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紙の本
367人の精神と文章
2004/02/14 11:33
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:高橋波子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「一体この強国が、多くの理由でわれわれに素晴らしい思い出を残してくれたあの同じアメリカ合衆国なのだろうか。これが寛大なマーシャルプランを恵んでくれた寄贈者、民主主義という教科を気長に教えてくれた先生、自己自身にとらわれずに批判するものであったあの同じアメリカなのだろうか」ドイツの作家ギュンター・グラスがブッシュの戦争に寄せたコメントである。これを読んだとき、共感を覚えたものの、ギュンター・グラスについての知識はなく、それを調べることもなかった。再会は、本書である木田元の「一日一文」によってもたらされた。1927年10月16日生まれのグラスは、10月16日の一文に登場している。
1月7日岡本太郎が面白い。サルトルに「あなたの説には共感するが、びっしり息もつまるほど組み込まれた活字のボリュームを読んでいる間、いったい人は実存しているのだろうか」と言ったというのである。
なるほど…。
たまたま枝折紐がはさまっていた7月11日のハイゼンベルク。「悪の戦いに許されない手段も、善のためにはすべて許されるという原則を適用してもよいのだろうか?」
いいわけないだろうブッシュ…。
「一日一文」は日めくりカレンダーのように、一日毎に作家あるいは思想家などの文章を暦年で並べている。登場する一日は、誕生日だったり、命日だったりで、おそらく定義はないようだ。掲載される文章の選定は木田の独断と偏見である。並べる前のこの膨大な作業はおそらく木田の教養のさせる技であろう。読者としてはその教養にまず敬意を表し、しかしだからといって一日一文というわけにも行かないので一通り目を通す。心に染み入ったり、反発したり、それでどうしたのだったり、理解できなかったり、意味さえわからないものがあったりする。すると改めてその教養の質に驚き、自分自身と見比べて唖然としてしまうのである。
そういうわけでいったん本を閉じ、ふたたび表紙を眺め、おもむろにページをめくってみる。そして一日一日そしていたるところで木田の教養あるいは366人の精神と文章に向き合ってみようと誓ってみたのである。
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