りたい背中」は大空へ向かう「あげひばり」を思わせ、
片や「蛇にピアス」は作中人物が望む『陽の光が届かないアンダーグラウンドの住人』を思わせる。

これからこの受賞者二人がどのように歩むのか見届けたいものだ。

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本作は“三角関係”をも題材としており、特に若い女性が読まれたら後半の展開に“胸が締めつけられる”かもしれません。

2004/02/07 20:07

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投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る

話題の最年少芥川賞受賞作である。かなり売れているらしい。
だが、どうしても芥川賞として読むと物足りない。
純文学としてこの作品を見た場合、やはり少し描写が赤裸々すぎるのかもしれない。
でも新人作家の作品としたら秀逸な作品とも言えそうだな。

彼女の傑出してる点はズバリ“目新しさ”である。

言葉自体本当に“新感覚”である。スプリットタンや00G…
まさについていけませんが(苦笑)。

だが、内容は読者によっては過激すぎるかも知れないが、文章は無駄がなく意外と読みやすいのである。

それは主人公ルイの性別・年齢を問わず共感出来るキャラに起因しそうだ。

今の時代にふさわしい若者の究極の“絶望感”と異性に対する“愛情”はなんとなく理解できました。
本作は“三角関係”をも題材としており、特に若い女性が読まれたら後半の展開に“胸が締めつけられる”かもしれません。
きっと、ルイが2人の若者から深く愛されたことは、読者の脳裡に焼き付いたはずである。
作者と同年代の若者が読まれたらまさに“同世代の代弁者”としてのカリスマ的要素を持った人物として受け入れられるであろう。

芥川賞の選考委員に“先見の明”があったのだろうか?
その答えは金原さんの今後に掛かっている。
でも本作を読んで少しでもルイの“可愛らしさ”を見抜け共感出来た読者は、“文芸界自体の変貌”に気づいた貴重な目撃者である。

本作は普段あんまり小説を読まない方でも手に取られる方が多いと思う。
少しでも“若者の活字離れの歯止めになれば!”と思ってやみません。

トラキチのブックレビュー

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たとえば「所有」への生理的嫌悪感のようなものだろうか。

2004/03/10 01:38

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投稿者:すなねずみ - この投稿者のレビュー一覧を見る

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コレクション化に抗いながら、つまり何かをコレクションすることはどうやら自分がコレクション化されることなのではないかと、それがイヤだと思うから、コレクション化などせずに、しかし「言葉を投げる」ことは一つの楔のようにして自分自身の生活に何かを刻み付ける。つまり、投げたければ投げてしまえばいいのだ。傷つくのは自分でしかないのだから。そんなふうにして、でも時に、誰かを傷つけてしまうことがある。自分ではない誰かを。バルトは言う、「傷つけることのおぞましさは、失うことの苦悩よりもなおいっそう強い」。そんなふうにしてしか「つながり」を実感できないとするなら、そもそも「つながりなどないのだ」と言ってしまいたい気もしないではない。つまり今の世の中にあるコミュニケーションと呼ばれるものの大半は「傷つけることでつながりを確認する」という類のものでしかないようにも思える。そうでなければ「愚痴」か「陰口」の類。(もちろん、それだけではないことはわかっているような気もするけれど、それは<語りえぬもの>かもしれないじゃないか、なんて駄々をこねるように……言ってはいけないんだろうな、たぶん。これが今の僕の限界だ、どうやら。)

そうではないものを、ひとりの大人として、(僕は、たとえば)子どもたちのために、どうにかして、ひとつの(不完全でもいいけど、できるだけ完全に近い)モデルのようなものとして、提出してみたいとも思う。「社会」とは厳しいものなのだから、あえて厳しいことを言うのだなどと、自己正当化を図ろうとしているにすぎないことに無自覚な人間(社会をたとえば「戦争」に類するものの比喩で語りたがるような人間)が言う。バカだなあ、と思う。そして嫌な気持ちになる。バカなのは、つまり俺じゃないか、と。

愛の錯覚はある。甘やかな物語に絡めとられたような。習慣化の罠にはまってしまったとしか、後から振り返るなら、そうとしか思えないような。たとえそれがどれほど貴重な思い出であるにしても、そうして傷つけることなしには、「つながり」を感じられないことの、つまりは少々『蛇にピアス』じみた世界(あるいは岡崎京子さんの『ヘルタースケルター』のような)。傷つけるという行為が、どこに向っているか、というただそれだけの問題。過去に向うというのは今を傷つけたくないからであり、自分に向うのは他者を傷つけたくないからである、というだけの話。だからといって、他者を傷つけたくはないし、そもそも誰かを傷つけねばならないとすれば自分を傷つけるつもりでしかないのだが、できることならば、そんなヤワな自分は消えてなくなってしまえばいいと思う。(どうやら、あらゆる「所有」を徹底的に放棄したところで、「自分」が残ってしまうように思える。「こんなもん、いらん」と口で言うのは容易いが……)

でも、そうもいかない。だから、どうすればいいのか、と考える。生活する。考え中である。生活中である。そんな気分にさせてくれたのが、『蛇にピアス』なのかもしれないと思えば、ずしりとした重みをもって、読了後2週間ほどが過ぎて、どこか奥のほうに残っているなあと感じたりもしている。

ところで丹生谷貴志さんは、こんなふうなことを言っている。(唐突だが)

「一番重要なのは、(…何もやることがないという状態からの脱出を夢見ること乃至はやることがない状態に人間は耐えられないのだと信じ込んでどうにかしようとすること、ではなくて…)やることがないという状態を引きうけるとは何か、ということです」(『死者の挨拶で夜がはじまる』)

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私にとってのニュージャンル

2004/03/08 15:03

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投稿者:遊子 - この投稿者のレビュー一覧を見る

現代を象徴した小説ではないだろうか。
この小説の登場人物、ピアスに刺青、スプリットタン。
外見こそキテレツだけど、今の若者を具現化したような性格。
面倒くさい、キレやすい、希望的観測で行動する。
悩み、日々の辛さを自分のなかで対処できずに、具現化したがる。
もしくは、具現化しようと思わなくても体の異常という形で表に出る。
自分を制御できない。こんなことを言う私も若者の部類に入るので、
いささかイタイなあと思う。が、これが現代の若者なのだ。
しかし、それでも生きている。ボロボロになってしまった主人公だけど
最後彼女は生きることを選んだ。

正直読み始めたとき、言い切り調の文体が幼稚に思えた。
芥川賞の選考委員の方で、歯切れよい文体と称した方がいたが
私にはつたないように思えたのだ。けれども、読んでいくごとにどんどんと
物語の世界に引っ張られる。文体なんて途中から気にならない。
ラストも結局どうなのかはっきりしないところが、この小説を
生きさせたと思う。読後は不思議な哀しさに満ちている。
誰に対する悲しみなのか、主人公ルイになのか、はたまた彼女を
とりまく男たちになのか。それはわからない。

私が読んだ小説のなかで、ニュージャンルの小説だった。
未知の領域。怖いもの見たさで手にとってみたが、読んでみて
よかったと強く思う。

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傷だらけの反社会

2004/02/28 23:02

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投稿者:perioclin21 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 先の不透明な現代社会において、人のもつ道徳、倫理、社会性に強く抵抗する意識が作者の文章やスト−リ−に感じられた。
 尋常でない現実、道徳の否定、倫理の拒否、反社会性を表現しているこの小説に我々読者は、否定と強い不快感を持つるだろう。しかしそれは現実に起こっているかもしれないものごとを直視し、その理由を考える機会でもある。
 反社会側のものは身も心もズタズタに傷ついている。そうして我々が否定する行為の中にさえ、純愛のような感情を垣間見れるように作者は書いている。そうして、作者はその尋常でない行為や純愛の理由、結末がどうして起こるのかを読者自身が考えられるようにスト−リ−をち密に組み立てている。それは小説を書く作者の技術ではなく生まれ持った才能から出て来たものだと思う。
傷だらけの反社会側からのメッセ−ジが今、現代社会に問われている。

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