紙の本
人間の心の迷宮、性的なものへの昏い情熱、心の奥底の渦にひき込まれる作品。
2004/03/23 09:55
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投稿者:PNU - この投稿者のレビュー一覧を見る
「残虐記」と記された原稿を残し、小説家・小海鳴海は失踪した。彼女は10歳のころ、監禁事件の被害者になるという過去があった。残された原稿がさらなる謎を呼び…。
人から悪意をもって目を付けられやすい運命を背負った少女の孤独がすさまじい。善意の第三者の方が、直接の行為者(もちろん彼も憎悪の対象ではあるのだが)よりも深く当事者を傷つけることもある…ということがせつなく恐ろしい。我々も、いつ何時加害者に与してしまうかもしれないのだから。
不満だったのはラスト。描かれたことの中に衝撃的なサプライズはあるが、描かれないことの中にこそ、読者が知りたいことがあるのだ。彼女とケンジの本当の関係とは。ヤタベとは何者だったのか。社長夫婦は。彼女と夫とは、いかにして結婚に至ったのか。そして彼女はなぜ…。
純文学の多くがそうであるように、小説は必ずしも起承転結に従わなくともよい。しかし膨大な謎に私は混乱し、欲求不満を覚えてしまった。想像の余地を愉しむ余裕が無いと、知りたいところが隠されているようなモヤモヤとした歯がゆい感覚が生じてしまうのかもしれない。
ケンジの犯罪が最悪の事態にならず安堵した。少女とケンジの夜の関係というモチーフはものすごく斬新であるとともに、嫌悪感をまねきかねない挑戦的な着眼点だと思う。少女=弱者というありふれた偏見をくつがえすショッキングな物語だ。桐野夏生作品からは今後も目が離せそうにない。
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薄汚いアパートの一室。中には、粗野な若い男。そして、女の子が一人――。
失踪した作家が残した原稿。そこには、二十五年前の少女誘拐・監禁事件の、自分が被害者であったという驚くべき事実が記してあった。最近出所した犯人からの手紙によって、自ら封印してきたその日々の記憶が、奔流のように溢れ出したのだ。誰にも話さなかったその「真実」とは……。一作ごとに凄みを増す著者の最新長編。
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少女を誘拐し、アパートで暮らす青年と少女の物語。その少女が小説家となって回想で話が進んでいく。
実際に起きた事件がモデルになってるのでは?と勘ぐりたくなるぐらい類似している
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新潟の女性監禁事件をモチーフにした作品。おかしい男に監禁された少女はその後、小説家になる。少女と男の間には何があったのか。現実の事件を思い出すだけに、どこまでリアルにかけるかということが一つのポイントになるが、この作品は相当レベルの高いリアルさを感じさせる。病んだ人間がたくさん出てくるこの作品、悪意とはなにかを考えさせられる。
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新潟の女児監禁事件を思い出させる、恐ろしい作品だった。どちらが虚構なのか、真実なのか、何が許せないのか、女児の心理は、犯人の男への親近感(心理学では本当にあるのだという)だったのか、それとも防御反応だったのか、次々と自分の中に疑問がわいてくる作品だった
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事件の被害者、加害者、メディア、そしてそれらを傍観している私たち・・・。いろいろ考えさせられました。
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重ーい重いよ小沢さん。(スピードワゴンで)誰一人まともな人が出てこないよ。一番怖いのは周囲の興味の目、というのが心底よくわかった。
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10歳の時に誘拐され、一年間監禁された少女の話。犯人の若い男と少女の、二人にしか分からない異様な関係。読んでいて気分が悪くなった。重い作品でした。
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グロテスクに続き実際に起こった事件から派生して作られた作品。グロテスクよりは短めであるため、こちらのほうが若干読みやすい。結局真相はわからずのまま。どれが真実でどれが嘘だったのか、自分なりの考えを想像してみるのもよいかと。
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ISBN4104667013【ストーリー】
35歳の小説家は、夫に自分の最後の原稿を編集者に渡すよう書き置きして失踪した。
その小説は、10歳の時に彼女の身に降りかかった児童誘拐・1年にわたる監禁生活を明るみに出し、見つめなおし語られなかった真実を語るという衝撃の内容であった・・・。少女時代と大人になった彼女の思考の軌跡を辿る。
【感想】
読ませる勢いがあって2日で読み終えました。読んでみて興味深かったです。オチの方とか多少スッキリしない点もありますが、なかなか面白かったです。
桐野先生の作品は他に「OUT」のみ読んだことがありますが、好みからいうと普通の主婦が遺体をバラバラにする日常を描いたOUTの方がきわどくてスリリングで好きでした。
残虐記は少女の心の襞に巣食う隠微な悪夢を描いたような、陰のある作品で系統がかなり違いました。切迫した心理描写は相変わらず見事だと思います。
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薄汚いアパートの一室。中には、粗野な若い男。そして、女の子が一人――。
失踪した作家が残した原稿。そこには、二十五年前の少女誘拐・監禁事件の、自分が被害者であったという驚くべき事実が記してあった。最近出所した犯人からの手紙によって、自ら封印してきたその日々の記憶が、奔流のように溢れ出したのだ。誰にも話さなかったその「真実」とは……。一作ごとに凄みを増す著者の最新長編。
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子供の頃に誘拐→監禁されたことある女の人のお話。なんか最近こういうニュース聞くけど。すごいリアルな心理描写で面白かった。冷静にあとでぞっとするけど。
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モチーフと構成。
淡々と運んでいくくせに退屈しないのは、やっぱり技巧どうこうよりも芯の部分?サービス精神があまり感じられないとこも、、なんかそっけなくていいかも。
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題名の通り残虐で救いのない物語。桐野夏生さんは、代表作の「OUT」や「グロテスク」等、リアルで生々しく救いのない話が多く、また、男女の性差を題材にすることが多い人だが、これも例に漏れず男の救いようのない性と、その犠牲となりつつも自身も深い屈託を持つ女性が描かれている。アタマをひっぱたかれたい人にオススメ。
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失踪した女性作家が残した手記。
そこには、誘拐監禁事件の被害者であった過去が記されていた・・・。
ん〜、なんだか、「想像」ってモノに疲れました^^;
何が真実だったんだ〜。すっきりしないぞ・・・・。