サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

e-hon連携キャンペーン ~5/31

hontoレビュー

ほしい本の一覧を見る

細菌と人類 終わりなき攻防の歴史 みんなのレビュー

予約購入について
  • 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
  • ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
  • ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
  • 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。

みんなのレビュー3件

みんなの評価4.5

評価内訳

  • 星 5 (1件)
  • 星 4 (1件)
  • 星 3 (0件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本

人類と感染症との長い闘いの歴史とその研究に献身した人々の物語

2011/01/29 17:44

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る

図書館から借りた本を返そうと思った際に、
次にどれを借りようかぱっと思いつかなかった。

読みたい本のリストがゼロになることは決してないのだが、
なんとなく、リストの中の本を着手するという気分ではない。

そんなときは、借りる本をまるごと友人からのお勧め本にしてしまう。

今回は借りた本5冊すべてが自分の選択肢としてはまったくなかった本になった。

本書の選択理由を友人に尋ねると、
ノロウィルスやインフルエンザの時期だからとのこと。

なお、本書は2008年に文庫版も出されている。

図書館ではハードカバーの所蔵の方が多いのではないだろうか。

本書の目次は、16章すべてが細菌を起因とする病気の名前である。

  ペスト
  コレラ
  腸チフス、その他のサルモネラ症
  細菌性赤痢
  発疹チフス
  淋病
  脳脊髄膜炎
  ジフテリア
  百日咳
  ブルセラ症(マルタ熱)
  結核
  梅毒
  破傷風
  ボツリヌス症
  炭疽病
  ハンセン病

副題に「終わりなき攻防の歴史」とあるように、
歴史的に多数の死者を出すような大きな影響を与え、
今も完全になくなったわけではない細菌性の病が登場する。

本書は、ブリュッセルの生物学者であるウィリー・ハンセンと
リヨンの医師であるジャン・フレネの共著である。

ハンセンは、長く過酷な闘病生活を送り、執筆後に出版を待たずに亡くなってしまったそうで、
本書が彼の最後の仕事となった。

感染症は大昔からその症状が認識され、語り継がれていたものの、原因はわかっていなかったので、
悪霊の祟りや何か判らないものからの悪気の発散とされてきた。

17世紀初頭になると病気の大規模な感染は伝染による疾患なのではないかと疑われるようになる。

顕微鏡の発達により、細菌を見ることができるようになってくるが、
研究が科学的に大きな進歩を見るのは19世紀終わりから20世紀の初頭になってからである。

研究者たちは、いくつかの伝染病は、顕微鏡下でしか見えない非常に小さな生物によって
起こされるのではないかという原理を打ち立てる。

本書は、特に19、20世紀の研究者たちが、
種々の病気の原因となった細菌を発見した長い道のりを描いている。

著者は、人類にもっとも大きな被害を残した16種類の細菌、
そしてその研究者たちの生涯、研究の成果の歴史を
思い起こすために、本書を執筆したと述べている。

診断、予防、治療の領域で、大きな進歩があったにもかからわず、
ペスト、コレラ、結核などが21世紀初頭においても惨劇を招いているのである。

どの病もそれをめぐる人々の物語がある。

原因菌を見つけ、その病を別な病と弁別し、
治療法が確立するまで200年以上もかかっているものもある。

それは、今日、私たちが子供の頃に接種するワクチンの数々が
生まれるまでにかかった年数でもある。

その陰に多くの人の死があり、研究者たちの尽力があった。

細菌は、物語や歴史の陰にも存在する。

ジュリエットを助けようと死んだように見せかける水薬を飲ませる計画をした僧ロレンスの手紙が
ロミオに届かなかったのは、マンチェアでペストが大流行していたからだと
シェークスピアは書いているのだという。

百年戦争では、フランスの精鋭騎馬隊は英国の弓隊により壊滅的打撃を受けたが、
英国軍は赤痢の大流行に見舞われ、4分の3の兵力を失って帰国せざるを得なくなった。

また、革命時、帝政時代の長い戦時状態は、発疹チフスの爆発的発生と重なっており、
ナポレオンに勝ったのは、発疹チフスだとも言われているそうだ。

ペストの章では731部隊について、炭疽病の章ではイラクの生物兵器について書かれている。

戦争と細菌性の病は、過去においても現在においても関係が深い。

腸チフスの章では、保菌していても自分は発症しない無症状保菌者・メアリーの物語が印象的だった。

メアリー自身には、まったく症状は出なかったが、調理人として働いていたため、
彼女の生涯で51名の患者を罹病させ、うち3名が亡くなったそうだ。

福祉に関わる者として、印象に残ったのは、ハンセン病の章だった。

   あらゆる時代において、全ての伝染病の中で、
  この病気ほど人々の精神と想像力に訴えたものはなかっただろう。

  患者にとって、忌わしく、かつ悲劇的なこの病の神秘は、
  隠された罪や欠点の顕著な現れであるとか、

  神の審判の例であるなどとされたのであった。

  西洋において、この病気がなくなる前の中世のほぼ全期間を通じて、
  皮膚の損傷、感覚神経の麻痺、手足・鼻などの脱落、
  その他の障害は、「身体全体の崩壊」と見なされ、
  精神の病の初ろだと考えられていたのである。

   一般論として、おおよそ全ての国々、時代において、
  ハンセン病患者は法律によって組織的に排除され、
  ほかの住民と積極することが許されなかった。

  (p.245)

ハンセン病菌による症状について細やかに書かれていたが、
実は、私は症状についてきちんと読んだのはこれが初めてだった。

隔離施設のこと、悪魔の病として迫害を受けたことも言及されている。

ハンセン病の感染は、非常に限られていて、
劣悪な衛生環境と栄養状態が助長しなければ起こらず、
長期にしかも密接に患者と接触しないと感染は起きないとされている。

ハンセン病原菌となんらかの形で常時接触している人でも95%は発病しないのだそうだ。

結核の再流行、エイズと結核の複合感染、復活の兆しを見せている梅毒ことなど、
各章では、歴史的なことだけでなく、今日的な問題にも触れられている。

「人類と感染症との長い闘いの歴史」と「その研究に献身した人々」を描き出す本書は、
同時に、偏見がその病の影響を増大させることもまた語っている。

表舞台として語られる歴史とはまた異なる歴史の世界がここにはあった。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

2007/03/16 00:46

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2009/05/15 12:07

投稿元:ブクログ

レビューを見る

3 件中 1 件~ 3 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。